コロナ禍のストレス、どうにかしたい!カギは「胃脳相関」にあった

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 コロナ禍で日々の生活が激変して、ストレスを感じる人が増えています。ストレスを実感しやすいところといえば、胃の調子。ストレスが続くと、胃がなんとなく痛かったり胃もたれが起こることって多いですよね。

 胃カメラなどで検査をしても胃に異常はないのに胃の不調が続く状態を「機能性ディスペプシア」というのですが、日本人の10人に1人はこれに悩まされているのだとか。本当に身近な問題です。

 なぜストレスで胃の調子が悪くなるのかというと、実は胃と脳は深く繋がっているから。「胃脳相関」といって、お互いにさまざまな影響を与え合っているそうなのです。その仕組みを知れば、不快な胃の症状を解消する方法がわかるかも……。そこで「胃脳相関」について医師がレクチャーするオンラインセミナー(明治主催)に参加してみました。

◆胃の機能は自律神経がコントロールしている

 まずは、消化器内科の権威である兵庫医科大学主任教授の三輪洋人先生の話から。そもそも私たちの胃の機能は、「自律神経」にコントロールされているといいます。

「食べ物が口に入ると、その情報を感知した脳からの指令が自律神経を介して胃に伝わり、胃の動きや胃酸分泌が調節されます。

 この自律神経には活動モードの“交感神経”とリラックスモードの“副交感神経”という2つの顔があります。交感神経が優位のときは、胃液の分泌が減るため胃の働きが弱まり、胃痛などの症状が出やすくなってしまう。反対に、副交感神経が優位のときは胃液の分泌が増えるので、胃がよく動くようになるんです」(三輪先生)

 自律神経は、不規則な生活やストレスなどですぐに乱れてしまうもの。だから、胃の不調は起こりやすく長引きやすいんですね。

 そして、最新の研究によって、こうした脳→胃への働きかけだけではなく、逆方向に、胃→脳への働きかけもあることが判明!なんと、胃の活動が脳の活動に影響する可能性もあるというのです。

◆胃→脳へのシグナルで、メンタルまで変わってくる

 昔は、脳がシグナルを出して、臓器はそれを受け取るだけと思われていたのが、臓器からもシグナルが出ていることがわかってきました。

 なかでも最近話題なのが「脳腸相関」。リラックスや安心感をもたらし「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンという物質は、約90%が腸に存在しています。そのため腸は “第二の脳”といわれ、脳と腸が自律神経やホルモンなどによって関連しているという「脳腸相関」が注目されています。すでに腸活に励んでいる人も多いでしょう。
 同じように、「胃脳相関」を意識することも大事だ、と三輪先生は言います。

「慢性的な胃の不調がある人は、生活の質が非常に低下していることが知られています。このことは、以前は症状の辛さからハッピーになれないのだと漠然と理解されてきました。

 でもいまは研究により、胃の不調が自律神経を介して脳に悪影響を及ぼし、ハッピーさが伝わらなくなっている可能性もあると示唆されています。簡単に言うと、胃が本来のように働いていないことで脳が活性化されず、やる気や幸福感を得られるホルモンが分泌されなくなってしまうのです」(三輪先生)

 胃の不調のせいでハッピー感が得られず、それがストレスになってさらに胃が不調になる……という負のスパイラル! 
 十分な睡眠や生活リズムを整えることなどで自律神経の働きを安定させつつ、まっとうな食生活で胃の環境を改善していくことを、三輪先生はすすめます。

◆胃で働く乳酸菌は、自律神経にどう影響するか?

