「友人と会う」と言い出掛けていった妻。しかし高級ホテルで、夫が見た衝撃的な光景

“男女平等”が叫ばれている、昨今。

しかし「6歳未満の子を持つ夫婦の、1日あたりの家事・育児関連時間」は妻が平均7時間34分。

それに対し、夫は1時間23分(総務省「社会生活基本調査」)ほどだという。

日本における夫の家事参加率は、先進国の中でも最下位なのだ。

家事・育児に非協力的な夫。それに対し不満を抱き、愛想を尽かす妻たち。

これは、そんな「夫力(オットリョク)」皆無の男が、離婚を免れるために日々成長していく物語である…。

◆これまでのあらすじ

夫力を上げるために努力していた俊平だが「夫力向上委員会チャンネル」に出演している流星の、不審な行動が気になり始める。

気づかないうちに、流星が妻・柚葉と密会していたようで…?

▶前回:結婚3年、30代夫婦。持ち家アリで経済的余裕もあるはずなのに、それでも妻が子作りを拒否するワケ


この日は、なぜか朝から胸騒ぎがしていた。

理由を聞かれたとしても、うまく説明できない。だが、ただただ何か嫌な予感がしたのだ。

「俊平。今日は友達とお茶の約束があるから、出かけてくるね」

そう言いながら洗面台で髪の毛を巻いたり、頬に何かをつけたり。一心不乱に出かけるための準備をしている、妻の柚葉。

「ちなみに、今日はどこでお茶するの?」
「…えっ?」

驚いた顔で、こちらを振り向く柚葉。一瞬たじろいだようにも見えたが、少しだけ間を置いてこう答えた。

「パレスだよ」

妻がつけた、色っぽくて少し甘いシャネルの香水の香りが、僕のほうまで漂ってきた。

「この匂い、久しぶりに嗅いだなぁ」なんてことを思いながら、なぜか胸がチクリと痛んだのだ。

昼過ぎからめかし込んで出かけた柚葉。妻を追いかけた俊平が見た、衝撃の光景は…

ホテルのロビーで見てしまった、妻と密会相手の姿


「じゃあ、行ってくるね」

秋らしい色合いのロングスカートに、白の半袖ニット。そしてブーツを履いて出かけようとしている柚葉を見て、改めて綺麗だなぁと思う。

でも最近、僕と出かけるときは基本的にすっぴんだし、スニーカーが多い。こんなにも気合の入った妻を、久しぶりに見た気がする。

「うん、気をつけて行ってきてね」

土曜の14時から、こんなにも着飾って誰と会うのだろう。

本人は“友達”と言っていたし、信じてあげるべきなのに。気づけば、僕は慌ててタクシーに乗り込んでいたのだ。そして運転手に、こう行き先を告げていた。

「『パレスホテル東京』までお願いします」

タクシーの車内で、自分の心臓が高鳴っているのを感じた。流れる景色はいつもと変わらないはずなのに、どこかグレーがかって見える。

20分ほどでホテルに到着し、僕は一息ついてからエントランスを抜けた。

― 僕は、こんなところで何をしているんだろう。

“愛する妻が、友人とホテルのロビーで会ってお茶をする”

ただそれだけのことなのに、まるで疑うようなことをしている自分が嫌になる。

今日も『パレスホテル東京』のロビーは美しい。豪華絢爛で、大きく咲き誇った花が迎え入れてくれる。

周囲を見渡し、とりあえずロビーの奥にある『ザ パレス ラウンジ』へと進んだ。

土曜のせいか混み合っている店内では、品の良さそうな男女が談笑している。アフタヌーンティーを楽しんでいる綺麗な女性たちも目に入った。

「はは、そうだよな。友達とお茶するって言ってたもんな」

急に冷静になり、踵を返そうとしたそのときだった。視界の片隅に、不意に入ってきた光景。

そこで僕は、驚くべきものを目にしてしまったのだ。

「え…?」


一瞬、自分の目を疑った。

ラウンジの、奥の方に見慣れた女性がいる。それは紛れもなく、柚葉に違いなかった。…そして向かいの席にいたのは、女性ではなく一人の男性だったのだ。

彼の顔は、こちらから見ることはできない。だが肩幅が広く、若そうな後ろ姿に心臓が止まりそうになる。

「いや、違う違う」

自分を納得させるかのように、一人で首を横に振る。ただホテルのロビーで健全にお茶しているだけだ。それに、男女の友情だって十分成立する。

ただここまで来た以上、どんな人なのかも気になるところではある。僕は柚葉の視界に入らないよう注意しながら、相手の顔の確認作業に入った。

遠いので、会話は聞こえない。なんとか男の顔が認識できる場所まで移動し、こっそりと盗み見た。

…その瞬間。僕は呆然と立ち尽くしてしまったのだ。

どうして、こんなことをしてしまったのだろうか。いっそ、見ないほうが良かったかもしれない。

「え?う、嘘だろ…」

柚葉が楽しそうに話していたのは、僕がよく見ていた「夫力向上委員会チャンネル」に出てくる、例の流星だったのだ。

「な、なんで?なぜ柚葉が、奴と一緒にいるんだ?」

思考が追いつかない。

柚葉が、流星のチャンネルを見ているのかもしれないとは思っていた。だが現実世界で二人が繋がっていたなんて、考えてもいなかったのだ。

しかも、土曜の昼下がり。高級ホテルに来てまで、二人きりで会っている。

「どういうこと…?」

一瞬、偶然を装って二人の前に登場しようかとも思った。だが美男美女の彼らが楽しく談笑している姿に、圧倒的な敗北感しか感じなかった。

目をキラキラと輝かせている妻と、男の僕から見てもカッコイイ流星。

その間に、どうやって入っていけばいいのだろうか。

結局、僕は黙ってその場を後にし、タクシーへと乗り込んだ。

「ただいまぁ」

この日、柚葉が帰宅したのは18時を過ぎていた。

妻の密会相手は、百戦錬磨の年下イケメン…。二人は何をしていたのか?

「わ!俊平いたんだ。どうしたの、電気もつけずに。びっくりしたぁ」

帰宅した柚葉が電気をつけたので、急に視界が明るくなった。

「まぶしい…」

昼間に見た光景が忘れられなくて、悶々と考えているうちにすっかり陽が落ちていたらしい。

「俊平、どうしたの?体調でも悪い?」

心配そうに妻が顔を覗き込んでくる。出かける前に柚葉がつけていたはずの香水の香りは、もうしない。

「いや。…なんでもない」

どう聞けばいいのだろうか。「昼間、誰と会っていたんだ?」とストレートに聞けばいいのかもしれない。「流星とはどういう関係?」それでもいいだろう。

でも聞きたいことは山ほどあるのに、言葉が出てこない。

「俊平、大丈夫?顔色が悪いみたいだけど…」
「大丈夫。ちょっと体調悪くて。今日はもう寝るね」
「熱とかは?夕ご飯はどうする、食べられそう?」
「いや、いらない」

食欲なんてない。

「…友達とのお茶は、楽しかった?」
「うん、楽しかったよ」
「友達と会ってたんだよね。それって男?女?」

一瞬、二人の間に静かな空気が流れる。さぁ、柚葉はなんと答えるのだろうか。

「う、うん。女の子だよ」

このとき、妻の浮気を僕は確信したのだ。


男とは、なんと勝手でお気楽な生き物なのだろうか。

世の中がいくら不倫だの浮気だのと騒いでいても、心のどこかで「うちの妻だけは大丈夫だ」と思っているフシがある。

浮気される夫が悪いし、男として魅力がないから。そんなふうに、どこか他人事として捉えていたのだ。

だが実際に自分ゴトとなると、何も考えられなくなる。何がダメだったのか、そして一体いつからそういう関係だったのか…。

柚葉が離婚したいと言い始めたのは、僕の夫力のなさが原因かと思っていた。

だが本当は、若いイケメンとのアバンチュールを楽しんでいただけではないか。

腹が立って、僕は一人でベッドに潜り込みながら、もう一度流星の動画チャンネルを確認してみた。文句の一つでも言ってやりたかったからだ。

だが動画を見て、血の気が引いていった。流星のチャンネルに、こんな動画が投稿されていたからである。

― 皆さん、こんにちは。今日は夫が家事をしてくれないことに悩む、主婦のA子さんからのお悩み相談です。彼女はとても美人で聡明で、僕が尊敬している大好きな人なのですが。夫との関係に悩んでいるとのこと。


「A子って…。まさか柚葉のことか?」

そう思いながら、黙って動画を見る。

― そんな彼女の相談に乗っているうちに、力になりたいと思う自分がいました。彼女は頑張っている。それなのに夫は家事をしてもらって当たり前だと思っていて、彼女に感謝さえしていない。そんな結婚生活、今後も続ける必要があるのでしょうか?


数秒、流星が黙りこくった。そして、こう言い放ったのだ。

― 僕は、そんな彼女を救いたいと思っています。僕なりに、心身ともに支えてあげたい。既婚者というだけで諦めたくないんです。


「はっ?何これ?」

これは、流星から僕への宣戦布告なのだろうか。人の妻に手を出しておきながら、何を堂々と偉そうに言っているのだろう。

…そしてコメント欄が、大炎上していた。


▶前回:結婚3年、30代夫婦。持ち家アリで経済的余裕もあるはずなのに、それでも妻が子作りを拒否するワケ

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流星からの宣戦布告に対し、夫は…。そして本当に、妻は浮気をしているのだろうか?

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