キングオブコント2021、1stステージが大盛り上がりだった分決勝が尻すぼみ? 全13ネタ一気レビュー!

拡大画像を見る

 10月2日に開催されたキングオブコント2021。過去最大のエントリー総数3015組の中から、審査員5人体制以降、歴代最高得点という名誉と共に、空気階段の優勝で幕を閉じた。

 8時間にわたってさまざまなお笑い番組が放送されたTBS“お笑いの日”の中で開催されたキングオブコント。今までの大会との違いや傾向を、元芸人目線で分析していこう。

ルールの変更点は、どう影響したか?

 開催前からニュースになっていた点は大きく2つ。

 一点目は大会14年目にして行われたルール改定。プロの芸人による即席ユニットの参加が許可されたのだ。

 以前のコラムでもチョコンヌについて触れたが、人気や実力のある芸人がユニットを組んだら若手のチャンスが奪われるのではないか、と物議をかもした。

 が、結局ユニット勢は一組も決勝へ進出することは出来なかった。さすが日本一のコント芸人を決める大会。人気があれば決勝に行けるというわけではない。一朝一夕ではどうにもならないという事が証明された、と僕は思う。個人的にはこのルールが来年以降どのように変化し、どのような効果をもたらすのか見ものである。

 二点目は、松本さん以外の審査員の一新。しかも新審査員は放送当日に、さまざまな番組で一人ずつ発表されると。

 ネットやSNSではさまざまな予想が飛び交い、中でも多かったのは、前審査員のさまぁ~ずさんやバナナマンさんより芸歴の浅い人間、もしくはキングオブコント歴代優勝者という声。僕としてはM-1同様、長年コント師として生き、コントへ貢献してきた大御所の選出を期待していた。大御所たちが今のコントを見て何というか、どう見るのかを知りたいという気持ちがあったが、ネットの予想通り、かまいたち山内、バイきんぐ小峠、ロバート秋山、そして東京03飯塚と歴代の優勝者たちだった。

 飯塚さんは僕が芸人をやっていた頃、よくライブでご一緒した身近な存在だ。壁に向かってネタ合わせしている姿も、暗い廊下でオーディションを待っている姿も見て来たので、審査員のトリで登場する姿は良い意味で違和感があった。ネタをやる側ではなく、人を審査するほうの年代になったのかと。

 審査員とともに参加者も若返える必要がある。

 なぜなら審査する側とされる側には、多少でも芸歴の差がある方が優勝の価値は大きい。他の番組で両者が同じひな壇に座っていたり、いくら優勝経験があっても先輩のネタに後輩が点数をつけてコメントを述べる姿は視聴者にとっても違和感になるだろう。そう考えると参加者で一番芸歴が長いジェラードンでも13年である。多少遅咲きかもしれないが、審査員とのバランスは見事に取れている。意図的かどうかはわからないが。

 さて大会の大枠の話はこれくらいにして、決勝進出者を一組ずつ分析していこう。

※次ページからはネタバレが含まれます(以下、敬称略)。

 あらためて本稿は、“個人的見解”なのでご理解を。さらにはネタバレの可能性もある点をご了承いただきたい。

 まずはトップバッターの『蛙亭』。

 どの賞レースでも共通して言えること、”トップバッターは不利”だ。これは僕も同意するし、痛いほどわかる。それは会場がネタに対して「笑う」という空気になっておらず、最悪の場合お客さんが緊張してしまい、笑うのが難しい状態になっていることもある。

 トップバッターがお客さんを笑わせ、「笑う」という空気にする為に、2番手以降が有利とされているが、今大会は審査員までもが初審査で緊張しているという不測の事態。

 初審査ということで点数が甘くなって意外と高得点をつけてしまうのか、逆にトップバッターはある程度厳しめの点数をつけるという不文律に従い、本当につけたい点数よりマイナスにしてしまうパターンか……不利なのか有利なのか見当もつかない。そんな中でネタが始まった。

 蛙亭、最近バラエティ番組で活躍しているのをよく見るが、実はネタを見るのは初めてだった。

 設定は研究室。そこで研究をしている女性研究員。ハプニングがあり実験体が実験室から出てしまうというもの。実験体は体中何かしらの液体でベタベタしていて、ステージに出てきてすぐに口から緑色の液体を吐くというつかみ。客席からは悲鳴も聞こえたが、審査員は笑っていた。このようなボケは一般人が審査する大会やライブでは、生理的に受け付けられない可能性も高い。しかし審査員が芸人の場合、斬新で衝撃的なつかみは大いにプラスだ。

 ストーリー自体は実験体が超生命体で急速に成長していき、捕まえに来た組織と女性を守りながら戦うというわかりやすいものだったので、とても受け入れやすい。ハリウッド映画のような壮大な設定、こうなると命運をわけるのは、演技力だ。

 映画を彷彿とさせる演技力があって初めてボケが笑えてくるのだが、正直蛙亭の2人には演技力が足りなかったように思えた。

 特に研究員役のイワクラが圧倒的に足りない。実験体の中野がどちらかというと男前なセリフでテンポが一定になってしまうので、本来だったらイワクラが感情的なセリフの言い回しを使い、会話のテンポを急速に上げたりする必要がある。さらにはお客さんに気づかれないようにストーリーを進めたり、お客さんの感情を統一させたりと、実は難しい役どころだったのだ。

 残念ながら演技力が足りず、それが出来ていたとは思えなかった。余談だが実験体を介抱したいがベタベタで触れないというボケは、イワクラの演技力がもう少しあれば笑いは明らかに増えていた。

 もう一点惜しいと思ったのは、超人的な力を発揮して研究員を守るボケの部分で、音響と照明を使い過ぎている点だ。舞台技術はサブであってメインではない。それで笑いを起こすより、できれば会話や関係性で盛り上げた方が劇的でオチに特別感がでたのでは無いだろうか。

 キャラクターの愛らしさと見せ方は抜群で、中盤にはほとんどの視聴者が実験体役の中野を好きになっていたと思う。緑の液体を吐いて体がベタベタで汚いのに、前向きな性格と言動で見ている者の心をつかむのは才能だ。

 そこを伸ばして来年につなげていければ、さらに活躍するのは間違いない。

 2番手は、芸歴13年の最年長『ジェラードン』だ。

 設定はひとり教室に残っている転校生のもとに、長髪のキザな生徒がやってきて、さらには角刈りの女子高生がきて、転校生の周りでいちゃいちゃするというもの。

 お笑いのシステムとしてはこれ以上ないくらいベタなものだったが、それぞれの演技力、キャラクターによりかなり面白く仕上がっていた。

 良かった点の一つ目はツッコミの転校生が、2人を客観視してつっこんでいたところ。なぜそのほうが良いかというと、ボケの数を多く入れられるのだ。

 3人一緒に話しをしてボケとツッコミをしてしまうと、どうしてもツッコミと会話をするタイミングが生じ、ボケがストップしてしまう。リズムにすると1ボケ2ツッコミ3ボケとなる。だがボケが2人でボケ続け、客観的につっこめばそこまでとはリズムが変わる。どう変わるかというと1ボケ1.5ツッコミ2ボケとなるのだ。これによりボケの数は遥かに多くなる。ボケ数はこのような賞レースではかなり重要だ。

 もうひとつ良かった点はボケ2人のキャラクターだ。

 特にキザな学生を演じていたかみちぃはとにかく面白かった。さらに角刈り女子高生のアタック西本がジャージで出てきた時の破壊力は、凄まじいものだった。

 ただ残念だったのは、女子高生のしゃべり方だ。可愛くて少しポンコツなしゃべり方を意識したのか、ずっと一定で起伏のない単調なセリフになってしまいイマイチ頭に入ってこない。さらに少し時代に媚びているようなセリフ回しになっていて、そこにジェラードンならではの、オリジナリティ感はないように思えた。

 これだけ強烈な大ボケ2人がいるのだから、どこかで見たようなネタではなく、今まで誰もやったことのないボケを見つけてしまえばジェラードンが優勝する日はそう遠くないだろう。

 3番手は結成11年目の『男性ブランコ』、ファイナルステージ進出となったコンビだ。

 冴えない見た目と出番前に流れるVTRに“最高純度のコント”という謳い文句があったので、なんとなく期待が高まった。まずはファーストステージのネタから分析していこう。

 独りでたたずむ男性にピンスポットがあたりネタがスタート。海岸で拾ったボトルメールで文通を始め、そして今から初めて会うというプロローグ。どういう展開になるか予想も出来ないので、さらに期待が高まる。

 そして登場した白いワンピースを着たキレイめを意識した女性。話してみるとかすれた声とベタベタの大阪弁。つかみは相当面白い。

 大阪の一般の方が、ひとりでボケてひとりでつっこむ姿を皮肉ったような笑い。これを東京の芸人がやっていたら大阪の方はあまり良い気はしないかもしれないが、この2人は大阪からの上京組なのでセーフ。

 しかも普通だったら嫌になりそうなこの女性に対し、途中で最初と同じように男性にピンスポットが当たり「好きだ」と。この女性を肯定することにより、大阪の人であっても嫌な気持ちにさせないという計算なのだろうか。

少し同じようなやり取りが続き、突然どんでん返し、実はその女性の見た目や大阪弁のしゃべり方は男性の妄想だった。実際にこういう女性が来るとうれしいなと言っている男性の前に現れる女性。すべてが妄想通りで男性が狂喜乱舞してネタは終了する。

 正直このコントを見た時に、羨ましいくらい面白いと思った。やっているボケの内容は正直ベタ! だが実は妄想で、本当に同じような人が来て喜ぶというシステムは新鮮。ベタと新鮮の両方が入ったこのネタは悔しいが面白い。

 予想通り審査員の点数は高かったが、松本だけ低かった。それが唯一気になった。

 ファイナルステージのネタはたくさんの荷物を持った男とサラリーマンのやり取り。荷物を何度も落としてしまいサラリーマンが拾う。お礼を言うと落とすというベタ中のベタなネタ。会話を始めるとその男性が変わり者だということがわかる。

 自分のことを「レジ袋をケチった男の末路です」や、何度も拾ってくれる男性に対し「ランチタイムの忙しなさ」や「すみません。図らずもスクワットをさせてしまって」などフレーズは相当面白い。

 ただ前半、動きのボケが落とすというワンパターンだったのが残念。お客さんは落とすことに慣れてしまい、途中から落とすというボケは意味をなさないからだ。途中で展開したのは実は二人は幼馴染だったというところだが、それも特に広がりを見せるわけではなかった。

 ファイナルステージはボケとツッコミがはっきり分かれたネタになっていたが、見ている側は男性ブランコにそれを求めていなかった。ベタなネタではなく、ファーストステージのようにボケとツッコミに分かれていないベタと新鮮さを兼ね備えたネタを期待したのだ。

 もしまた決勝に上がることがあるならば、ベタなネタで安定を求めるのではなく、恐れずにオリジナリティあふれるネタで勝負してほしいと思う。

 4番手は三度目の決勝戦となる『うるとらブギーズ』。

 毎年見ているのに正直、外見だけではどんなネタをやっていたか印象に残っていない。つまり純粋にネタの面白さだけで決勝に勝ち進んでいるということだ。

 ネタはデパートらしきところの迷子センターに、息子が迷子になった父親が来るという設定。さすが決勝常連と思ったところは、息子がいなくなってパニックになっている父親を出すことにより、いきなりテンションマックスでスタートできるのだ。

 テンションマックスも大声もお客さんをネタに引き込む大事な要素だ。

 お客さんは多分10秒もかからずネタの世界観に引き込まれたはずだ。そしてパニックになっている父親が息子の特徴を言うが、全部おかしいというベタな笑い。これも素晴らしい。

 パニックになっている父親は人の話を聞かない。迷子センターの従業員の制止も聞かずに次々に情報を与えてくる。それによってお客さんは頭の中で子どもの容姿を想像しながら、テンションは落ち着くことなく、ずっと笑っている状態でいられるのだ。

 さらに凄いのは子どもの情報だけでは途中からトーンダウンしてしまうところが、このネタは二部構成になっていて、後半は従業員が館内アナウンスを流すときに、その迷子の特徴が面白すぎて笑ってしまうというネタになっている。

 とてもわかりやすく、余計なものがないすっきりとしたネタになっている。

 少し残念な点は、後半の従業員が笑ってしまう場面の最初が、笑いを我慢しているように見えなかったところ。もともとの顔が地味という事もあり、何を表現したいのかわからないまま声が震え、呼び出しを中断し笑っちゃうという感じになったが、客観視できていれば、声が震え呼び出しを中断し、少し静かにして、父親がどうしました? と言った後に爆笑。そして今まで丁寧に話していたのに特徴おかしすぎるだろとツッコミ入りで笑っていたほうが笑いが多かった気がする。

 あくまでもイメージなのでうまくいくかどうかはわからないが。

 個人的にはとても好きだが、思ったより点数が伸びなかった。その理由としては、いろんな人がやっている設定なのだが、ベタまでいっていないものだったからだろう。

 ベタな設定までいってしまうと誰がやってもいいのだが、ベタまでいっていないとマイナスになることが多い。どうやったらベタになるのかはわからないが“準ベタ”は取り扱いが難しい。

 それとオチがあまり良くなかった。できれば笑いで終わるネタであればもう少し点数が伸びたかもしれない。

 5番手は前回5位で終わった『ニッポンの社長』だ。

 ネタも見た目もインパクトがあり、良くも悪くも覚えている。前回は尖った若手らしく、少し生意気な印象がある。ただそんなものはネタには関係ない。面白ければ良いのがキングオブコント。

 きちんと平等に見ていこう。

 設定はバッティングセンター。高校生がボールを打っていると、おじさんが近づいてきてもっともらしいアドバイスを始める。外からアドバイスをしていたが途中から中に入ってきてしまう。するとおじさんがホームベース上にいるため、高校生はバッティングができず、ボールは全ておじさんに当たるというもの。

 立ってアドバイスしてもボールが来るタイミングでしゃがんだり、頭に当たって痛そうな音がしたり、違うブースに入り、ボールにぶつかるなど、この動作一発勝負ネタだった。

 ボールが当たる音やタイミング、おじさんの全く痛がらない表情、一度外に出ても中に戻ってきて全部のボールに当たっていく。見ている側としては、最初はその動作を面白く感じても少しずつ慣れてしまうものだ。その慣れを“覆す何か”もなく終了。僕が思うに賞レースでやるネタにはふさわしくない。なぜならニッポンの社長でなくても出来る展開だからだ。単独ライブでやるようなネタだと感じた。

 審査員の得点にバラつきがあった。上は山内や秋山の95点、下は松本の89点。

 好みや評価のポイントで得点に差が出るのも、キングオブコントの面白さのひとつだろう。審査員の傾向を分析するのも面白い。

 6番手はこちらも初登場の『そいつどいつ』。

 紹介VTRを見た第一印象は発声が舞台役者さんみたいでお笑いっぽくないなと思った。

 ネタは飲んで帰ってきた旦那とそれを待っていた妻。妻は寝る前に保湿としてパックをしている。パックのせいなのか妻の動きの緩急や手のしぐさ、登場の仕方すべてが怖いというネタ。

 緊張からなのか演技の仕方なのか、会話のテンポ自体は比較的遅い。

 そのせいもあって、妻を演じる市川刺身のセリフが棒読みに聞こえることがあり、イマイチネタの世界観に入り込みづらいし、お笑いのネタな気がしない。間の取り方、セリフの言い回し、客を意識しすぎる立ち振る舞い、やはりどこか舞台役者のように感じる。なぜだろう。

 ネタ自体はあまり展開がなく、旦那さんが妻の変な動きに怖がるというひとつのパターンで進行していく。

 オチは本当のホラーかと思いきやイタズラというオチなのだが、本当のホラーのように思わせるところが長く、少し怖くも見えるのでどうしても、笑いが減ってしまう。

『うるとらブギーズ』でも書いたが笑いが減るオチは、コンテストではあまり点数が取れない。キャラクターは十分にあるので、舞台上でのお笑いとしての立ち振る舞いを研究すればさらに上を目指せると思う。結成7年目ならまだまだ改良できるはず!

 7番手はすでにバラエティ番組でおなじみ『ニューヨーク』。

 バラエティでも活躍し、冠番組も持っている。賞レースに出る意味は無ないように思えるが、本人たちには無冠を脱したいという強いこだわりがあるのだろうか。

 ネタは結婚式の段取り確認をするディレクターと新郎。本番前日に段取りが全部違うという、“キングオブベタ”なネタ。

 手にバインダーを持っていてそれを見ながら段取りを確認するのだが、たぶん実際にそのバインダーには台本か段取りが書いてあるはず。なのでそのバインダーを読みながらボケやストーリーを進行させるので、ボケの嶋佐の動きが小さくなってしまい笑いにつながりにくい。

