削りたての鰹節の香りが心に染みる!別格のお出汁を体感する和食店

和食の要といえばお出汁。今まで、“引き立て”のお出汁を味わったことはあるだろうか。

引き立てのお出汁は、日本人の本能に訴える上品な香りを放つ。特にカウンターにて目の前で作られるものは、上質な和食店でしか堪能できない贅沢なのだ。

今回は会食はもちろんデートにもぴったりな、お出汁の真髄を楽しめる和食店を紹介する。



※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。

削りたての鰹節の芳香に、和食の奥深さを新たに知らされる 『炎水』

ひと組ごとに目の前で鰹節を削って一番出汁をとるまでのすべての所作が、意味深いプレゼンテーションだ


店主の伊藤龍亮さんは『龍吟』に9年半勤め、後半は副料理長として焼き場を任されていた。独立すると昨年12月に『炎水』をオープン。

「料理人が一番美味しいと思った瞬間のお出汁を味わっていただきたい」と、語る。つまり一番美味しいお出汁とは、伊藤さんの味見と同じ状態の一番出汁のことだ。

せっかくカウンターで鰹節を削った出汁を通常のように濾してしまっては、フィルターで失われる香りがあると思ったそう。

そこで、鍋からお玉ですくって特注の器に注ぎ、ゲストに体験してもらうというスタイルに行き着いたのだ。

「出汁について、誰も掘れないようなところまで掘り下げていきたい」と、その魅力を新たな視点で伝える心意気でいる。

食材との親和性を尊重した引き算の美学で魅せる


「茄子と蒸し鮑のお椀」。

鰹昆布出汁に合わせたのは、揚げてから炊いた水茄子と下田産の蒸し鮑。調味料は使わずに、素材の奥深さで味わいを構成している。

鰹節を大量に使用し、短時間で仕上げているからこそ、雑味が出ずに鮑の香りも引き立つ。


使用するのは鹿児島県指宿市産の本枯節。

横幅が広くツルツルした断面が香り豊かな出汁の秘訣。削りたてを一枚食べさせてくれる。



そのスタイルは鰹の粉が出ない長切れできる最高峰の鰹節を使用している証であり、カンナの完璧な切れ味も表している。

おちょこは利き茶をイメージした形で蓋付き。蓋を開けると優しくも奥深い香りが漂い、口をつけると鼻に直接香りが入る角度となり日本人の本能に訴える。

飲めば品のよい鰹の香りが喉もとから上がってくる。余韻まで贅沢なのだ。


焼きたての松茸をカウンターでさき、次に炭で淡路鱧の皮目を焼く。

松茸の芳潤な香りに鱧が少し焦げた香りが重なり、その二重構造の香りが空間に充満する。食す際はスダチ醤油で。コース 27,500円。

計算し尽くされたカウンターが、すべてのゲストに香りを届ける


中の調理場を狭くしたぶん客席を広くとったり、背もたれの高い椅子を選んだり、居心地のよさを追求した内装ゆえ香りに集中できる。


カウンターは鰹節を削る前提の設計。

時差なく一番出汁の香りを届けるため、板場と客席をフルフラットにした。素材は同じ木で統一。

鰹節の澄み切った香気に魅了される!

澄み切った香気を引き出す職人技に魅了される 『伯雲』

小気味いい音を立てながら鰹節を削っていく


『伯雲』の店主の坂本慎吾さんは、日本料理歴19年で『龍吟』に10年在籍し、後半は料理長を任されていた。『龍吟』時代では『炎水』の伊藤さんの兄弟子にあたる。

一番大事なのは削りたてであるとしつつ「カウンターでひくからこそ香りが空間にまわる」と話す。

実際、間近で鰹節が削られると、嗅ぐというより香りを体感するといった瞬間を得て、昆布出汁に削り節が落とされると柔らかな芳香に包まれる。

仕上がりの理想は、鰹節の味が染みでた出汁ではなく、昆布のベースがしっかりあって鰹節の香りだけをすくいあげたもの。

「一番出汁はひいた瞬間から刻一刻と味が変わります。風味は風のように消えていくので、引きたてがやはり美味しいです」と、その刹那さにも惹かれているのだ。

鰹の味に支配されることなく、最大限に香りだけを引き出す


「鱧と松茸のお椀」。

鱧と松茸という古典的な組み合わせでいただくお椀。素材の味がにじみでて、ほのかに香る柚子が絶妙な存在感を出す。

最初は、お椀蓋を少しずらし、漏れ出る香りを楽しむツウもいるとか。溢れ出る香りを余すことなく堪能したい。


鹿児島県の超軟水の温泉水で利尻昆布の旨みを抽出し、同県の指宿市産の本枯節を落とす。

このとき、香りだけ引き出すことを念じるとか。



「一番出汁というけど0.9番出汁のイメージでひけと山本征治親方に言われていました」と『龍吟』出身の坂本さんは語る。

その繊細さは旬と調和するためでもあり、いまなら鱧と松茸と重なることで新たな香りの体験が楽しめる。

いざ味わうと、つま先まで染み渡るような滋味深さなのだ。


長崎県の壱岐でとれた鰹の塩たたき。藁でスモークしたあと高温の炭火で焼き上げている。

細長くカットして皮目を増やし、砕くようにかじることで皮から深い香りと旨みを感じられる。コース 27,500円。

繊細な日本料理を邪魔しない、上品な木の香りが漂う


内装のイメージは京都。

木を多用し、土壁や網代天井、快適な「宮崎椅子製作所」の椅子など、全般、心地よい空間となっている。


出来たての焼き物や炊き合わせを出すための小窓がカウンター正面にある。

ヒートランプの灯りが照明としてもいい雰囲気を醸す。



お出汁の香りに、心身ともにほぐされていく。カウンターで新たなる体験を共有すれば、2人の距離も自ずと縮まるはず。

無駄をそぎ落としたものこそ贅沢、それを知る大人たちの夜にぴったりの2軒だ。


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