【東京盃回顧】鬼門の大井1200mで完勝サクセスエナジー/斎藤修

 ここで来たか、サクセスエナジー! というのがまず最初の印象。ただ、スタートして二の脚のダッシュから、3コーナーあたりの行きっぷりを見て、これは勝たれたという感じだった。

 サクセスエナジーはこれまでの重賞5勝がすべて地方のコーナー4つの1400m。大井1200mでは東京盃とJBCスプリントで7、3、10着。さらに今年になっての成績がイマイチというネガティヴな要素が揃っては、中央5頭の中で最低人気の単勝21.0倍という評価もしかたなかった。

 地方のダートグレードでは58kgや59kgを背負わされることが多いが、今回はJpnIIゆえの別定57kg。そして近2走もはっきりとした敗因があった。サマーチャンピオンは1コーナーをまわりきれず外に大きくふくれてしまうロスがあった。前走オーバルスプリントはスタートで後手を踏み、砂をかぶってまったくレースにならなかった。昨年は休み明けのオーバルスプリントを勝ってJBCスプリントというローテーションだったが、今回はオーバルスプリントの敗戦から中1週。「(オーバルスプリントは)あまり良いレースができませんでしたが、そのぶん馬も力を温存できたと思います」(松山弘平騎手)とのこと。最大の勝因は、外目の枠で砂をかぶらず好位を追走できたこと。今回はさまざまに好条件を生かしての勝利となった。

 それにしても今の大井の馬場で、稍重とはいえ、コースレコードにコンマ2秒足りないだけの1分10秒3という勝ちタイムは速い。サクセスエナジーは、昨年5月には京都1200mの天王山Sで、やはり外枠から2番手につけて直線抜け出すという強い勝ち方を見せており、そのときの勝ちタイムが良馬場で1分10秒2。7歳になっても変わらぬレースができたことは、陣営にとっても収穫だっただろう。金沢のJBCスプリントは得意のコーナー4つの1400m戦だが、引き続き枠順とスタートがカギとなりそうだ。

 残念だったのは、1番人気のリュウノユキナ。4コーナーでは手応え十分のまま先行2頭の直後につけていたが、直線を向いて前2頭の行き脚が鈍ったところで、ちょうど外からサクセスエナジーが並びかけていたので、前が壁になってしまった。一旦はサクセスエナジーの外に持ち出そうとしたようだが、サクセスエナジーが抜け出したところでその内に切り替えた。大井の4コーナー内は、特に馬群が密集する短距離戦では常にそのリスクがあり、それでいて内から伸びを見せての3/4馬身差は悔しかったことだろう。とはいえ、これで中央のオープン特別も含め、ダート1200mで8戦連続連対。地方のコーナー4つのコースは、2歳時に門別で1700mを一度経験(4着)したことがあるだけ。このあとJBCスプリントを使うのかどうか、気になるところ。

 レッドルゼルは中団よりうしろを追走し、4コーナー8番手から追い込んだが、2着リュウノユキナにクビ差及ばず3着。レースの上がり3Fが36秒2で、この馬自身はメンバー中最速の35秒5。それで届かないのではしかたない。コパノキッキングは、4コーナー手前までリュウノユキナと併走するような位置を進んだが、そこからの伸びが案外だった。

 そして地方最先着の5着が、3歳のワールドリング。南関東クラシック路線から短距離に路線変更し、優駿スプリントから古馬初挑戦のアフター5スター賞を連勝して期待された。ただその2戦での勝ちタイムが1分12秒台前半だったので、今回はいかにもタイムが速すぎた。それでもこの馬自身も1分10秒9というタイムで走っており、一線級の厳しいペースに対応できたのは収穫になった。

 サブノジュニアはスタートこそ互角だったがダッシュがつかず、後方2番手から。前半の行きっぷりがよくなかった。それでもレースの上がりより速い35秒9で前との差は詰め、勝ち馬とはコンマ8秒差で6着。昨年JBCスプリントを勝ったときのタイムが1分10秒7で、そのときより斤量が1kg重い58kgだったにしても、やや物足りない内容だった。

 勝ったサクセスエナジーは7番人気だったが、2着以下はほぼ人気順の決着。レコードに近い勝ちタイムも考えると、ほとんどどの馬も能力を出し切っての結果だったのではないか。

2021/10/7 18:00

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