最強の共働きごはん「生ハムユッケ丼」の作り方。2人分で322円ナリ
共働きなのに、家事の負担は女性のほうが大きい。ため息をつきつつ食事を作る女性のそばで、男性は手伝うタイミングを失っているのかも。そんなモヤモヤした空気を解消してくれるのが、『ふたりを平和にしてくれる最強の共働きごはん』(KADOKAWA)。
◆すべてが平等、だからうまくいく
著者はYouTube『てりやきチャンネル』を運営する20代のおにいさんとおねえさんです。もともと高校の同級生だったふたりが、紆余曲折を経て同棲を開始したのが2020年。この年にYouTubeも開設しました。
食に対するこだわりも食欲も旺盛なふたりですが、1ヵ月の食費は2.5万円。お肉もパスタも丼物も網羅して、おまけにカラフル。毎日がおうちデートのようなメニューなのです。愛と節約の融合を、さっそくのぞいてみましょう。
◆料理をするから仲が深まる
なぜふたりで料理をするようになったのか、根底にはおにいさんの「しんどいことは折半しよう」という言葉にあるように思います。おにいさんの両親もおねえさんの両親も共働きなのに、やはりお母さん側の家事負担が大きかったのです。おにいさんとおねえさんはいくつかルールを決めて、一緒に料理をするようになったと言います。
節約も意識しましたが、懐具合よりも潤ったのはふたりの関係。「仲が良いから料理をする」から、「料理をするから仲が深まる」という揺るぎない絆ができました。
◆長所と短所を生かした、ふたりのルール
「それぞれの得意なことをやる」「リクエストを素直に伝える」等々、基本的なルールはありますが、私が感心したのはあえて気遣いをしない気遣い。たとえばおにいさんの「何を作るかは、最初にお腹が空いてキッチンに立ったほうに主導権がある」や、おねえさんの「“疲れているだろうから、相手の好きなものを作ろう”という考え方はない(笑)」という意見。あなたのために、という気遣いに包まれた押しつけがましさは一切ないのです。
ふたりはお風呂も一緒に入りますが、理由は一択「節約になるから」。食費を節約するには一緒に料理、水道光熱費を節約するには一緒にお風呂。結果、節約が愛を育てているのです。
◆パパッとできる「生ハムユッケ丼」
残業、深夜帰宅、疲労困憊。食事なんか作る余裕がない状況が、ふたりで重なってしまったら……。これぞ共働きあるある事情。パパッと準備ができて、栄養たっぷりで、ご褒美感もある一品をおしえてもらいました。
【材料(2人前 合計322円)】
生ハム 120g(252円)
きゅうり 1本(40円)
Aコチュジャン 大さじ1
ごま油 大さじ1
温かいごはん 茶碗2杯分
すし酢 大さじ4(1人分大さじ2)
卵黄 2個分(30円)
白ごま 適量
◆作り方
1 きゅうりはヘタを切り落として千切りに、生ハムは1枚ずつはがしてひと口大に手でちぎる。
2 1にAを混ぜ合わせる。
3 器にごはんをよそいすし酢を混ぜ合わせ、2を全体に、卵黄を真ん中にのせ、白ごまをふりかける。
ふたりは業務スーパーや八百屋を利用していますが、通常のスーパーでも生ハムの切れ端が安価で買えますよね。生ハムが食卓に登場するだけでなんとなく豪華なのに、こちらは1人分たったの161円! 私も作ってみましたが、時短料理なのに手抜き料理には見えません。ひんやりと口あたりもいいので、暑い夏にもピッタリです。
◆優しいものが食べたい日は「ブロッコリーの豆腐グラタン」
慌ただしい平日を終え、のんびりと身体を労わりたい休日。簡単ヘルシー、お豆腐たっぷりなグラタンはいかが。
【材料(2人前 合計209円)】
絹ごし豆腐 2丁(600g)(52円)
冷凍ブロッコリー 150g(45円)
合わせみそ 大さじ2
マヨネーズ 大さじ4
ピザ用チーズ 160g(112円)
乾燥パセリ 適量
◆作り方
1 ボウルに水切りした豆腐、合わせみそ、マヨネーズを入れて混ぜる。
2 冷凍ブロッコリーを表示通りに解凍する。
3 耐熱容器に1を入れてブロッコリーを盛りつけ、ピザ用チーズをかけて、トースターで5~10分、チーズが溶けて焦げ目がつくまで加熱する。仕上げに乾燥パセリをふる。
マヨネーズのコクはありつつ、みそが入っているのでほんのり和風。ボリューム満点ですが、メインの食材がお豆腐なので胃にもたれません。低カロリーで高たんぱく、チーズの香ばしさに食指が動きますよ。
◆あきのこない、ふたりの関係性
ふたりの呼び名が彼氏と彼女ではなく、おにいさんとおねえさんであるように、本書に甘ったるい恋の香りはしません。ページからただようのは穏やかな愛と信頼感。みずみずしいのにベタベタしていない、毎日食べても飽きのこない料理のような、理想の男女関係までが見えてくるのです。
―小説家・森美樹のブックレビュー―
<文/森美樹>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx