「先生の大学は偏差値が低い」SNSで監視しあうのは“お互い様”の学校生活

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◆SNS監視は企業や学校でも

 だれもがSNSを利用する時代、就職や転職活動において、企業側が事前に候補者のSNSをチェックするのはよくあること。最近では、匿名で利用している「裏アカウント」を特定する業者の存在が話題になっている。

 ネット上で“バカッター”(Twitterで注目を集めるために法律やモラル違反を自慢する馬鹿)がたびたび問題視されるが、過去の炎上が人生を左右しかねない。とはいえ、普段の日常生活では吐き出せないような愚痴や本音を書きたくなるのがSNSである。

 そんななかで学校の教師たちは生徒のSNSと、どのように向き合っているのか。じつは、見られているのは“お互い様”で、生徒たちのほうが一枚も二枚も上手と感じることも少なくないとか……。

◆生徒のSNSを指導するのが業務のひとつ

「鍵をかけていれば、まあOK。鍵をかけず公開している生徒のアカウントを見つけた場合には、本人に口頭で注意をして、それでもやめない場合には、親御さんに相談をする。現状、やっているのはそれくらいですね」

 千葉県内の公立中学教諭で、生徒指導担当の谷田修さん(仮名・30代)の休日の日課といえば「生徒のSNS」を探すことだ。

 生徒が実名で、かつ所属中学や部活までをプロフィールに書き記し、鍵がついていない、ネット環境さえあれば誰でも閲覧できる状態でSNSを利用していた場合、生徒が無用なトラブルに巻き込まれないよう「指導」するのも、この数年で「業務」のひとつとなったと話す。

◆強くは言えない葛藤

「私らの若い頃であれば、学校に携帯を持ち込んだ時点で没収でしたが、時代は変わりました。一応、スマホを学校に持ってくることは規則でダメになっていますが、親御さんから『万が一のことがあったらどうする』と言われると、こちらも強く言えないというのが本音ですよ」(谷田さん、以下同)

 小中学生でも、スマホを所有している子どもは増えた。昔であれば「小中学生には必要ない」と一刀両断できたのだろうが、現代ではスマホはたんなる電話ではない。

 連絡や娯楽目的だけではなく、勉強にも活用できる便利なツールとなった。そのため、子どもたちに「使うな」とは言いにくい状況なのだというが、生徒たちも薄々は理解してくれているともいう。

「非公開にして、プロフを隠せ、といった指導について、大半の生徒は聞き入れてくれます。そういった子は基本的にはネットに対するリテラシーも高く、トラブルになることはほとんどない。逆に、名前やプロフからでは全く判断できないアカウントを運用している生徒にかんしては何を考えているのかわからず、心配になることもあります」

◆“バカッター”になって不幸にならないために

 埼玉県内の私立中学教諭・藤川紀子さん(仮名・30代)の勤務先でも、生徒の「SNSチェック」は、教師たちの日課となりつつあるというが、谷田さんとは違い、注意するだけではなく、非行に走るかもしれない生徒の「炙り出し」にも活用されているという。

「いわゆる“バカッター”的な使い方をしていないかチェックするのは当然。そういう傾向がないか、炎上してその子が不幸な目に遭わないよう、ある意味で“泳がせる”こともあります」(藤川さん、以下同)

 そうした生徒の情報はリスト化され、担任や副担任、それに学年主任や生徒が所属する部活の顧問、コーチなどとも共有され、生徒の言動についてチェックしているという。

◆教室では見えない生徒たちのリアル

「コロナの影響で修学旅行が中止になるかも、という時にリストから確認したところ、複数の生徒たちが学校や教師、大人や政治に対する不満をぶちまけていました。

 これはある意味、普段の教室で生徒が私たちに訴えてくるよりもリアルな“生の声”です。不満をぶちまけていた子がいるクラスで、その子の思いに答える形で“修学旅行が中止になった”と説明すると、それ以上の不満が出なくなりました」

 もちろん教師として、一人の人間として、生徒のSNSを逐一チェックしていることに後ろめたさを感じないわけではない。しかしSNSが、使い方によっては生徒指導にも有効活用できる、というのも事実なようだ。

◆生徒たちのほうが上手「先生の大学は偏差値が低い」

 一方、教師がSNSを使いこなせているとしても「ネットネイティブ」世代の若い学生たちは、それより1枚も2枚も上手だと感じることもあるという。

「教師のフェイスブックなどのSNSが生徒により発見され、プロフィールや書き込みを見られていた、ということもありました。ある同僚は、SNSによって出身大学がばれて“先生の大学は偏差値が低い”と笑われたり、SNSを通じて教師の異性関係を知った生徒から“先生の彼氏いくつ?”と生徒に追求される、というような事例もあります」

 そんな経緯もあり、藤川さんが勤める学校では「教員のSNS禁止令」が出されたというが、教師は教師で、職場にバレないような名前でSNSを利用しているというのだから、結局、教師たちが「監視」している生徒たちと同じような境遇に追い込まれているとも話す。

◆「社会的に抹殺されてしまう」危険性

 あらゆる情報が費用をかけることもなく、いつでもどこでも、すぐにわかるようになったことの恩恵は、どれほど大きいかわからない。しかし、こうした小さな人間関係の機微を第三者に知られてしまうというデメリットもある。

 体系的な「SNS利用法」なるものも世の中には溢れているが、やはり相応の「リテラシー」が必須である。それがなければ、明日には炎上などで「社会的に抹殺されてしまう」ような危険性も孕んでいるのだ。

 情報化社会の利便性と背中合わせの「危険性」を、学生だけではなく、私たち大人も改めて検討する必要がある。

<取材・文/伊原忠夫>


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