西島秀俊『真犯人フラグ』観るときの注意点。『あな番』の罠にハマらないで

 2019年4~9月に放送されて話題になった『あなたの番です』のスタッフによる、半年間全20話(予定)のノンストップ考察ミステリー『真犯人フラグ』(日本テレビ系、毎週日曜夜10時30分~)。

 第1話も『あな番』同様にスピーディな展開からの衝撃的なラストで、放送終了直後からすでに様々な考察の嵐が吹き荒れています。初回を逃した人もまだ間に合う!『真犯人フラグ』を観る上での注意点を伝授しておきたいと思います!

※以下、ドラマ『あなたの番です』のストーリー展開にも触れています。これから視聴される予定の方はご注意ください。

◆『あな番』スタッフお得意のスピード×衝撃展開

 職場での人望も厚く、マイホームを建設中で家族仲も良好、と幸せを絵に描いたような主人公・相良凌介(西島秀俊)。ある日突然、妻・相良真帆(宮沢りえ)とふたりの子供が失踪してしまいます。しかし警察には取り合ってもらえず、苦肉の策で『週刊追求』の編集長をしている友人・河村俊夫(田中哲司)に依頼し、家族が失踪したという記事をネットで公開してもらいます。

 記事が話題となり、最初は同情的な声が集まります。しかし、失踪当日に友人・日野渉(迫田孝也)の店で撮られた凌介の楽しそうな写真がSNSで広まったことを機に“悲劇の夫”から一転“疑惑の夫”に……。第1話では“疑惑の夫”となるまでをスピーディに展開させ、ラストにはなんと息子のユニフォームを着た子どもの遺体らしき荷物が凌介宛に届くという衝撃的なものでした。

◆ミステリー要素と、“身近”な現代ホラーが入り交じる

“失踪”なんて非日常と思いますが、日本では毎年8万5000人以上の行方不明者が出ているといいます。『あな番』では主人公が「“交換殺人ゲーム”に巻き込まれた年の差カップル」という超非現実的な設定でしたが、『真犯人フラグ』はどこにでもいそうな幸せな家族に起こった失踪という事件。“交換殺人ゲーム”よりは、自分の身に起こり得そうな設定です。

 それにしたってある日突然自分以外の家族が全員いなくなるなんて、想像するとやはり恐ろしい。すがるような想いで家族写真と共に記事にしたのに、事件と関係がない(と現時点では思われる)写真が拡散され、職場が特定され、終(しま)いには“真犯人フラグ”を立てられてしまう……。誰の身に起きてもおかしくない?!……とはさすがに言わないけれど、毎日のように誰かが誰かを誹謗中傷し、事実無根なことでも真実のようにネットで拡散されてしまう現代では「ありえない」と言い切れない怖さがあります。ミステリーとしての側面はもちろんあるものの、ホラー映画を観ているような「寒気」と「空恐ろしさ」も半端ない作品になりそうです。

◆見どころは西島秀俊の“苦悩”とキャストの怪演

 西島秀俊といえば、言わずも知れた幅広い役柄をこなす第一線で活躍している俳優さん。クールでかっこいい役や、優しくて頼りがいのある役ももちろん素敵ですが、周囲に振り回されておどおどしたり、苦しんだりする西島の演技も格別です! 他の作品でも悲劇に見舞われる役どころを多く演じてきた西島が、今回も存分に苦悩する姿を見せつけてくれるでしょう。

 そして前回の『あな番』同様、周囲の怪演にも期待したいもの。妻役の宮沢りえ、同僚役の芳根京子、友人役の田中哲司、YouTuberの柄本時生をはじめ相当な人数の豪華キャストが、初回から謎めいていたり明らかに癖があったりといった役どころを演じています。

『あな番』では、女優の奈緒が主人公をストーカーさながらに付きまとう相当癖のある役どころを見事に演じて注目されました。今回も、いつ誰が怪演を見せ始めるか分からない……というか、下手したら全員が危険人物なのでは?! というほどに皆が怪しい……。個人的には17年ぶりの民放連続ドラマ出演となる宮沢りえが、明るいしっかり者の妻から豹変する姿を見てみたいです。

◆気をつけたいのは公式のネタバレとネットの考察の嵐

 筆者は『あな番』の第1話を視聴後、「こんなに次回が気になるドラマなのか……これは、全部まとめて一気に観たい!」と思い、撮り溜めしての“まとめ視聴”を楽しみにしていました。ネットで配信される『あな番』記事は徹底的に避けて、ネタバレ対策もしていました! それが……前半の10話が終わって反撃編がはじまる直前……最もネタバレして欲しくなかった「主人公の手塚菜奈(原田知世)が殺された」という事実が告げられる予告CMを、うっかり目にしてしまったのです……。その時の衝撃とがっくり感はとても言葉にはできません。

『真犯人フラグ』においても、スピーディにネタバレや考察、そして告知CMが配信されることは明白です。『あな番』で煮え湯を飲まされた筆者としては、リアルタイムの視聴をおすすめします(日曜の夜にこんなハラハラするドラマを観たら、眠れなくなる気もしますが……)。

◆「『あな番』のパターンだけはやめて!」の声も?!

『あなたの番です』は、その後映画化までするほどの話題作でしたが、一方で最終回の展開にはがっかりした視聴者も見受けられました。大きく理由はふたつ。

 ひとつは、犯人が超絶サイコパスだったということ。半年間かけて10名以上の人が殺され、ネット上の考察は犯人の特定に留まらず、トリックや動機を紐解くものまで数多く展開されていました。それなのに、殺人の理由がまさかの「人を殺めたい衝動をおさえられない」では、「そりゃないよ……」という意見にも共感します(怨恨などの理由で別の人に殺された人も中にはいましたが)。

 もうひとつは、犯人が犯行に至った背景は放送されず、有料の動画配信サービス「hulu」で限定公開されたという点です。本編での伏線回収を有料サービスに加入しないと観られないというのは、ビジネス観点では理解できなくもないけれど……モヤモヤした視聴者も多かったはず。

◆1分1秒、小物ひとつも見逃せない

『真犯人フラグ』の第1話では既に多くの伏線が張られていることが明白!『あな番』からのミステリーファンは、もう1分1秒、小物ひとつも見逃さないように視聴したことでしょう。個人的にはそこまで張りつめて観られませんが……考察を楽しみにしているファンのためにも、今回は伏線を“本編で”回収してくれることを祈るばかりです。

 いずれにせよ第1話は衝撃のラストでしたが、まだまだ序盤。第2話から観ても十分についていけます。考察を楽しむもよし! ノンストップホラーとして楽しむもよし!『真犯人フラグ』からは目が離せそうにありません。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと(tricle.llc)】

雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Instagram:@makoto_s.1213

2021/10/17 15:45

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