 続いては、消化管疾患のエキスパートである川崎医科大学総合医療センター総合内科2・特任教授の春間賢先生による、胃脳相関の最新研究についての報告です。ある乳酸菌の摂取が、胃と脳のネットワークを整えて心身の健康に役立つ可能性が明らかになったといいます。

春間先生の研究グループが行ったのは、乳酸菌の一種である「Lactobacillus gasseri(ラクトバチルスガッセリー)OLL2716株」(以下、LG21乳酸菌)を使った臨床試験です。

「LG21乳酸菌は胃酸に負けず胃で働く特性を持っており、ピロリ菌の抑制効果をはじめ、これまでにさまざまな健康効果が臨床試験により確認されています。近年では機能性ディスペプシアへの有効性も国内外で注目されており、私どももその効果に大いに期待していました」(春間先生)

試験内容は、以下のとおり。

①軽度から中等度の胃排出遅延(食べ物が胃に長く停滞してしまい胃もたれなどが起きる症状)がある20~60代の男女28人を2グループに分け、それぞれLG21乳酸菌入りヨーグルトと、プラセボ(同乳酸菌を含まないヨーグルト)を採ってもらう。

②それぞれに、自律神経の働きを調べる「唾液アミラーゼ検査」と、食べ物が胃から排出される速度を調べる「13C呼気法胃排出能検査」の2つを行い、自律神経の働きと胃の働きがどう変わったのかを調べる

 検査結果は、果たしてどうなったのでしょうか。 

◆ストレスを示す値が下がった

 検査を行ったのは、摂取前と12週間後の計2回。
 まずひとつめの、「唾液アミラーゼ検査」の結果。摂取12週間後、LG21乳酸菌摂取群はプラセボ群に比べて、唾液アミラーゼ濃度が明らかに低下しているのがわかります。

「人間はストレスを感じると交感神経が優位となりますが、交感神経が優位になると唾液に含まれるアミラーゼの分泌が促され、その濃度が高くなります。一方、副交感神経が優位になると、唾液水分量が増加して濃度が低くなる。このことから、唾液アミラーゼ濃度はストレスによる自律神経の機能異常を表す指標となります。

 つまり、この検査結果は、LG21乳酸菌を含むヨーグルトの摂取により、自律神経の働きが改善したことを示しているわけです」(春間先生)

◆胃の不調も改善された

 お次は、「13C呼気法胃排出能検査」の結果。こちらは、13C-酢酸という成分を含む液状食を摂取してもらい、服用5分前から服用90分後まで複数回にわたり呼気を採取することで、食べ物が胃から排出される速度=胃排出能を調べることができる検査です。

「摂取前と12週間後を比較すると、LG21乳酸菌摂取群は日本人平均との差が30%減少。プラセボ群に比べ、LG21乳酸菌群のほうが胃排出遅延が改善しやすくなったことがわかりました」(春間先生)

◆「胃脳相関」で全身と心の健康に役立つ

 この結果は想像以上のものだったと春間先生。

「さらなる研究は必要ですが、LG21乳酸菌は胃や十二指腸などの細菌叢の異常を改善し、そのことが自律神経機能と胃排出遅延の改善にも作用しているのかもしれません。少なくとも今回の試験により、LG21乳酸菌が胃と脳のネットワークである胃脳相関を健全化するということがわかったのは、大きな収穫です。

 自律神経は薬物ではなかなかコントロールできないので、機能性ディスペプシアのような原因不明の胃の不調を医薬品で改善させるのは難しい。それが、身近な存在であるヨーグルトで改善が期待できるわけですから、ぜひ広くおすすめしたいですね」(春間先生)

 胃脳相関が健全化すれば、胃の調子がよくなるだけでなく、自律神経のバランスが整ってストレスも軽くなる…まさに、ハッピーなスパイラルですよね。

“胃脳相関”を意識した食事や生活で、胃だけではなく心身すべての健康を目指しましょう!

【三輪洋人 先生】
兵庫医科大学主任教授。同病院診療部長(消化管内科)、内視鏡センター長。専門は消化器内科一般、消化管疾患、特に逆流性食道炎(胃食道逆流症)、機能性ディスペプシアなど。

【春間 賢 先生】
川崎医科大学総合医療センター総合内科学 2(消化器内科)特任教授。淳風会健康管理センター医療診療セクターセクター長。専門は消化管腫瘍、胃炎・消化性潰瘍、消化管の機能異常など。

<文/持丸千乃>


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