余命僅かの女性が願った最後の面会 愛馬の姿を見て笑顔に(英)

イギリス在住のジャン・ホールマンさん(Jan Holman、68)は今年の夏、病院で診察を受けるとそのまま入院することになってしまった。病院で治療を受けていたが回復の見込みがないと分かり、入院から4週間後にチェシャー州チェスターのホスピス「Hospice of the Good Shepherd」に転院した。

ホスピスとは、死が迫っている患者の痛みや不安を和らげる緩和ケアを行う施設である。病名は明かされていないが、余命僅かとなったジャンさんはホスピスで最後の時を過ごすこととなったのだ。

診察を受けてからすぐに入院したジャンさんだったが、最初の4週間はパンデミックの影響で面会制限があり夫のデニスさん(Dennis)にすら会えない状況だった。

さらに一緒に暮らしていたキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの愛犬“モンティ(Monty)”と“ローリー(Rowley)”、毎日乗馬して触れ合っていた愛馬“ボブ(Bob)”にも会うことができず、深い孤独と悲しみを胸にホスピスでの時間を過ごしていた。

そんなジャンさんの姿を見たホスピスのスタッフたちは、なんとか面会させてあげたいとある行動を起こした。

看護師たちはジャンさんのベッドを中庭に面した窓のそばへ運び、当時ボブが預けられていた農場「Thornleigh Park Farm」の厩舎担当のスタッフと連携してボブとの面会を手配したのである。

ベッドから起き上がれないほど衰弱していたジャンさんだったが、ボブに会えると聞いて心待ちにしていたそうだ。大きな窓からボブが顔をのぞかせると、それまで暗い表情だったジャンさんの顔が一変した。

ボブも毎日会っていたジャンさんに急に会えなくなり寂しかったのか、ジャンさんに鼻をこすりつけて久し振りの再会を噛みしめていた。ボブはジャンさんの手からニンジンやバナナ、リンゴなどのおやつを貰い、いつもと変わらない時間を過ごしたという。最後の時間を過ごす1人と1頭の姿に、周囲にいた人は目に涙を浮かべていたそうだ。

ジャンさんはスタッフたちの計らいに感激し、こう明かしたという。

「ホスピスのスタッフが私のためにしてくれたことが、本当に信じられません。数週間前まで、私は毎日ボブに乗っていたんです。ボブは私の人生の大切な一部であり、ボブに会うことができず本当に寂しかったです。」

「数年前にご近所さんがホスピスに入ったとき、私は犬を連れてお見舞いに行くことが許可されたので、犬と面会することは可能だと思っていました。ただボブともう一度会える機会を与えてもらえるなんて思ってもいませんでした。」

モンティとローリーを連れてきたデニスさんは「ジャンがホスピスに移ってから、定期的に面会できる人を指定できるようになり本当に安心しました。それでもモンティやローリー、ボブまでも面会リストに登録できるなんて想像もしていませんでしたね」とホスピスの対応に喜んだ。

同ホスピスで副病棟マネージャーを務めるルイーズ・サヴィル・キングさん(Louise Saville King)は「ジャンさんがホスピスにきたときから、馬などの動物に情熱を注いでいること、そしてジャンさんの長い人生の中で大きな役割を持っていたことは明らかでした。」

「このことを踏まえ、ボブとの面会を手配することは重要だと感じていたのです。緩和ケアの理念は、患者の臨床的なニーズを満たすだけではなく、感情など精神的なニーズを満たすことにもあります。」

「どんな形であれ私たちができることで、患者さんとご家族に変化をもたらすことができるのです。」

死を迎える場所として知られるホスピスだが、ルイーズさんは「ホスピスは人々をサポートし、十分なケアを行うポジティブな場所です。ホスピスの活動は人々の生活に大きな変化をもたらすことができるのです」とコメントしている。

画像は『Chester Standard 2021年10月7日付「Hospice of the Good Shepherd patient’s emotional reunion with her horse and pet dogs」』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 iruy)

2021/10/12 5:00

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます