実母が自殺、借金、離婚——修羅場の達人・末井昭に聞く、コロナ禍の過ごし方

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 幼少期、実母がダイナマイトを使って自殺。高校卒業後に工場・キャバレー・ピンクサロンなど職業を転々。その後、雑誌編集者となり雑誌『写真時代』を創刊し大ヒットを飛ばし、一躍スター編集者となったが、先物取引やギャンブルでの数億円の借金を背負ったり、複数の愛人と交際したり、離婚・再婚を経験するなど、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた作家・編集者の末井昭さん。

 これらのエピソードは著書『自殺』『素敵なダイナマイトスキャンダル』などに詳しいが、これだけの修羅場を潜り抜けてきた末井さんはこの未曾有の事態となったコロナ禍をどう考え、どう過ごしているのだろうか。今回は、コロナ禍以降で際立つ「自分ファースト」時代に、気持ち良く過ごす方法を語ってもらった。(記事は前後編の後編)

◆際立ってくるであろう「自分ファースト」の恐ろしさ

——前編の後半に出た「コロナ禍で『自分ファースト』が際立つ」というのはどういう意味でしょうか。

末井:コロナ禍で多くの人は自分の身を守ることを第一優先に考えたと思います。僕の場合はそれに加えて「死」も意識しました。

 そういうとき、他者のことは考えないですよね。自分のことだけが最優先となって「自分ファースト」になるということです。まして、経済を見てもただでさえ右肩下がりのところにコロナ禍になっちゃったわけで、みんなどんどん貧乏になっていく。「お金がない」状況でもありますから、さらに他者のことを考えず、結局自分のことばかり考えるようになると思います。

――皆、等しく貧乏になったら良くなりませんか?

末井:良くはなりませんよ。例えば、渋谷にホームレスの人がいたとして、お金に余裕があったら「千円くらい寄付してあげよう」という気持ちを持つ優しい人もいると思うけど、そういう人でも財布の中に500円しかなかったら、ホームレスを見なかったことにして、通り過ぎるしかないわけですから。それを拡大解釈して国としてみても、すでにそういう「経済的に余裕がない」状態になっているわけだから、社会が良くなるはずがないと思うんです。

 コロナ禍によって、助け合う流れではなくなって、犯罪が増えたりして社会はどんどん悪くなると思います。これは注意したほうがよいと思います。

「性悪説」と言って良いのかどうかはわからないけど、人間はもともと「自分自身が一番大切」というエゴを根本的に持っていると思うんです。もともとそういった「自分ファースト」が基本にあるわけだけど、だからこそ、聖書で言う「隣人を愛せよ」のように、他者のことを自分のこととして考えることが大事だと思うんです。

 具体的に言えば家族とか恋人とか、本当に仲の良い友達を大切にする……これからの時代に、本当に気持ち良く過ごすのだとしたら、こういうことしかないと思います。また、僕自身のことで言うと「SNSとかもやるなら、範囲を制限したほうがいい」と思っています。

◆これからのSNSは範囲を制限すべき!?

――どういうことでしょうか。

末井:僕もツイッターをやっていて「本を出す」「ライブをする」なんていうときに告知できるし、僕のツイッターを見て原稿依頼してくれる人もいるから、完全にヤメる気はないんだけど、あんまりフォロワーが増え過ぎてもなぁ……と思っているんです。

 今、僕のアカウント(@sueiakira)にはありがたいことに1万2千人くらいフォロワーがいるんです。でも、最近はこれ以上フォロワーを増やしたくないなって。

 どうしてかというと、社会や政治に対して批判的なことを書くと、アンチみたいな人が来るからです。自分にとって家族とか友達とかに反論されたり、指摘を受けたりするのはもちろんいいんだけど、匿名の人にネット上で反論されるというのはやっぱり気持ち悪いし、落ち込みますよ。まして今はコロナ禍でみんなイライラしているわけで、少しでも自分に正義があると思えば、徹底して相手を叩くでしょ。だから、フォロワーは制限したほうがいいと思っているんです。

 だから、最近はせいぜい毎日「戦争反対」というのと、「家の庭にのら猫が来た」みたいなどうでもいいことをツイートしています。逆に言うと、フォロワーを増やすのは簡単なんですよ。みんなが驚くようなことを言ったり、過激なことを言ったり、あえて炎上させるようなことを言えばいいわけですからね。でも、そんなことをしてどうするんだという思いもあります。

◆「コロナ禍が何十年も続くかも」と考えることも?

――気になるアフターコロナはいつやってくると思いますか?

末井:それはわからないです。ただ、みんな「アフター」をやたらと言うけど、もはや「アフター」という考え方自体も幻想のような感じもするんですよ。

 新型コロナウイルスの対策に、諸外国よりも日本が遅れを取ったのは、インフルエンザとかと同じで、ピークを過ぎれば収束すると考えていたからでしょう。だけど、第三波、第四波、第五波と、どんどん感染拡大の波が来て今は変異株も増えてきてる。こんなこと日本は想定していなかったわけですよ。

 そういう経緯があったからか、東京オリンピックも決行して、結果的に感染者が増えて自宅療養だなんてメチャクチャなことになっていますよね。

 こういう国で暮らしているわけですから、「アフターコロナなんて本当にあるのかな」と僕は思ったりもします。医者とか専門家の科学的な見方とは全く違うけど、僕個人的には「この先、何十年も続くかもしれない」と考えることもあります。

◆家族や恋人、友人との関係を大切にするしかない

 ただ、仮にそうだとしても、この状況をどうやって過ごすかを考えた場合、やはり「隣人を愛せよ」……家族や恋人、少なくていいから本当の友達との関係を大切にするしかないと思っています。

 あとは……新型コロナウイルスに慣れるということも大切でしょうね。感染防止対策もそうだし、例えばリモートワークなんかにしても、「慣れる」しかないでしょうね。「リモートワークが苦痛だ」という声もあるみたいだけど、でも職種によっては「与えられた仕事だけやれば、その後は何をやってもいい」なんて働き方も増え始めてるみたいですから。

 こういったことをうまく利用して自分と大切な人との時間とか、「映画を観る」「音楽を聴く」「本を読む」とか自分の時間を増やすようにしたら良いと思います。

 これまでの日本のやり方、組織のやり方が古すぎたり、全然良くないこともまたコロナ禍で露呈したわけですから、これから先は状況を逆手にとった人との接し方、時間の使い方をするのが良いでしょうね。

――末井さんご自身も奥様(神蔵美子/写真家)と、「隣人を愛せよ」のように暮らしていますか?

末井:喧嘩することはチラホラありますよ(笑)。でも、仮にキレてもすぐ冷めますから、いつの間にか仲直りしています。そういう人がいることで救われていると思っています。

 仮に仲の悪い夫婦がコロナ禍で外にも出られず、家の中にずっと一緒にいるのだとしたら、それは地獄ですよ。なので、コロナ禍で一番大事なのはやっぱり「大切な人と仲良くすること」だと思います。

<取材・文/松田義人(deco)>

【松田義人(deco)】
音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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