 ネタ自体がコントというよりは漫才コントの形なので、ほかのコント師たちと比べてしまうとキャラ、ボケ、システム、クオリティ、全てが低いレベルに見えてしまう。

 さらに後半になるにつれハチャメチャな感じにしていくが、ちゃんと理由があったり、自然にハチャメチャになるのではなく、強引にめちゃくちゃにしていくので、正直スマートではない。

 厳しい意見になるかもしれないが、なぜこれで決勝に来れたのだろう。ほかのコント師はなぜ負けたのだろう。ネタの面白さではなくネームバリューで上がって来たのだろうか。そう思ってしまうほどきついネタだった。実力はあるはずなので残念だ。

 8番手は今回のキングオブコント最年少コンビ『ザ・マミィ』。このコンビもファイナルステージへ進出した。名前は何度も聞いているし、酒井はバラエティ番組で何度も見ているが、ネタ自体を分析するのはこれが初めて。楽しみである。まずはファーストステージから分析する。

 設定は、町で意味もなく誰にとでもなく大声で文句を言っているおじさんに対し、道を尋ねる青年の話。

 おじさんは青年を無視し続けるが、あまりにもしつこく道を尋ねてくるのでついに「なんで俺にきく!」とおじさん自身がつっこんでしまうというもの。

 途中で財布を忘れたといい、おじさんにリュックを預けたり、財布を預けたり、おじさんを信用し続けるピュアな青年。

 そして後半になるにつれ、とても暖かい話になっていく。変なおじさんだと思っていたおじさんが預かったリュックを開けず、預けられた財布からお金を盗まない。初めて信じてもらえたおじさんは、心に何かを感じるというまるでヒューマンドラマを見ているかのような、感動すら覚えるストーリー展開。しかも最後はミュージカルになるという笑いに戻るおまけまでついている。

 このネタは笑いと感動のバランスが絶妙。コントに登場する人物が、ザ・マミィ2人のキャラクターに合っていて、違和感ゼロ。

 若手芸人がやりたいことがすべて入っているこの台本とキャラクター選びは今大会ピカイチ。審査員も高得点だった。飯塚だけ点数が少し低かったが、同じ事務所でなければもう少し良い点数になったであろう。結成4年でこのネタが作れるのは末恐ろしい。文句なく面白かった。

 続いてはファイナルステージのネタ分析。

 設定は社長と部下というありがちなもの。おおまかなストーリーも部下が社長の悪事を暴こうとするというベタな流れだ。

 半沢直樹さながら、大げさなセリフ回しで会話劇を広げ、芝居力を見せつける。すると社長の酒井が「今のドラマみたいじゃなかった?」という一言で笑いが起き、コントの空気になる。ドラマのようなセリフを言い合い、テンションが上がっていく2人。ふとしたきっかけでシリアスに戻るが、それもドラマっぽくしただけというやり取りで構成されたネタ。

 このネタのボケは“本当に話しているみたいだけど、ドラマ風でした”のたったひとつ。正直、どんなにセリフが長かろうが、舞台からはけようが先が読めてしまう。

 ファーストステージのネタが複数の要素を詰め込んだネタだっただけに、単純すぎて少し飽きてしまった。

 たぶんボケの酒井は変なおっさんやくず人間以外にもこんなキャラクターができると見せたかったのだと思うが、それはマイナスプロモーションな気がする。器用になんでもこなすのではなく、まずは変なおっさんや、くず人間のようなネタだけで良い。

 それだけで十分優勝できるのだから。

 9番手は『空気階段』こちらもバラエティでは良く見る、鈴木もぐらがいるコンビだ。

 3年連続で決勝進出となる実力派コント師だ。当たり前のようにファイナルステージへ進出し、そして今大会優勝している。ではまずファーストステージから分析していく。

 ネタは裸で椅子に座って縛られている人からスタートする。一瞬、誘拐か何かかな? と思ったがなんてことない、SMクラブで女王様を待つ人だった。

 するとそこにもうひとり縛られてパンストをかぶった人が入ってくる。なんとSMクラブのビルが火事になり、そのパンストの人が助けて回っているという。

 空気階段2人の見た目のキャラクター、ストーリー性、演技力、芸人ならではのテンションの高さ、すべてが笑いになる素晴らしい台本だ。

 パンストの人が実は消防士で、さらにもうひとりは実は警察官だったという裏切りも良い。終始裸で演技をするというあたりが何とも芸人らしい。題材でも笑わせ、言葉選びでも笑わせ、顔でも笑わせる。笑いの引き出しの多さが凄い。

