巨人、楽天は大ナタ大量解雇が避けられず、補強ポイントが埋まれば日ハムの来季は若手が躍動するか

―[数字で見るプロ野球]―

 4回に分けてお送りした日本一早いストーブリーグ予想の最終回は巨人・日本ハム・楽天を取り上げる。ここ数年、編成の方針は変わらぬ巨人、再来年の本拠地移転を計算していそうな日本ハム、今年が必勝体制だったことが数字にも出た楽天と、3球団ともオフには全く違う動きになりそうだ。

 8月31日をもって2021年プロ野球の支配下登録・移籍期限が終了し、来年に向けての戦力外やドラフト戦略が見え始める今、どこよりも早く編成数の状況を解説する。

◆途中加入を毎年準備する巨人だが育成環境は整わず

 巨人は近年一貫した編成スタイルをとっている。育成契約を多く抱えることはもちろんのこと、開幕時の支配下選手数を65人以下とし、シーズン終了時には70人枠近くまで埋めるという「シーズン状況や育成状況に応じて補強・昇格を『前提』としている」方針だ。

 今年もすでに5選手への戦力外通告が報道され、大塚球団副代表編成部長からは支配下選手10人以上を戦力外通告か育成での再契約とする方針を示しているが、例年どおりである。

 近年ずっとこの方針のため、戦力外通告を受ける人数はどうしても多くなる。だが、若い選手であれば高確率で育成契約が打診される。昨年は4人の選手が育成契約となったところ、今年は鍬原拓也投手、直江大輔投手が1年で支配下に復帰している。

 開幕時65人だった支配下選手数も移籍・昇格期限を終えた現在は70人と枠を埋めきっていた。育成からの昇格は+5人、トレードや補強での増減は0で、しっかりと育成から支配下選手を育てていることになる。支配下選手の推移だけ見れば入れ替えが活発で、激しい競争の球団に見えなくもない。

◆育成制度を使った戦力外の先延ばし

 だが問題は、似たような環境に思われるソフトバンクより、育成育ちの選手にインパクトがないことだ。また、ここ数年は「支配下の戦力外⇒半分育成契約⇒半分昇格⇒戦力外」という流れが続いていて、つまりは育成制度を利用した戦力外の先延ばしに近い状況といえなくもない。

 これによって巨人の3軍は大きくなる一方だ。昨年の育成ドラフトで12人の指名をしたこともあり、どうも効率的な運用はできておらず、戦力外やドラフト云々よりも、せっかくの充実した競争環境が活かせていない点の改善こそ、8連敗している日本シリーズへの打開策に見える。

 2軍公式戦が終わったことで阿部慎之助2軍監督が1軍作戦コーチに異動となったが、気になるのはそれよりも二岡智宏3軍監督が2軍監督代行になったり、石井琢朗1軍野手総合コーチが3軍になったりする「育成環境の落ち着かなさ」のほうが心配である。もちろん、各チームの情報交換などメリットはあるだろうが、育成方針は一貫できているのだろうか……

◆圧倒的若さの日本ハムは順位ほど悪くない

 今シーズンはずっと下位に沈んだ日本ハム。中田翔選手の問題もあり、明るい話題が少ないように見えるところだが、10月4日終了時点でチーム防御率は3.45、ソフトバンクと同様、12球団最少タイの支配下投手数32人であることを考えると、そこまで悲観する状況でもない。斎藤佑樹投手の引退もあり、投手の数はまだ増やせる状況なので今オフにどう「仕上げるか」とまで言えるかもしれない。

 問題は打線だ。チーム打率.229、本塁打65はともに12球団最下位。セ・リーグの中日と並び課題が得点能力であることは明らかである。だが、野手最高齢が39歳のコーチ兼任・鶴岡慎也捕手であることを除くと次はトレードで西武から加入した32歳の木村文紀選手となるくらい、野手の年齢は若い。

 最高齢だけではなく、24歳以下の選手が過半数という点を考えると、多くのチームでは「成長段階」の年齢である選手が多く、「若すぎる」と捉えるか「伸びしろ」と捉えるかはファンにおまかせしよう。

◆中田放出は正解だった!?

 8月20日に中田翔選手を放出してからチームの成績は16勝14敗7分(10月4日終了時点)とまずまず。課題がチームの空気だったのならば、問題発覚後の即放出は正解だったといえなくもない。

 新球場は2023年からで、札幌ドームでのシーズンは残り1年あまり。目指すところが「そこ」であるならば、面白いと個人的には感じている。

◆実質まったく動きのなかった楽天

 石井GMが監督になり、投手陣もエース級を取り揃えて望んだ楽天であったが、今の所優勝争いの一角も3位。優勝争いには喰らいついているので今の時点で良し悪しを語るのはおかしな話ではあるが、1点だけ気になるのは優勝争いをしているチームのシーズン中補強が炭谷銀仁朗選手ただ1人だったことである。

 そもそも楽天は開幕時に阪神・広島と並び支配下選手数69人で開幕した。育成選手を二桁の10人持つ楽天において、この支配下選手数で開幕するということは、変則トレードでも考えない限り補強・昇格は1枠のみで自由度の低い状態での開幕となっていたのだが、5月13日にアダム・コンリー投手がコロナ禍で来日を断念し契約解除。枠は68人と、やろうと思えば多少の補強策がとれたはずだった。

◆支配下枠が埋まっているため大量解雇も

 だが、蓋を開けてみれば炭谷選手を金銭トレードで獲得したのみ。新外国人も、育成からの昇格も1人もなかった。通常、育成選手を多く抱える球団は開幕時に多少支配下枠を空けており、昇格争いで競争を促すものである。2桁の育成選手数を抱えていた巨人・ソフトバンク・オリックスも開幕時、支配下枠は最低2は空いていた。

 つまり、今年は必勝体制だったのだろう。開幕前の戦力で優勝するつもりで戦ったので、補強は緊急の1枠しか考えていなかったと考えるのが自然だ。

 だが、結果がどうあれ支配下枠がほぼ埋まっている以上、オフの戦力外通告はシビアになる公算が大だ。投手36人、野手33人でバランスは普通。特にどのポジションが飽和しているというわけでもない。

 シーズンに動きがなかった分、オフは激しくなりそうだ。

文/佐藤永記

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【佐藤永記】

公営競技ライター・Youtuber。シグナルRightの名前で2010年、ニコ生で全ての公営競技を解説できる生主として話題に。現在はYoutube「公営競技大学」を運営。子育てやSE業界の話題なども扱う。Twitter:@signalright

2021/10/6 8:53

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