眼科医考案「簡単トレ」で視力回復「ガボール・アイ」って何?

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 目の疲れや加齢から、視覚の衰えを感じている読者諸兄。そんな悩みを解消できる目からウロコの方法が!?

 年を取ると、目の悩みが増えてくる。

「老眼になって、手元の新聞を読むのに苦労しているよ」(50代男性)

「十五夜で夜空を見上げても、月がダブって見えるありさま。もともとの乱視がひどくなったせいか……」(60代男性)

 網膜の老化や白内障が原因で、暗くなると人の顔が見づらくなる例もある。最近は、スマートフォンやパソコンを長時間使うため、目の疲れを覚えることも。

「これらの悩みは、“目”そのものが年齢を重ねて、くたびれてきたこともあります。ただ、目で得た情報を処理する脳、専門的には“大脳皮質の視覚野”の機能が落ちていることも、原因の一つなんですよ」

 こう解説するのは、テレビの健康番組でもおなじみ、『二本松眼科病院』(東京都江戸川区)副院長の平松類氏だ。

 脳の働きが視力に関係している例として、脳出血や脳梗塞が分かりやすい。

「こうした脳のダメージで、それまで正常だった視力が、0.1まで落ち込むことがあります。目から得た情報を、脳がうまく処理できなくなったことが原因です。視覚と脳の働きは密接に関わっていて、“盲点”の補整でも同じことが言えます」(平松氏=以下同)

 目の眼底には、光を感じる細胞(視細胞)のないポイントがあり、そこで見たものは認識できない。盲点といわれるが、脳は、その部分の見え方を勝手に補っているのだという。

「自分でも気づかないうちに脳が助けてくれているんですね。反対に、脳の働きが悪くなると、老眼や近視、乱視、遠視、疲れ目につながるケースが多いんです」

 つまり、脳の働きをよくすれば、見え方が良くなり、視力も上がるのだ。では、どうすればよいのか?

■科学的に証明された視力回復法

 平松氏が注目したのは、物理学者のデニス・ガボール博士が考案した「ガボール・パッチ」だった。ちなみに、ガボール氏は立体的な映像を映す「ホログラフィ」の発明で、1971年にノーベル物理学賞を受賞した天才だ。

「このガボール・パッチは、“ガボール変換”という数学的な処理で生み出された、ぼやけた縞模様です。以前から、これを見ると脳の視覚野が刺激され、視力を補う力が高まるといわれていました」

 これが3ページ目に掲載した縞模様だ。ボヤッとした図形にしか見えないが……。

「私も最初は、こんな縞模様を見るだけで、本当に視覚野が刺激されて視力が上がるのか、疑問に思っていたんですよ(笑)」

 ところが、米カリフォルニア大学で被験者にガボール・パッチを見せる実験をしたところ、「視力を補う脳の力」が高まることが実証されたのである。

「2007年にも、米カンザス大学が近視と老眼の患者38人を対象にガボール・パッチの実験をしたところ、視力が向上しました。特に、老眼の患者は平均視力が0・3上がる好結果となったんです」

 その後、多くの研究者の実験によって、ガボール・パッチを見ることで、脳の働きが活発になることが明らかになった。2017年には『ニューヨーク・タイムズ』に取り上げられ、全米の話題になっている。

 平松氏は、こうした実験結果をもとに、自身で被験者を募って試したという。

「老眼の11人と近眼の43人に、ガボール・パッチを1日3分、見てもらいました。これを2週間続けてもらう簡単な実験が、思わぬ好成績を挙げたんです」

 老眼の11人中、9人の視力が改善し、平均値は0.32から0.42にアップ。また、近視の30人の視力も改善し、その平均値は0.27から0.51にアップしたという。

「手術以外で視力を改善させるといわれている方法は数多くあります。ですが、世界で唯一、科学的に証明された視力回復法は、このガボール・パッチによる“ガボール・アイ”だけです」

 平松氏はこうした実験結果を踏まえて、ガボール・アイのトレーニングを勧める本を2018年に出版。今年7月に、内容を、より充実させた第2弾『1日に3分楽しむだけで勝手に目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)を刊行した。

「この本でも紹介しましたが、老眼で悩む46歳の男性は、視力が0.3アップして1.0になりました。いくつかの縞模様を目で追うだけですので、なんの苦労もない。老眼鏡を買ったことを悔やんでいましたよ」

■トレーニングは簡単、縞模様を見るだけ

 確かに、ガボール・アイのトレーニングは簡単で、縞模様を見るだけ。

「ただ、ぼんやりと縞模様を眺めるのではなく、しっかりと見つめる必要がありますね。今回、クイズ形式を取り入れたのも、そのためでした」

 その例としてQ1〜Q3までを掲載している。ポイントは、クイズを早く解こうと考えないことだという。

「じっと見ることで、脳が“なんだ、この変な図形は?”と勝手に考えてくれるんです。その結果、視覚野が活性化して、視力が向上します」

 平松氏によると、このガボール・アイによるトレーニングの効果は、視力向上だけに留まらないようだ。

「まず、視覚情報が脳で適切に処理されることで、見たものに対する注意力が高まります。簡単に言えば、読み間違いや見間違いが減って、仕事などがはかどるんです」

 また、文字を読むスピードも速くなる。脳で文字を処理する能力が上がるためのようだ。

■認知症の予防にも効果あり!

 さらに、有効な視野も拡大するという。

「高齢者の3分の1は、若い頃に比べて有効視野が40%以上、狭まっているといわれます。ガボール・パッチを見ると、視覚野の働きが活発になり、有効視野の拡大が期待できるんです」

 視野の拡大で、ドライバーは事故のリスクを減らすことが期待できるという。実は、高齢者の事故原因で多いのは、反応の遅れよりも発見の遅れ。つまり、状況の変化や歩行者を発見できないことが大きいのだ。

「実験に協力してもらったモニターでも、“今までより見えやすくなった”という方が7割に上ります。また、“本や新聞を読むのが楽になった”“目に負担がかからなくなったせいか、肩こりが解消した”という方もいました」

 ガボール・アイは、認知症の予防にも期待できる。

「65歳以上を対象にした調査で、視力がいい人は、そうでない人に比べて、認知機能が高いと報告されています。反対に、奈良県立医科大学の大規模な疫学調査では、視力が下がるほど、認知機能が低くなると報告されています。視覚が衰えると目からの情報が減り、脳の働きまで衰えるんですね。特に中高年は、認知症の予防や進行を抑えるためにも、脳の視覚野をトレーニングすることが大切です」

 ちなみに、ガボール・パッチと似た効果が期待できるのが、「千円札」だとか。

「お札の透かしのような見づらいものを見るときは、脳が持つ“ぼやけた画像を鮮明な画像に補整する機能”が鍛えられるんです。千円札を両手で持ち上げて、透かしをハッキリ見えるようにして、ゆっくり千円札を下ろしてください。透かしが見えるか見えないかくらいのところで、10秒間、見続ける。これを朝晩10回ずつ行うと、効果がありますよ」

 また、日常生活で心がけたいことも。

「1日に何回か、あるいは何分か、目に入ってくるものに、しっかりと焦点を合わせ、“これは何だ?”と考えるような目の使い方をすることが大切です」

 目に映ったものを、そのつど、脳に意識させるのがポイントだという。

「目は心の鏡」といわれる。トレーニングに励み、目だけでなく、心の若さも取り戻そう!

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  • 10/15 17:30
  • 日刊大衆

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