 暗転を入れて場面転換をしていくのだが、それは昔からある手法なので、そこでもうひとつオリジナリティを出せたらさらに良かったかもしれない。エレベーターを使うのか、階段を上るのか、それを生み出せたら、もうすこし新鮮に見えたかもしれない。

 そしてファイナルステージのネタ。

 ネタは雨宿りをするために入ったカフェが、「メガトンパンチマン」という架空のマンガをコンセプトにしたカフェだったというもの。

 このファイナルステージのネタは、ファーストステージとは違い、ボケとツッコミがはっきりしている。「メガトンパンチマン」の世界観にこだわるマスター、そのマスターにつっこんでいく青年。言い方は悪いが普通のコントに見えてしまった。

 たまに「豆にはこだわっております」などの世界観を無視したようなセリフをマスターが言うが、なんとなく小手先の笑いに見えてしまった。

 ファイナルステージの三組の中では笑いが一番多かったかもしれないが、ほかのコンビがファーストステージくらいのネタを持ってきていたら順番は変わったかもしれない。

 最後10番手はM-1、R-1の2冠を達成している『マヂカルラブリー』。

 キングオブコントを制覇すればグランドスラム達成という偉業を成し遂げる。弥が上にもワクワクしてしまう。

 ネタはこっくりさんをやる学生二人。一人はお化けを信じる学生でもう一人は全く信じない学生。かなりベタな設定かと思いきや深夜の4時44分に心霊スポットで合わせ鏡の中でやっているという特殊な状況。

 案の定、強力なこっくりさんが登場し、10円玉に憑りつく。そしてその10円玉に引っ張られる野田。漫才同様、野田が動き、村上がしゃべるというもの。

 コントならではのマヂカルラブリーを期待していたのだが、M-1グランプリのネタとの違いが見いだせないほど似たようなシステムだった。ニューヨーク同様、コントである意味はなかったように思う。

 野田が後半一切しゃべらず、こっくりさんが憑依した動きに村上が突っ込む。そうなると村上のワードセンスが重要になってくるのだが、見ている側の想像を超えるようなフレーズはなかった。

 コントなら、ましてや高校生になりきっていたのなら、もっと違うフレーズが出たのかもしれない。憑依型のコント師ではなく、自分自身で芝居をする漫才師ならではの弊害が出てしまったのかもしれない。

 今大会を振り返って思うのは、審査員を若返らせたことにより、大会参加者との関係性が濃いものとなり、そのために点数が入ったり、入らなかったりがあったのではないかという疑念が湧く場面があった。人となりを知らずとも純粋にネタ自体に点数を入れてほしいと思う。もちろん気のせいかもしれないが。

 それとネタ自体、ファーストステージのほうが盛り上がった。

 笑いに対する慣れもあったのかもしれないが、僕が思う大きな違いはネタのシステムだ。

 ファイナルステージへ進出した3組のネタを見て欲しい。

・男性ブランコはベタな大阪人の女性と狂喜乱舞する男性。
・ザ・マミィは変わったおじさんとそのおじさんに道を聞く変わった青年。
・空気階段はSMクラブに通う2人。

 つまり変な人と変な人が関わり合うネタだ。それがファイナルステージになると3組中2組、男性ブランコと空気階段がボケとツッコミがある安定したネタに変更した。

 さらにもう一組のザ・マミィもネタ自体に、ファーストステージほどの変な人は現れなかった。

 もしかしたら3組ともファイナルステージは安定したネタのほうが良いと判断したのかもしれないが、今の時代、笑いはボケやツッコミがなくても視聴者は笑う。

 それより大切なのは少し変わった人間でも受け入れる世の中になったこと、誰かが誰かを助けたり、偏見なく恋をしたり、人を信じる大切さを教えてもらったり、そういう心が熱くなるストーリーを求めているということだ。

 笑いの間口は広がり、笑うという事だけが笑いではなくなった。テレビは規制がきつくなる一方で、ネタは無限の可能性を秘めている。

 ネタにはいつの時代でも夢がある。芸人ドリームが。

  • 10/5 19:00
  • サイゾー

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます