超ときめき♡宣伝部、SILENT SIREN提供曲に見るアイドル純度の高さとエモさの応酬|「偶像音楽 斯斯然然」第67回

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王道アイドルポップスを放つ快作『すきすきすきすきすきすきっ!』を9月29日にリリースした超ときめき♡宣伝部。今回は、超ときめき♡宣伝部のアイドル性やグループとしての強さを紐解きながら、同作収録「ラヴなのっ♡」の作詞をSILENT SIRENのすぅ、作曲をSILENT SIRENのサウンドプロデューサー、クボナオキが手がけていることから、サイサイとアイドルの親和性について冬将軍が独自の視点で綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

超ときめき♡宣伝部が9月29日にリリースしたミニアルバム『すきすきすきすきすきすきっ!』は形骸化しつつあるアイドルポップス市場に一石を投じる強作である。ポップでキャッチーに、正攻法でこれでもかというほどアイドルポップを攻めたててくる。それはダンスボーカルやロックアイドル、はたまた変化球を狙ったりと、多様化するアイドルシーンに、改めて“アイドルとは?”を投げかけるアンチテーゼのようだ。

超ときめき♡宣伝部「すきっ!〜超ver〜」Live Edit ver

TikTokでの「すきっ!」人気を筆頭にキャッチーでポップな楽曲が揃い踏み。

超ときめき♡宣伝部は、これまで松隈ケンタ(SCRAMBLES)であったり、前作『ときめきがすべて』での、谷口鮪(KANA-BOON)、オメでたい頭でなにより、ヨシダタクミ(saji)……といったバンドマン作家陣による、ロックファンの琴線に触れてくる楽曲を多く発表してきた。しかしここに来て、現体制での「すきっ!〜超ver〜」「むてきのうた〜2021ver〜」という過去曲のリメイクを筆頭に、アイドルらしいキャッチー性とキュートさへ振り切ってきたのが本作である。

ハネたリズムに合わせてキラキラオーラを振りまく「愛Song!」、ゆったりとしたメロディを丁寧になぞる可憐な少女性の歌い出しから、どこか大人への成長を感じさせるBメロ、サビでは普遍的なアイドルポップスへと変貌する「ジャンケンポン」、エレクトロなサウンドとリズミカルな楽曲展開が目まぐるしい「超ステップアップ」など、アイドル純度の高い楽曲の畳みかけである。

“王道アイドルとは?”“正統派アイドルとは?”……正直それがよくわからなくなってきている昨今、『すきすきすきすきすきすきっ!』を聴けば、その1つの答えが見つかるかもしれない。

……などと、偉そうに書いたものの、私自身がTikTok新規とでもいうか、超ときめき♡宣伝部をきちんと掘り下げて聴きはじめたのは比較的最近であるわけだが……その魅力を書き綴ってみたい。

とき宣とは“エモさ”の応酬である

超ときめき♡宣伝部といえば、安心と信頼のスターダスト所属らしい、実力と実践に裏打ちされた歌唱力とスキルフルな全力パフォーマンスが魅力。さらに特筆すべきは、アイドルエンタテインメントとしてのステージ上における情緒のぶち込み方がすさまじいところだ。今っぽくいうのなら、“エモさ”の応酬というべきものである。

好みはひとまず置いておいて、アイドル好きならこんなステージを見せられたら泣いてしまうしかない 超ときめき♡宣伝部 / トゥモロー最強説!! [2020/7/18 @Zepp Haneda(TOKYO)]

昨今はコロナ禍もあって、思うように活動ができないことであったり、そもそもアイドルグループはメンバーの卒業、はたまた加入といった、感情的な気持ちの揺らぎがつきものだ。演者のみならず見ている側もそこに一喜一憂する、それもまたアイドルを応援する醍醐味でもある。だが、反面でそうしたものは、内情を深く知らないと入り込めない部分でもあり、内向的になりすぎてしまう危険性もある。しかし、超ときめき♡宣伝部のステージには、それこそ“弱ってる時に聴くアイドルソングは麻薬 by 映画『モテキ』”と言わんばかりに、観る者聴く者の心にスッと入り込んで揺さぶりをかけてくる魅惑的な力があるのだ。

