研究されつくしたサッカー日本代表、オーストラリア戦で見えた新たな“強み”とは

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◆9月の試合とは異なる試合内容

「あー! 惜しい!」

 これまでの3戦と違いオーストラリア戦ではそう叫ぶシーンが多かったのではないだろうか。

 10月7日にサウジアラビア代表と、10月14日にオーストラリア代表と戦ったアジア最終予選。1勝1敗となったが、9月のシリーズとは異なり状態が良くなっていることがわかる試合内容だった。

 これまでと大きく変えることなく臨んだサウジアラビア戦は大きなミスで失点し0-1で敗れたが、内容はそれほど悪いものではなかった。シュート数では10本と相手より1本下回る結果になったが、枠内シュート数では4本と相手を1本上回る結果となった。

◆ストライカー不在のなか…

 実際に決まってもおかしくないと思えるシーンは、少なくとも3回はあった。同様にサウジアラビアにも同じ数だけ決定機を作られて、そのうちの1本を決められ負けてしまった。紙一重の内容だったと言えるが、そこには決定力という差が如実に出てしまった。

 今の日本代表には、数少ないチャンスを確実に決めてくれるストライカーは存在しない。それを踏まえると、相手のチャンスの数を減らして自分たちのチャンスを多く作らなければ勝つ確率を上げられない。うまく実行できたのがオーストラリア代表との一戦だった。

◆シュート数12本、枠内シュート率50%

 ボール支配率は45.8%と相手に上回られてしまったが、シュート数では12本と相手よりも3本も上回った。しかも、相手のシュートは半数以上がペナルティーエリア外と確率の低いものだった。

 対して日本は、ペナルティーエリア内からのシュートが10本と相手ゴールに近い位置から狙えており、それが冒頭の感想につながっていると考えられる。このエリア内シュート数は、圧倒的に攻め続けた中国戦よりも多くこれまでの4試合において最高記録である。

 また、枠内シュート率も50%とこれまでの試合の中で最も確率が高く、本当の意味でこれまでより多くの決定機を演出した証拠となる数字を残している。

◆システムを4-3-3に変更

 直近の試合よりも多くチャンスを作れた要因は、試合を見ていた人にはおわかりだろうが、システム変更にある。オーストラリア戦ではMFに守田英正と田中碧を起用し、システムを4-3-3に変更した。森保一監督は試合後に「2人のコンディションが良かったのと、オーストラリアとのマッチアップを考えたときに今日の形が良いという判断で進めました」と、2人の起用理由を語った。

 その思惑通り、守田、田中、遠藤航の3人で形成した中盤でボールを絡め取る場面を多く作り出せた。サウジアラビア戦ではボールの奪いどころを決められずに、ディフェンスラインを下げて対応するように追い込まれた。その結果、素早く相手ゴールに迫るような展開は作れず、相手の守備陣形が整った状態で攻撃を仕掛けるシーンが多くなってしまった。

 しかし、オーストラリア戦では相手を追い込みボールの奪いどころを決めたことで、高い位置でボールを奪うことができるようになった。さらに、南野拓実と伊東純也をサイドの高い位置へ配置したことで奪った後のボールの出しどころを相手サイドバックの裏に作った。守備から攻撃の展開という戦略を明確化したことがチャンスの多さにつながったのだ。

◆システム変更に即対応できるチーム力

「我々のストロングポイントがしっかりと出せるように、そして相手の良さを消せるようにということを考えた」

 森保監督が挙げたシステム変更の理由だが、これは当たり前のことでなぜサウジアラビア戦までの3試合でできなかったのかが疑問に思われる。森保監督は自身の進退について、「毎試合覚悟を持って臨んでいる」と常に語ってきていたが、サウジアラビア戦に負けたことで本当に覚悟ができたのだろう。

 選手たちは、そこから中4日間、移動やリカバリーの時間を差し引くと実質2日間のトレーニングで、このシステム変更に対応した。今の選手たちには、それだけの力がある。その力を信じて、これからの6試合もしっかりと相手を分析した戦略を立てて試合に臨んでもらいたい。

◆遠藤航のボール奪取率が強み

 サウジアラビア戦までの3試合は、自分たちのストロングポイントだけを考慮した戦略だった。しかし、それは相手に研究しつくされ、もはやストロングとはならないものになっている。現に、アジアでは圧倒的にボールを支配できると思われがちだが、サウジアラビア戦とオーストラリア戦ではいずれも相手より下回っている。

 それよりも生かすべきストロングポイントは、遠藤航のボール奪取率だ。彼により相手のゴールに近い位置で奪わせ、それをどうゴールに近づけるかを考えるべきだ。相手がどうボールを動かすかを研究し、連動して相手を追い込みボールを奪うかを考えられれば、自ずと決定機も増えるはずだ。それこそがオーストラリア戦での収穫と言えるだろう。

<文/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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