嵐もいない2021紅白、もうBTSに頼むしかない? 苦しい出場者予想

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 早いもので、もう10月半ば。そろそろ紅白出場内定の話が聞こえてくる頃なのですが、今年はちょっと雰囲気が違う様子。夏の甲子園で大会歌「栄冠は君に輝く」を歌った山崎育三郎以外、目立った名前があがっていないのです。

◆和田アキ子返り咲きやadoの噂もあるが…

 全く候補がないわけではありません。複数メディアの予想では、TikTokで新曲「YONA YONA DANCE」がバズっているという和田アキ子や、女子高生シンガーのadoが昨年の大ヒット「うっせぇわ」で出場するのではないかとウワサされているものの、インパクトに欠けるのは否めないところです。

https://youtu.be/zh-4M5blbiI

 さらに今年は嵐がいません。これ以上『鬼滅の刃』を引っ張るのも厳しそうだし、サプライズの大物アーティストも出尽くした感がある。各放送局のオリンピックテーマ曲は、かつてないほどに地味でした。音楽とともに感動の名シーンを振り返るのも難しそう。もう一回MISIAに「君が代」を歌ってもらう? いえいえ、もうお腹いっぱいです。

◆“これ誰だよ?”枠のオンパレードになるかも

 つまり、出場者うんぬん以前に、尺が埋まるかどうかを心配するほど、今年の音楽シーンは焼け野原になってしまっているのです。コロナ禍のせいばかりにしていられない音楽シーンの惨状は、ヒットチャートからもうかがえます。

 ここまでのビルボードチャートを振り返ると、いわゆるヒット曲がないことに気づきます。もちろん、それぞれの週や月で1位になる曲はある。でも、アーティストの顔と名前と曲名が一致する人がどれだけいるでしょうか? 数字の高低で一応ランキングが成り立っているだけで、本質的に人々の耳目を集めたと言えるだけのタレントや曲がないのですね。ここ数年の紅白で急増した“これ誰だよ?”枠ですが、今年はそのオンパレードになりそうな予感が漂います。

◆日本のヒットチャートでも強いのは結局BTS

 そう考えると、みんな知っていてニュース番組でも取り上げられるレベルなのが、冗談抜きでBTSだけなのです。10月6日付のチャートでも、トップ100に6曲ランクイン。そのうち、「マイ・ユニバース」(英ロックバンド・コールドプレイとのコラボ曲)、「Permission to Dance」、「Butter」、「Dynamite」が、トップ20内にあり、衰え知らずの勢いです。

https://youtu.be/DbXMjAYSa68

 そのBTSだっていまさら紅白には出ないでしょうけれど、番組に軸を作るのであれば、彼らの存在は欠かせないように思います。それはBTSがいい悪いではなく、エンタメも世間の実情を反映すべきであるという側面から必要だ、という意味ですね。なんだかんだ、昨年から今年にかけて一番耳にした曲は「Dynamite」なのですから。

◆今年の米津や髭男は、お見事だけど小粒

 そして紅白が抱えるもうひとつの課題は、実力をともなった世代交代の実現です。一昨年や昨年でいえば、米津玄師、あいみょん、髭男、King Gnuといった名前が挙げられましたし、それぞれに名刺代わりの曲がありましたが、今年はそういう存在が皆無でした。その彼らにしても、今年の曲はいずれも低調。それは売上ではなく、質や傾向の問題です。

 確かに米津玄師の「死神」は、日本のヒットチャートに限定すれば、かなりの緊張感と実験的要素を持った曲でした。でも、いかんせん表現やプレゼンテーションの方向が内向きなのです。米津玄師のファンを驚かせ、裏切ることはできても、そこから先に届く力までは持っていない。

https://youtu.be/8nxaZ69ElEc

 ドラマ『リコカツ』(TBS)の主題歌「Pale Blue」も、入り組んだメロディと転調に創意工夫の跡は見られても、ひとつの曲として訴えかける迫力には欠けていました。それは、「Lemon」や「パプリカ」にはあったものです。

https://youtu.be/7WZ1Kt3zraY

◆今年の新顔では、藤井風?

 同じことは髭男の「Cry Baby」にも言えます。ヘヴィなロックからAORまでを飲み込み、組曲のようにまとめあげるアレンジ能力。さらには、ワンフレーズごとに転調しながら、日本のポップスとしての“うた”に落とし込む手際はお見事と言うほかありません。

https://youtu.be/V8kXFEWNTYc

 しかし、皮肉なことに、その手の優秀さを追求するほどに間口は狭まっていく。木の幹ではなく、枝葉に腐心しているように見えてしまう職人気質が、パフォーマンスから色気を奪ってしまうのです。その艶こそが、「Pretender」の肝だったのに。

 もちろん、彼らが紅白に選ばれても何の文句も出ないはずです。でも、今年に関して言えば、年末を締めるにふさわしい大きな器を持った曲はなかった。残念ながら、米津、髭男を超えるインパクトを与える新しい才能も現れなかった。“じゃあ藤井風なんてどう?”と思われるかもしれませんが、彼もどちらかといえば玄人受けしてしまうタイプでしょう。

https://youtu.be/Nt6ZwuVzOS4

◆器用な人はいっぱいいるけど決め手に欠ける

 気が利いた曲を作る器用な人はいっぱいいるけど、なんだか決め手に欠ける。そんな現状も、紅白にとっては悩ましいところなのかもしれません。

 コロナ禍に加え、時代の過渡期にあえぐ音楽シーン。そんななかでの今年の紅白には、一体どんなメンツが揃うのか。楽しみに待ちましょう。

<文/音楽批評・石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

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