<秋ドラマ>江口のりこ、北村有起哉etc. 際立つ個性派・実力派の主演

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 いよいよ今期のドラマがスタートし始めた。ラインナップを眺めると、注目に値する特徴が覗いていることに気付く。個性派・実力派の主演作が豊作なのだ。『SUPER RICH』の江口のりこに、『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』の木村多江&安藤玉恵、『ムショぼけ』の北村有起哉、『東京放置食堂』の片桐はいりと、新作舞台の発表かな? と思うような芸達者な布陣が並んでおり、ワクワクさせられる。

■いよいよメイン街道に打って出た、江口のりこ

 まずはフジテレビ木10『SUPER RICH』(10月14日より毎週木曜22時)の江口のりこ。近年の快進撃は、説明するのも野暮だが、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマの主演はこれが初であり、いよいよメイン街道に打って出る。

 柄本明率いる劇団東京乾電池所属の江口が、一般的な認知度をあげたのは、ドラマ自体の注目の高さも相まって『半沢直樹』と言われるが、もとより演技派・個性派として支持を得てきた。若い頃から単なるクールとは違う、何か飄々(ひょうひょう)とした落ち着きオーラをまとってきた江口。ドラマ『時効警察』シリーズ、『コウノドリ』シリーズ、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』、『これは経費で落ちません!』『その女、ジルバ』『俺の家の話』などなど、『半沢直樹』を挟み、江口がイイ味を添えてきた作品は数知れず。

 主演作に目を向けても、初主演映画『月とチェリー』から大胆かつユニークな存在感を見せつけ、実写で見せるには何とも難しい空気が流れるショートコメディ『野田ともうします。』も、江口の存在感があってこその良作となった。短編といえば、現在Huluで伊藤沙莉とダブル主演を務める『モモウメ』も抜群に面白い。

 『SUPER RICH』ではベンチャー企業の女性社長・氷河衛(ひょうが・まもる)を演じる江口。「お金はあるけれど愛に飢えた人生」を送ってきた衛の、心の奥底に覗く感情と、人との出会いによって変化していく様を、持ち味の、決して押しつけがましくない温度感を保ちつつ演じ、新たな魅力に気付かせてくれそうだ。江口のせりふは全編関西弁で話される予定とのことで、兵庫県出身の江口が繰り出す“ネーティブ関西弁”の小気味よいやりとりにも注目だ。

■木村多江×安藤玉恵、ふんわりのほほんな姉妹が誕生

 挑戦的なドラマを放ち続けるNHKのよるドラに登場する『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(11月1日より毎週月曜22時45分)は、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のエッセイをドラマ化したホームドラマ。ピンクのドレスに身を包み、誰も傷つかない笑いを提供してきた疑似姉妹の阿佐ヶ谷姉妹に扮するのは、姉・渡辺江里子役の木村多江と、妹・木村美穂役の安藤玉恵。非常に心くすぐる組み合わせながら、どんな化学反応が起こるのか、予想がつかないところがあり、期待がふくらむ。

 その優しい声だけで心を許したくなる木村多江は、キャリア前半の出演作である『救命病棟24時』から、ほっと癒やされていた人も多い。その後も『大奥』や『とと姉ちゃん』、主演映画『東京島』などの作品を重ね、今夏に出演したコントバラエティ『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』でも巧さを見せた。かつては薄幸美人と称されたこともあったが、近年ではそうした枠のイメージに囚われていない。

 妹役の安藤玉恵は、2007年まで三浦大輔主宰の劇団ポツドールの看板女優として活躍し、退団後も映像に舞台と幅広い活動を続けている個性派。ぽってりした唇が印象的で、『松ヶ根乱射事件』『夢売るふたり』をはじめ、濡れ場を演じることも多いが、それによる固定の色が着くこともなく、幅広い役を演じている。うるさい主張をしすぎず、しかしきっちり作品に爪痕を残しており、安藤がいるだけで作品が豊かになる。阿佐ヶ谷姉妹がモデルではあるが、ゆるりとした天然の姉・木村と、静かそうに見えて個性の強い妹・安藤で、ユニークな姉妹ものが誕生するはず。

■凄まじい支配力で初主演ドラマに立つ、北村有起哉

 映画『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』で組んだ藤井道人監督が企画プロデュースを務める『ムショぼけ』(ABCテレビにて毎週日曜23時55分/テレビ神奈川にて毎週火曜23時)で、連続ドラマ初主演を果たした北村有起哉。これまでにドラマ『トッカン 特別国税徴収官』『アンナチュラル』、朝ドラ『エール』などで見せつけてきた実力は折り紙付きだ。職業モノを演じることに長けている北村。役柄を思い浮かべると、同時に役の職業が浮かんでくるが、妻で女優の高野志穂と夫婦共演し、柔らかな空気を醸しているAmazonプライムのCMでの顔も好評である。

 『ムショぼけ』は3日からスタート済み。北村の支配力が凄まじく、なぜこれまでに連ドラ主演がなかったのかが全くもって不思議だ。本作では、14年間の刑期を終えてシャバ(一般社会)に出所してきた元ヤクザ・陣内を演じている。今年公開された『ヤクザと家族 The Family』から間を置かずのヤクザ役だが、まったく違う人物像を作り上げている。幻影として陣内を苦しめる刑務官を演じる板尾創路や、陣内のオカンに扮する吉本新喜劇の重鎮・末成映薫らとの相性もバッチリ。映画的な画づくりで強烈に映し出される、コメディもサイコもヒューマンドラマも混ざり合ったような、不思議な世界観の中心に北村がしっかり立っている。

■片桐はいりの唯一無二の存在感が羽ばたく島ドラマ

 意外なドラマ初主演といえば、ひと足早い9月からスタートした『東京放置食堂』(テレビ東京にて毎週水曜25時)の片桐はいりも、連続ドラマ初主演。今回取り上げた役者の中で一番年が上となる58歳の片桐だが、一度見たら忘れられない存在感と、他にない空気感で、実年齢はどうでもいいと思わせる唯一無二の個性派だ。

 太平洋に浮かぶ伊豆大島を舞台に繰り広げられる人間模様を描く本作で、片桐は、これまで多くの人を裁いてきた元裁判官の日出子を演じている。片桐と大自然というと、フィンランドが舞台の映画『かもめ食堂』が浮かぶが、黒い砂浜が印象的な大島は、まったく違う空気を放つ。

 東京本土からやってきた日出子を受け入れる、食堂「風待屋」を営む、工藤綾乃演じる渚とのバディぶりも心地良い。最初は、ぶっきらぼうな渚に、片桐がこちらの性格を演じても合うのではないかとも思ったが、正義感にあふれ、つい人の人生に口を出してしまう日出子は、片桐の語り口調だからこそ響くものがあると納得。映画的な質感と、島のロケ撮影を生かした大胆な引きのショットが印象的で、共に170センチ越えの片桐と工藤のバディがよく映える。1話完結ものだが、横軸となる日出子のストーリーがどう展開していくのか、今後が気になる。ちなみに『東京放置食堂』と『ムショぼけ』は、同じアベラヒデノブが監督を務めている。独特の画づくりにハマる人もいるだろう。

 芸達者な役者たちが導く世界へどっぷり身を任せられる、秋の夜長になりそうだ。(文・望月ふみ)

※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正しお詫び申し上げます。

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