生歌の技術を褒め讃える表現、“喉から音源”という言葉もあるわけだが、逆に音源では味わうことのできない臨場感、歌声に情緒が加わり、それこそ語彙を失ってしまうような“エモさ”が彼女たちにはある。丁寧に歌うこと、上手に歌うことを由とするアイドルが多い中で、ここまで感情に身を任せているグループも珍しい。そして、その奥底にある決してブレることのない信念を感じさせる、力強い歌声が聴く者を魅了していく。

ときめき♡宣伝部「愛Song!」[ Live at ときめき♡夏の晴れ舞台2021 in アリーナ立川立飛 ]

小泉遥香の技術もあってパワフルかつ丁寧な歌唱、口角を引いた子音の発音がカッコいいボーカル。グループ全体のグルーヴを見越してか、時折独特のタメが入るのが個人的にグッとくるところ。坂井仁香は絶対的なセンターオーラ溢れる可憐な明るい歌声だ。超ときめき♡宣伝部の歌声、たとえロック系の曲であっても、斜に構えたり硬派なボーカルや歌い上げのディーヴァ方面に行かずにアイドル性を保ち続けているのは、彼女の癖のない丁寧で綺麗な歌声が軸にあるからなのだろう。そこに辻野かなみの実直で健気な姿勢とちょっと鼻にかかった優しい歌声、杏ジュリアの品格あるシュッとした佇まいと甘い歌声が加わる。吉川ひよりの屈託のない芳醇な歌声は唯一無二。そして、菅田愛貴の純真無垢で表情豊かな歌声と、彼女自身からナチュラルに発せられるパワーの破壊力がすさまじい。“ナチュラル・ボーン・アイドル”としか言いようがない、天賦のアイドル性に恐れ慄く。“××年に1度の〜”なんて野暮な形容はしたくはないのだが、こんな往年の正統感を踏襲しつつもニュージェネレーションのポテンシャルしか感じないアイドルなんて、そう滅多に出てこない逸材中の逸材。YouTubeチャンネルを筆頭とした個人コンテンツ然り、彼女が今後の超ときめき♡宣伝部における起爆剤になることは間違いない。

ライブだと、楽曲のまた違った側面を見せてくれる 超ときめき♡宣伝部「すきっ!〜超ver〜」サンリオピューロランド Ver

6人がそれぞれの豊かさを持ちつつも、滑舌よく倍音の明るい歌声が揃っている、それが超ときめき♡宣伝部のボーカル面における大きな武器。なによりも6人全員がエース級の輝きを持っているのに、グループとしてきちんとバランスが取れているというのは奇跡としか言いようがない。

彼女たちを指して“リアルプリキュア”とはよく言ったものだが、俗世を離れたアイドルとしての存在、雲の上のもの、といった偶像としての、アイドルの1つの完成型を感じざるを得ない。

とき宣 × サイサイ 最強説!!

そんな超ときめき♡宣伝部のアイドルとしての形を楽曲方面から明確にし揺るがないものとしたのが、本作に収録されている「ラヴなのっ♡」だろう。SILENT SIRENのボーカル、すぅ作詞で話題の曲である。

超ときめき♡宣伝部「ラヴなのっ♡」Dance Practice

「ラヴなのっ♡」はサイファミ(サイサイファミリー=SILENT SIRENのファンネーム)からすれば、イントロのギターカッティングから“サイサイじゃんっ!”と声をあげてしまうほどのサイサイ節が炸裂しまくっている。リズムと言葉遊びを巧みに操っていくメロディはもちろんのこと、イントロの転がるようなキーボードはゆかるんが弾いているのが目に浮かぶし、サビでガヤのように入るコーラスもゆかるんの声で再生される。作詞提供が話題となっているが、作曲は元メンバーでSILENT SIREN結成当初から楽曲制作に携わってきたサウンドプロデューサー、クボナオキ。つまり「ラヴなのっ♡」は事実上、SILENT SIRENの提供曲である。

