綱島「住みたい街160位」でも注目…新駅開業で中古不動産が上昇傾向?

 今回は、2022年に新駅開業予定、東急東横線「綱島」と「新綱島」2駅利用可能になり、利便性が高まる注目のエリアを見てきました。該当地域は大きく工事が行われ、これから大きく変わりそうな感じです。

 横浜市港北区に位置する「綱島」は、既述の通り、22年に相鉄・東急直通線が開通し、「綱島駅」と「新綱島駅」の2駅が利用できるようになるため、増々利便性が高まる注目の街です。

 また、20年12月に『人生最高レストラン』(TBS系)では、女優・常盤貴子さんが「ガラス越しに憧れた“純喫茶”」として紹介したのが綱島にある「オークラ珈琲館」でした。

 綱島はチェーン店ではない地元の喫茶店や老舗洋食店など個性的な店が目立ち、東急東横線の中では親しみやすい庶民的な街です。

 ただ、株式会社リクルート住まいカンパニーが発表した「住みたい街(駅)ランキング(関東編)2021」では、前年129位だった綱島は、得点が10点減って順位は160位にまで下落しました……。

 一方、今回新たに設けられた「徒歩や自転車での移動が快適」ランキングでは、綱島が関東圏の4位に入りました。

 神奈川県ながらも都心にアクセスの良い綱島はこれから新駅ができ、利便性向上で注目されています。

 しかし、不動産を購入するポイントとしては、それだけでは不十分だと思います。そこで、この記事では綱島の利便性や将来性、街の特徴について、可能な限り定量的に不動産を購入する観点から詳しく解説していきます。

 マンション等の住宅の購入を検討している方は最後までは読み、参考にしてみてください。

 

 

 まず、これから出来る新綱島駅と菊名駅、綱島駅周辺に住む世帯を年収別にその割合で比較してみました。綱島駅は菊名駅と比べ、全体的に収入が高い人が多く、年収1,000万以上の割合が多いことがわかりました。余裕のある世帯にも愛されている地域だと言えそうです。

●1-1.かつては東京の奥座敷!宿が立ち並び芸者もいる温泉街だった「綱島」

 綱島はかつて「東京の奥座敷」と呼ばれ、芸者が街中を歩き、温泉宿は80軒ほどあったと言われる一大温泉街でした。

 しかし、1964年に東海道新幹線が開通し、熱海や箱根へ気軽に行けるようになってから、綱島の温泉街は衰退していきました。現在温泉はあるのでしょうか?

 調べてみると、2016年にフィットネス併設高級日帰り温泉『綱島源泉 湯けむりの庄』がオープンしていました。関東最多の3種類のロウリュや岩盤浴で体感できる日本初の演出など工夫溢れる施設で人気となっています。

 

●1-2.2つのメインストリートにさまざまな商業施設、中央広場では季節ごとのイベントも

 昭和38年にオープンした綱島駅ビル商店街をはじめ、駅周辺には8つの商店会・約400店舗が広がっています。2つのメインストリートには、新旧さまざまな商業施設が賑わいをみせています。石畳が特徴の「ウエストアベニュー通り」には、先述した純喫茶「オークラ珈琲館」があります。

 さらに美しいカラータイル敷きの「パデュ通り」には、イトーヨーカドー前にパデュ中央広場があり、季節ごとのイベントが開催され街の新たな魅力づくりに取り組んでいます。

 

●1-3.渋谷まで約22分、横浜まで約9分!新駅開業後は2駅利用可能

 東急東横線の急行が止まる駅であり、神奈川県ながらも渋谷までは約22分、横浜へも約9分でアクセスできる抜群の利便性。

 その他、自由が丘や中目黒、代官山などのおしゃれな街に1本で行けるのも魅力です。電車のみならず、東急バスと臨港バスが運行しており、乗り場が7つもあります。

 また、現在「綱島駅」から徒歩1分ほどの場所に新駅「新綱島駅」が開業予定であり、22年には相鉄・東急直通線が開通。「綱島駅」と「新綱島駅」の2駅が利用できるようになり、移動の選択肢が今後さらに増えます。

 

 東横線沿線の中では、賑やかで雑然としたイメージの強い綱島駅周辺ですので、危険なイメージを持たれる方もいるようです。実際に治安は良いのか、神奈川県警察が発表している『過去の犯罪統計資料』のデータを確認します。

 過去5年間で発生した犯罪件数は減少傾向でした。5年前に比べると半数以上件数が減っていることがわかりました。繁華性が高い割に、治安は良いといえるのではないでしょうか?

