伊東純也の“鈍感力”で日本の救世主に 不発の攻撃陣を活性化できるか

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「プレッシャーを感じないというわけじゃないし、責任も感じますけど、それを力にできるタイプだと思っています。難しい状況になりましたけど、まだチャンスはあるので、自分がしっかりチームを引っ張っていければいいかなと思います」

 屈辱のサウジアラビア戦から丸一日が経過した9日午前。伊東純也は起床直後の寝ぐせのついたボサボサ頭でメディアの前に現れた。アッケらかんとしたキャラクターと淡々とした口ぶりは、FIFAワールドカップカタール2022の出場危機に瀕し、揺れ動く日本代表の中で異彩を放っている。その強心臓が頼もしく映る彼がオーストラリア戦の救世主になる可能性は大いにありそうだ。

 実際、伊東はやらなければいけない立場にある。サウジアラビア戦は累積警告で出場停止だったからだ。10月2連戦のメンバー発表前には「伊東は日本に直行させた方がいい」という意見も出たが、森保一監督はあえて最初から招集。チームに帯同させた。それも「主力の1人として最終予選の全てを共有してほしい」という願いがあってこそだろう。

 こうした意向を汲んで、酷暑のジェッダでは同じくベンチ外になった橋岡大樹とともに裏方に徹した。ウォーミングアップ後のボールの片づけなどを率先して行い、少しでも仲間たちのためになれればと振舞った。

 しかしながら、スタンドから目にしたのは、大苦戦を強いられる日本の戦いぶりだった。0-1の敗戦という結果を突きつけられ、「次は自分がゴールに絡まなければいけない」思いを一層強くしたはずだ。

「チャンスはありましたし、チャンスの数ではあまり変わっていなかった。そこで点を取るところはやっぱり大事かなと。前の選手がしっかり決めることが重要になってくる。自分が出た場合にはまずチャンスを作ること。アシストの部分が多くなりますけど、自分でもチャンスがあれば(ゴールを)狙っていきたいです。自分の特長はどこが相手であれチャンスを作れるところだと思いますし、相手の嫌がることをしていけばいい」と、伊東らしさをとことん出して、オーストラリア撃破の急先鋒になる覚悟だ。

 最終予選序盤3試合の日本のゴールはわずか1。得点力不足の解消は急務の課題と言っていい。サウジアラビア戦を見る限りでは、相手に一時は7割近くボールを支配されたが、前半には冨安健洋のロングフィードに浅野拓磨が抜け出し、南野拓実のヘディングシュートにつなげたシーン、あるいは鎌田大地が大迫勇也に絶妙のスルーパスを出したビッグチャンスなど、得点の取れそうな場面は確かにあった。それを決め切れるかどうかが運命の分かれ道だ。

 伊東は攻めの分厚さを確実に加えられる人材。ピッチに立ったらどんどん躍動感を示してほしい。9月の中国戦で持ち前のスピードから敵陣深いところまでえぐり、大迫の決勝弾をお膳立てしたような「個の打開力」を前面に押し出すことで、チームに大きな刺激を与えられるはずだ。

 加えて言うと、自身の得点も貪欲に取りに行くべきだ。ここまでの国際Aマッチ出場数は26に上るが、ゴール数は5。へンクでは8月14日のルーヴェン戦で右サイドから味方とのパス交換で中央へ進み、ペナルティエリア外側の位置から豪快な左足ミドルシュートを決めており、得点感覚が鈍っているわけでは決してない。屈強で大柄なDFがひしめくベルギーでやってのけているのだから、オーストラリア戦でできないはずがない。

 実際、ここまでの日本は遠目からのシュートが少ない印象が強い。快足ウインガーの伊東はもちろん縦への突破からのクロスが最大の武器ではあるが、虎視眈々とシュートを狙っていかないと相手も怖くない。フレッシュな状態の伊東が強気の姿勢で敵を凌駕できれば、必ず活路が見えてくるに違いない。

「相手が強いということはありますけど、自分たち次第だと思います。しっかり個々の良さを出しつつ、チームとして戦っていかないといけない」と伊東自身もストロングが出ていない現状が気になっている様子。守護神・権田修一も「ウチのピンチはマイボールをロストしたところから攻め込まれることがほとんど」と指摘した通り、ビルドアップの部分がスムーズにいっていないところがあるのは事実だ。

 中盤を中心に修正し、サイドを有効に使える時間帯が増えてくれば、伊東が矢のように縦へ突き進む回数も多くなる。ひいてはオーストラリアの壁をこじ開けられる。相手もサイド攻撃が多いため、伊東は守備負担が多くなるだろうが、今、一番走れる状態にいる。彼にはチャンスを引き寄せる使命があるのだ。

「まだ7戦残っているので、とにかく切り替えて強い気持ちで前に進むことが大事。苦しい時こそ、自分たちがこれまでやってきたことと仲間を信じ、監督、スタッフ、みんなを信じて戦っていくべき」という長友佑都の言葉を真摯に受け止め、「右の切り込み隊長」には無心でゴールへと突き進んでもらいたい。

取材・文=元川悦子

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