【ラヴなのっ♡】レコーディングメイキング

「ラヴなのっ♡」は、こちらもTikTokで人気のSILENT SIREN「milk boy」を彷彿とさせる曲調である。「milk boy」もリズムと言葉遊びを巧みに操っていく節回しが炸裂する楽曲であり、加えて転調しまくりの難曲。「ラヴなのっ♡」も無作為的に転調を重ねていく。一聴すると、可愛さあざとさフルスロットルのように思えて、リズムとピッチ、滑舌、すべてにおいてハイテクニックを要する楽曲である。これは上記動画ですぅ本人が語っているように、超ときめき♡宣伝部の歌唱力を見越して作ったものであるという。自分たちと同レベルのことを求めているというわけだ。

「ラヴなのっ♡」は、女性目線で書かれた楽曲であると同時に、可愛さを前面に出しつつも難曲という構成は、超ときめき♡宣伝部のアイドル性とその裏にある実力を引き出し、より色濃いものにした。新たな武器となるキラーチューンの誕生である。

ちなみに前作『ときめきがすべて』のリード曲「エンドレス」はSILENT SIRENとほぼ同期である、KANA-BOON(2006年結成、2013年メジャーデビュー。サイサイは2010年結成、2012年メジャーデビュー)の谷口鮪による楽曲だが、こちらは男性からみたアイドルらしさ、という曲である。

超ときめき♡宣伝部「エンドレス」(2020年)

サイサイとアイドルの親和性

そもそも、SILENT SIRENの楽曲はガールズポップとして、アイドルとの親和性が高い。Whiteberry 「夏祭り(JITTERIN’JINNカバー)」(2000年)、ZONE「secret base 〜君がくれたもの〜」(2001年)と並んで、「八月の夜」(2015年)も多くのアイドル現場で歌われている。

SILENT SIREN「八月の夜」MUSIC VIDEO(2015年)

以前、すぅが事務所後輩グループであるPeel the Appleが出演するイベントを観に行ったところ、たまたま観たクマリデパートを気に入ったという事案に思わずニヤリとした。すぅの趣向を考えれば、クマリデパートにビビッときたことも納得がいくし、それに対し、“サイサイさんの女子校戦争大好きです!!”と返した優雨ナコも、今どきの女子感があって最高である。

このあと、クマリデパートのワンマンライブを観に行ったようで(誘ったクマリ側も、それを受けてちゃんと観に行ったすぅも律儀すぎてニヤリ)。

え、なにこれ、チェリチェリボムッ!でネコちゃんになっちゃう日も近いっていうことですか。

SILENT SIREN「チェリボム」(2016年)

クマリデパート「ネコちゃんになっちゃうよ〜」(2020年)

話は逸れたが、「女子校戦争」はバンド好き女子みんな大好きな人気曲。ゼロ年代に、俗に“ロキノン系”と呼ばれるギターロックバンドによるハイテンポのダンサブル曲が流行したが、それに対するサイサイ流のガールズバンドからの回答というべきものだ。アイドルマターで考えれば、KEYTALKの首藤義勝による、夢みるアドレセンス「ファンタスティックパレード」と並べて聴いてみるのも面白い。

SILENT SIREN「女子校戦争」(2015年)

夢みるアドレセンス「ファンタスティックパレード」(2016年)

KEYTALKは2007年結成、2013年メジャーデビューで、サイサイとほぼ同年代。両曲ともにハイテンポ、ダンサブル、オリエンタルという同じベクトルながらも、表現法が少々異なるのが興味深い。もちろんバンドが違うのだからあたり前のことではあるのだが、男性バンドと女性バンドの違いということもあるはず。

ガールズバンドらしいビートとグルーヴというものは確実に存在しており、藤井麻輝(minus(-))が“女性ドラマーはTR-808(ローランドが1980年に発売したリズムマシン)に近い”と、山口美代子(DETROITSEVEN、BimBamBoom)、Yuumi(FLiP)、歌川菜穂(赤い公園)という女性ドラマーを好んで起用していたのもそういった、女性ならではビートがあるからだ。

先の、超ときめき♡宣伝部のKANA-BOON楽曲であったり、ここ何度か当コラムでのドラムを軸としたテーマで取り上げている、虹のコンキスタドールや#ババババンビも、正攻法のアイドルポップスであるが、ガールズバンド感のある楽曲は少ない。ガールズバンド感のあるアイドルソングというものは意外に少ないのである。

このままアイドルとガールズバンドの関係性について考えていきたいところだが、それはまたの機会に。

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