3.2022年開業の新駅を中心に、街の機能を集約した複合再開発プロジェ

クトが進行中!

 横浜市のHPに記載があるように、16年「新綱島駅前地区市街地再開発事業」の都市計画決定がされ、18年に組合が設立されました。

 この再開発で、「新綱島駅」の上部に「29階建て再開発ビル」が建てられることが決定し、20年着工しました。

 South棟(住宅)とNorth棟(商業)の2棟で構成され、North棟は1~3階までが商業施設、4~5階が港北区の区民文化センターとなり、「新綱島駅」は地下で直結予定です。

 その他、綱島には18年に注目の再開発プロジェクトが完了しています。それは、パナソニックなどが建設を進めていたスマートシティプロジェクト「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」です。

 周辺地域や企業・大学・自治体が連携し、SDGsの達成とイノベーションの共創に取り組む、次世代都市型のスマートシティです。未来を見据えた街作りが進行している地でもあり、非常に注目度が高い場所といえます。

 

 今まで見てきたように、綱島駅周辺は新駅建設、スマートシティのオープンと話題に事欠かない注目エリアです。しかし、不動産購入を検討するには、将来的な価値を見込めるか見極める必要があります。そこで、それぞれのデータをもとに詳しく確認していきます。

●4-1.綱島駅周辺の世帯数の比較

 上記のグラフは「菊名駅」と「新綱島駅」、「綱島駅」の世帯数の比較です。

 年収比較から若年層が多い「菊名駅」は単身者が多く、「綱島駅」や「新綱島駅」は2人以上の世帯数が若干多いことがわかります。今後出来る施設を含め、綱島駅周辺はファミリー層にとって暮らしやすい街なのかもしれません。

●4-2.綱島駅周辺の人口予測

 次に、各駅徒歩15分圏内の人口推計のデータを見てみます。上記のグラフは「国土数値情報(H30国政局推計)/国土交通省」のデータを国際航業(株)が編集・加工した情報を元にグラフにしたものです。

 2050年までの人口増加数は綱島駅で7,056人増加の予想となっています。各駅とも現在より人口は増加しますが、40年をピークに減少へ転じる予想がでています。

 ただ、3駅の中で一番減少傾向にあるのは「菊名駅」ということがわかります。

 上記は、港北区「統計情報」を基に過去10年間の目黒区全体の人口推移をグラフにしたものです。

 2010年から23,730人(7.2%)増加しています。港北区の人口は、24年には36万人を超えるという予測となっています。

 さらに、推計では2036年から37年にかけて人口がピークとなり、その後は緩やかに減少し、53年に35万人台、61年に34万人台となり、最終予測年の65年には、34万622人まで減少を続けると推計しています。

 

 

 

 

 東京都交通局が発表している『各駅の乗車人員』のデータを基に、「綱島駅」の乗車数の推移を考察していきます。綱島駅の乗降客数は大幅な減少は見られませんでした。一方、菊名駅の利用者は07年に5,000人以上増加し、綱島駅からの引き離しを図っています。

 それは前年の06年、菊名駅が横浜線の快速停車駅となったことが関係しているようです。そのことからも、今後、新綱島駅が完成すれば、利便性が向上し、乗降客数は増加に転じる可能性がありそうです。

●4-4.綱島の土地の価値の推移

 綱島駅周辺の土地の価格を確認していきます。商業地域に区分されている『港北5-2(綱島駅)』と、住宅地に区分されている『港北-33(横浜市港北区綱島西1-524-24)』の地域と近隣の場所を含めた3地点のデータを基に、2011年から21年までの価格をグラフにまとめたものです。

4-4-1.商業地『港北5-2(横浜市港北区綱島西1-713-13)』について

 新綱島駅の工事が始まった13年から価格が徐々に上昇しています。21年と11年では17.3万円/平方メートル(約24%)増加しています。

4-4-2.住宅地『横浜港北-33(横浜市港北区綱島西1-524-24)』について

 こちらも新駅の工事がスタートした13年から価格は徐々に上昇し、21年と11年で6.1万円/平方メートル(約18%)増加していました。

 やはり、再開発への期待により地価が上昇しているようです。当該エリアの売り物件が本当に少なくなっています。

●4-5.綱島の中古マンションの価格の推移

 最後に、ライフルホームズが発表している『住まいのインデックス』のデータを基に、実際の綱島駅周辺の中古マンションの価格推移を確認します。

 まずは、下記のグラフをご覧ください。こちらは、2010年からの綱島駅周辺の中古マンションの価格をまとめたものです。

 

 上記のグラフによると、綱島駅周辺の中古マンションの価格は17年くらいから20年まで価格上昇は低調でした。ただ、来年の新駅開設を踏まえ、20年10月を過ぎてから第二次上昇傾向となっています。

 直近の3年間では、3.42%程度上昇していました。しかし、土地値を見て見ると減少しているのが気になります。今後の動向を注視することが重要です。

 

 

 ここから、最近の異常気象を踏まえ、不動産を購入する上で欠かせない、地盤や災害の影響について解説していきます。綱島駅周辺はどのエリアが影響を受けやすいのか、そもそも災害の危険度が高いエリアなのかを見ていきます。

 

●5-1. 神奈川県くらし安全防災局防災部災害対策課が作成した『地震被害想定調査結果マップ』

 

 綱島駅周辺の綱島西1丁目~6丁目の地震被害想定調査結果マップを見てみます。紫が震度5弱、緑が5強を表しています。南海トラフ巨大地震が来た時の予想震度は綱島西6丁目の一部が震度5強、その他は震度5弱の予想となっています。

 さらに液状化について見ていきます。緑は可能性が低い、紫は可能性がかなり低い、白は液状化対象外を表しています。綱島付近は液状化の可能性は低いことがわかります。

 

 最後に、建物の全壊棟数想定図を見ます。白は0、グレーは0より大1棟未満、水色が1棟以上5棟未満となっており、全体的に全壊棟数も低いことがわかります。

 綱島西6丁目は一部水色の1棟以上5棟未満の倒壊数が示されているので注意が必要です。

●5-2. 港北区では「洪水ハザードマップ」を更新

 港北区を西から東に蛇行して流れる鶴見川はかつて「暴れ川」と呼ばれ、幾度となく氾濫を起こしました。しかし、19年の「台風19号」では浸水被害がありませんでした。

 それは、流域に大小4,900カ所ある遊水施設が大量の水を効果的に貯めたからでした。しかし、近年大雨による被害が各地で深刻化しています。

 水害に備えて適切な避難行動を実践できるよう自治体の出しているハザードマップは確認することをおすすめします。

 港北区では「台風19号」による経験を踏まえた「港北区洪水ハザードマップ」を2020年7月に更新しました。

 また、港北区では冊子「港北区水害時の避難行動を考えよう」の発行も行っています。

 かつて温泉街だった背景を持つ綱島は、次世代都市型スマートシティが他の地域に先駆けてオープンし、新駅も誕生するなど未来が期待できる街です。

 その一方、駅の近くには人々の憩いの場所である鶴見川の河川敷、個性的な個人商店や、一年に一回大いに賑わう夏のお祭り「綱島諏訪神社例大祭」など、昔から変わらぬ風景も残る地元民に愛される町、飾らない町といった風情も残ります。

 まだあまりその魅力を知られていない綱島。再開発完了まで注視していきたい街です。

2021/10/17 7:00

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