都市部タワマンに求めてみたい“団地ライフ”という蜜月時代

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―[ロスジェネ解体新書]―

 あらゆる年代の人がいる職場はまさに“世代のルツボ”。特に社会に出て間もない人にとって、過重労働が社会問題になっている時代にあって嬉々として“徹夜仕事”をしたり、なんでも電子化、レンタルできる世の中で“モノにこだわる”40代以上の世代は奇異に映るかもしれない。

 社会の文脈的に“ロスト”されてきた世代は、日々どんなことを想い、令和を楽しもうとしているのか。貧乏クジ世代と揶揄されつつも、上の世代の生態をつぶさに観察し、折衝を繰り返してきたロスジェネ世代の筆者ふたりが解説していく。

◆マンション購入のメリットは「団地ライフ」に学ぶ?

「ずっと賃貸生活一筋でしたが、昇進・昇給に合わせて都心にマンションを購入しました。金額もやや背伸び。妻とのダブルインカムだからこそなせる技…なんて同期や後輩たちには茶化されましたが、老後の住まいの心配がなくなったし、世帯数が多いおかげで子供達にたくさん友達ができそうなのも魅力かな、なんて思いました。良い買い物だったと思いたいですね」(通信・46歳)

『安いニッポン』(中藤玲・著)にも記されているように、約20年もの長きに渡り日本人の給与はほとんど上がっていないと言われています。物価の上昇も先進国の中では万年下位…。

 そんな中、特に東京都内のマンションだけは値上がりし続けているようで、「2009年の東京23区の新築マンション価格の平均値は5190万円、中央値は4680万円だったが、2019年上半期には平均7644万円(09年比147.3%、以下同)、中央値6698万円(143.1%)と大幅に上昇している」(出典:日経ビジネス「東京23区の新築マンションの平均価格がバブル期超えのワケ」)のだそうです。

「給料は上がらないのに家も買えないのか!」と、バブル以降辛酸を舐め続けてきたロスジェネ世代の諸氏においては思わず嘆きたくなる昨今の住宅事情です。コロナ禍を経て状況が変わったかというとそうでもなく、「マンションを手放す人が減ったことで供給量も減りましたが、マンション購入の需要が増えたため成約価格が上がりました」(出典:マイナビニュース「2021年マンション価格推移をグラフ化!5大都市の動向と買い時も解説」)とのことです。そんな折に念願かなって購入できた方はかなりラッキーな方なのかもしれません。

◆タワマン生活から去来する昭和の風景

 都心部においては、特にタワーマンションが根強く人気です。冒頭の方のようにお子さんがいたりすると、リッチな共用スペースなどの存在も手伝ってちょっとしたコミュニティ化したりもするため、各戸それぞれで状況が違う戸建てよりも「友達が作りやすい」「困ったことを相談しやすい」というような昭和の頃のような“醤油の貸し借り”感も魅力の一つなのかもしれません。

 近隣のお付き合いが苦手で…という方はさておき、子育てを含む今後の生活のあれこれを、身近に併走してくれる“戦友たち”がいてくれるのは、実は大きな安心材料の一つなのかもしれません。

 こんな都心のマンション事情、タワマン事情を聞くと、ロスジェネ世代の筆者はどこか懐かしさを感じてしまいます。我々世代の多くが生まれ育った「団地での日々」をどうしても思い出してしまうからです。

 ましてや新型コロナによる感染リスクのさなかです。自由に遊びにいけない子育て家族を抱えるロスジェネファミリーにとっては、あの団地のような安心感をもって過ごしている方も中にはいるのではないでしょうか。

◆団地生活の“パッケージ感”

 1970年代、高度経済成長期における住宅供給を行うことを名目に、日本住宅公団により次々と“マンモス団地”が誕生しました。東京都内や近郊では、板橋区の「高島平団地」、練馬区の「光が丘パークタウン」、東久留米市の「ひばりヶ丘団地」などが有名でしょうか。

 こうした“都心から近距離の郊外”の巨大な敷地に多くのファミリー達が移り住みました。東京、大阪、名古屋の三大都市圏でおこった、いわゆる“ドーナツ化現象”と言われるものです。東京都内だけでなく埼玉県などの近県まで含むもので、かくいう筆者も小・中学生時代をそこで過ごした一人です。

 各数十戸の賃貸および分譲の物件からなる数十棟もの均質な建物群が所狭しと立ち並び、同世代の子供たちとともに育ったわけです。当時は、よもや“ロスジェネ世代”などと呼ばれるとはつゆ知らず…。

 こうしたマンモス団地の存在は、近年のUR都市機構や多くのリノベーションプロジェクトによる再生・活用にもかかわらず、親世代の高齢化などの高度成長期の暗部のような語られ方をとかくしがちです。

 しかしながら楽しく育った当事者としては「団地生活は捨てたものじゃなかったな」などと折に触れて思うわけです。そこにはロスジェネ諸氏がタワマン購入を判断するに足る、忘れかけていた“楽しさが詰まったパッケージ感”があるような気がします。

◆団地の楽しさ①:なんでも揃う「ショッピングセンター」

 コンビニがそこかしこに乱立する現代では当たり前のことですが、大抵の団地には「ショッピングセンター」が併設されていました。イトーヨーカドー、西友などのスーパーマーケットを中心に、書店、玩具店、床屋・美容院から、内科や歯科医院まで揃っていることも。親にも子にも、団地内で生活できてしまうだけの十分な施設が充実していました。

◆団地の楽しさ②:「夏祭り」をはじめイベントが目白押し

 本来、作物などの豊作を祝うために行っていた夏祭りなどの文化的な催しも、団地にかかればお手の物です。農作も漁港もない郊外の新興住宅地にもかかわらず、とにかく夏になったら浴衣を着て、盆踊りをする。日本文化の基本のキが味わえてしまうのです。多くの出店も出店するし、ショッピングセンター各店舗が力を結集して実施するから、とにかく楽しいのです。

◆団地の楽しさ③:登下校が楽しく、安全

 これは学校によってそれぞれですが、大量の子供たちを一気に学校に送り込む必要があっったため、登下校時に各学年織り交ぜた「班編成」が組まれていました。6年生のお兄さんお姉さんが班長さんとなって一列人になって低学年の子達を責任もって連れて行くわけです。ですから必然的に安全度も増しますし、子供の通学を狙った痛ましい事件を回避することに貢献していたのではないでしょうか。

 物件ごとの差はあるものの、こうしたあまり語られてこなかった団地ライフのメリットは、タワマンを購入した・またはしたい同世代の方々にも、大なり小なり共感いただける点が多いような気がします。ファミリー層だけでなく、単身やDINKSの方々にとっても眺望や立地・便利さといった視点だけでなくこんな視点で物件を探してみるのも、また違った魅力が見えてくるかもしれません。

 住宅購入は出費としても資産としてもとても大きなものです。ゆえに、とかく表層的なスペックや老後の運用視点などで選びがちかと思いますが、しばし立ち止まって、昭和の時代に確かにあった「楽しかった団地ライフ」をちょっとだけ思い出してみると、より良いマンションライフがイメージしやすいかもしれませんね。

<文/ディスコ☆セリフ>

―[ロスジェネ解体新書]―

【ディスコ☆セリフ】
数々の雑誌を渡り歩き、幅広く文筆業に携わるライター・紺谷宏之(discot)と、企業の広告を中心にクリエイティブディレクターとして活動する森川俊(SERIFF)による不惑のライティングユニット。 森川俊 クリエイティブディレクター/プロデューサー、クリエイティブオフィス・SERIFFの共同CEO/ファウンダー。ブランディング、戦略、広告からPRまで、コミュニケーションにまつわるあれこれを生業とする。日々の活動は、seriff.co.jpや、@SERIFF_officialにて。 紺谷宏之 編集者/ライター/多摩ボーイ、クリエイティブファーム・株式会社discot 代表。商業誌を中心に編集・ライターとして活動する傍ら、近年は広告制作にも企画から携わる。今春、&Childrenに特化したクリエイティブラボ・C-labを創設。日々の活動はFacebookにて。

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