高性能マスク着用の理由は、「空気感染」が世界の常識。またしても立ち遅れる日本

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◆「咳エチケット」だけでは防御できない

 前回、本サイトにて高性能マスクの重要性をご紹介する記事*が大きな反響を頂きました。
<**ウレタンマスクは「無意味」! 科学者が教える「本当に効果的なマスク」 2021/08/31 牧田寛 日刊SPA!>

 しかしその反響の中に、咳エチケットで十分とか、韓国のマスクの売り込みだなどと言った見当違いのものが散見されましたので、何故高性能マスクが必要なのか踏み込んだ説明が必要と考えました。

 なお、韓国規格のKF94マスクは、その類似品が本邦でも大手電機メーカーなどで製造・販売されはじめています。それ自体はたいへんに好ましいことなのですが、マスクの性能を保証する規格が本邦では漸く整備されはじめましたが貧弱で、日本版KF94類似品の性能を担保する公的なものが存在しません。N95マスクの例で明らかですが、公的規格による裏付けと偽物防止はきわめて重要です。日本政府が韓国政府と規格の共通化に関する協定を結び相互承認すればよいことです。工業製品では、普通に行われていることです。

 韓国でも人気ブランドのKF94マスクの需要増大や工場の火事、チュソク(韓国のお盆)などで供給が不安定となっており、供給の安定化という視点からも日韓で共同する利点は大きいと筆者は考えます。また中国で大量に生産されている詳細不詳の高性能マスクに対して日韓で公的規格の裏付けのあるKF94など高性能マスクによってシェア奪還することも可能です。

◆COVID-19の感染ルートは「空気感染」

 COVID-19は、かつてのSARSやMERSと異なり全世界を巻き込むパンデミックとなり科学、社会、医療の進歩によって相当程度抑えられていますが、1918 Flu Pandemic(スペインかぜ)を上回る激甚なパンデミックとなり得る脅威です。

 COVID-19の感染経路は、従前から主張されている「飛沫感染」に加え、「空気感染」(Airborne Transmission:経空感染という訳もある)であるというのが本邦以外の全世界の常識です。この「空気感染」は政治論争的な用語となってしまい、昨年2月には空気感染の可能性が高いと中国から報告がなされていましたが、「空気感染するのは麻疹や結核、水疱瘡だけである」という典型的な教条主義の跋扈する医学界に拒絶され、空気感染を主張する科学界との論争となっていました。

 合衆国疾病予防管理センター(CDC)は、2020年9月18日にCOVID-19はAirborne Transmission(空気感染、経空感染)するという文書*を公開したものの、下書きであったとして取り下げ、トランプ大統領がCOVID-19に感染し入院するなどホワイトハウスが大混乱していた2020年10月5日に” COVID-19 can sometimes be spread by airborne transmission”と明記した文書を公開しました**。
<*How Coronavirus Spreads 2020/09/18 CDC>
<**How Coronavirus Spreads 2020/10/05 CDC>、CDCによるガイダンス”How Coronavirus Spreads"の変遷はこちらのアーカイブからたどることが出来る。>

 政治性の濃厚な「空気感染」論争は、この時点で「COVID-19は、空気感染をする」と決着が付いたと言えますが、世界保険機関(WHO)が”Airborne Transmission”を事実上認めるのは、Q&Aで”aerosols”を明記した2021/4/30*と大きく遅れました。
<*Coronavirus disease (COVID-19): How is it transmitted?>

 本邦では未だに「空気感染」「経空感染」「エアロゾル感染」といった新知見を認めず、これも厚労省と忖度専門家による国策エセ科学・エセ医療デマゴギーの一つとして本邦の防疫政策を著しく歪めています*。
<*尾身氏「空気感染は起きていない」現時点での専門家の“見立て”2021/05/21 THE PAGE>

 昨年秋に突然現れた「まいくろひまつかんせん」という言葉はマイナーな言葉で、CDCが認めたエアロゾル感染を国策エセ科学・エセ医療デマゴギーとして言い換えるために用いたものですが、事実と大きく異なるものです。マスク会食という狂気の沙汰を正当化する詭弁にも用いられています。煙草の煙の中でマスクパカパカすれば煙を吸い込みます。ウイルスを含むエアロゾルも同様です。

 なお筆者は、空気感染という用語はあまり科学的に妥当性がなく、「経空感染」を主として用いています。この用語は今後で良いので学術的に再定義すべきと筆者は考えます。

 日本を除く世界では、空気感染を前提にCOVID-19感染対策が組み立てられる様になっており、本邦の著しい後進性がここでも目立つようになっています*。
<*最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明 2021/08/18>

◆エアロゾルとは何ぞや?

 経空感染の媒体であるエアロゾルという言葉はスプレー式殺虫剤などで聞いたことがあるかもしれませんが、日常ではあまりなじみがありません。エアロゾル自体は、非常に広い意味を持つ言葉で、日本エアロゾル学会の説明にあるように1nm〜100µmという5桁という広い範囲の粒径分布に渡る空中浮遊粒子を指します*。従って筆者は科学的厳密性から「エアロゾル感染」という用語も不適切であり、今後の用語の検討が必要と考えています。
<*日本エアロゾル学会>

 COVID-19の感染経路としてのエアロゾルは、クラシックな「飛沫」と飛沫液滴が蒸発したあとの「飛沫核」*を指す場合があり、この両者は空気中の挙動が全く異なります。

 この日本感染環境学会の学習資料に明記されている通り、飛沫と飛沫核では落下速度が全く異なります。飛沫は、くしゃみなどで排出された後数メートル飛行して落下し、感染に寄与しなくなります。一方、飛沫核は、煙草や蚊取り線香の煙のように長時間空中を浮遊し、室内の気流やエアコン、特に中央空調によって広く拡散します

 COVID-19では、この飛沫と、飛沫核などの空中浮遊微粒子が双方とも感染に寄与するために社会的距離の維持だけでは感染防御できません換気の励行が行われるようになったのはこの飛沫核などの空中浮遊微粒子が感染に強く寄与することが分かったためです。特にα株やδ株といった懸念される変異株(VOC)は、在来株より遙かに強い感染力を持ち、特にδ株では屋外のゴミ捨て場で挨拶しただけで感染した例が報告される*など、空気感染の脅威はたいへんに高くなっています。
<*秘魯嬤「倒垃圾」Delta傳染鄰居 鄉民轟「居家檢疫亂跑沒人管」縣府說話了 2021/06/27 蘋果日報>

 これらのことは、観測事実として武漢でのエピデミック当時から多数の報告と報道がなされており、論争となっていたことは、ハーバービジネスオンラインにて井田真人氏が昨年4月には発表しています*。
<*新型コロナはエアロゾル感染するか? 確定的な結論はまだないが、予防原則をもとに先見的対策を! 2020/04/25 井田真人 ハーバー・ビジネス・オンライン>

 先述したように、飛沫は数メートルの飛距離で落下し、その後は感染に寄与しません。しかし飛沫核などの空中浮遊微粒子は、煙草の煙のように長時間滞空し、空調ダクトなどから他の部屋にも拡散し、マスクの隙間からも入ってきます。

 この長時間滞空と隙間からも入ってくることが高性能マスクの重要性となります。

 日本感染環境学会の資料にあるように、飛沫が感染媒体となる場合は、十分な性能を持つサージカルマスク(高性能不織布マスク)で阻止できますが、飛沫核などの空中浮遊微粒子が隙間を通過してしまいます。

 その為、その為、N95マスクなどのレスピレーター(呼吸器)として設計された鼻と口を隙間なく覆う高性能マスクが必要となります。これはKF94、KN95、N95などが該当しますが、日常生活、活動においてはKF94マスクで十分です。感染阻止能力は、N95,KN95,KF94で95%以上とされますが、不織布マスクを二重マスクとして着用した場合も90%以上の感染阻止能力があるとされます。

 不織布マスクでも隙間を出来なくすれば十分な防御力を持ちますので、CDCや合衆国政府は不織布マスクの上から布マスクなどでカバーする二重マスクを推奨しています。既に秋も深まってきており季候も良いのでKF94が手元にない場合は、二重マスクで問題ありません。より具体的には前回の記事をお読みください。

◆第5波収束するも「秋の波」=第6波の季節入り

 関東、関西、沖縄、北海道など日本全国で医療崩壊と社会機能の不全を引き起こしたCOVID-19エピデミック、第5波Surgeは、9月末時点で90万人の新規感染者と2600人を越える死亡者を出して収束に向かい減衰中です。

 新規感染者数は、10月中に行われるであろう統計漏れの一括計上他を加えても100万人足らずと予想されます。第5波がこれまでと格が違うことは、第4波までの累計感染者数が80万人なのに対して、第5波だけで90万人を越えていることが如実に示しています。

 第5波では、2020年1月から2021年6月までの18ヶ月間の累計新規感染者数80万人を2021年7月から9月までの3ヶ月間で10万人上回る90万人の新規感染者数を生じ、10月中旬までに統計の修正等も含めて公称95万人程度で収束する見込みです。

 これだけの新規感染者が発生した結果、本邦の医療はひとたまりもなく全国各地で崩壊しました。しかしこれは、2021年4月のインドでの惨状からあらかじめ分かっていたことで、本邦では対応が後手後手に回った結果、8月に入ると東京から日本各地に医療崩壊が広がりました。収束過程が本格化した9月になって酸素ステーションが運用開始されても既に利用者が殆どいないなど相変わらずの手遅れぶりでした。

 一方で、5月以降の急速なワクチン接種の成果で、最も高リスクの医療従事者と高齢者の接種率がきわめて高く、第5波死亡者数は9月末時点で2,600人余りです。COVID-19では、死亡は発症から18日後が平均で、加えて本邦では死亡の集計が20〜30日遅延しているため11月末まで第5波の死亡者数が統計に表れますが、4000〜5000人の死亡に留まる見込みです。結果、第5波での致命率は0.4〜0.5%となり、第3波と第4波で見せた致命率1.7〜1.8%と比べると1/3〜1/4と大幅に低下しています。

 第一世代CVID-19ワクチンは、もともと重症化回避、死亡回避によって医療と社会の機能不全を阻止するために開発されており、感染回避は刺身のツマのようなものですが、接種完了率50%前後であっても十分に威力を発揮したと言えます。これは、菅政権唯一の優れた成果と言って良いです。

 第5波は、ワクチンの死亡回避効果が予想より高かったことと、7/22以降のモビリティ(移動傾向)の減少に伴い予測より2週間早く収束に転じたため死亡数が、高位予測40,000人、中位予測10,000〜15,000人ではなく低位予測の5,000人程度に収まる見込みです。これは、不幸中の幸いでしたが、世界の防疫研究者は、昨年同様の「秋の波」である第6波が10月半ばには現れると予測しており、実際に筆者はその兆候らしきものを本邦統計に観測し現在評価中です。

 呼吸器系感染症は、寒く空気が乾燥し、換気が鈍る冬期に本番が来ることは100年前の1918 Flu Pandemic(スペインかぜ)からの常識で、本邦も昨年の第3波をナメてかかり過去最大である7,500人の死亡と東京における医療崩壊を経験しています。感染力が比較的弱い在来株であった第3波に比して現在は、はしかや風疹並みの感染力を持つδ系などの懸念すべき変異株(VOC)がドミナント(主を占める)ですので、基本的に夏の第5波に比して冬の第6波は3〜5倍の規模になり得るとして備える必要があります。

 風疹並みの強力な感染力を持ち「空気感染」するδ系の変異株をはじめとした現在世界で猛威を振るっているVOCは、相変わらずザル検疫*を素通し状態となっています。また日本中に蔓延した結果、本邦発の強力な変異株が発生する可能性も否定できません。筆者の統計観測では、余程無様なヘマをしない限り10月中は小康状態となりますのでこの間に「秋の波」=第6波に備えてください。またワクチンを接種しておけば、重症化と死亡は相当程度回避できます。そして高性能マスクや二重マスクの着用は、安いコストと僅かな不便でCOVID-19から身を守ります
<*東京五輪ウガンダ選手団から陽性者続出。日本の空港検疫はどうなっているのか? 2021/06/25 牧田寛 日刊SPA!>
<取材・文/牧田寛>

【牧田寛】
まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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  • 10/5 8:50
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

4
  • エッコ

    10/6 10:25

    ずっと布マスク使ってるけど、エアロゾルで感染するんだったらとっくに感染してる気がするけど。今のところ、私の周辺で感染した人居ないって事は、マスク効果あるんじゃないのかね。

  • トリトン

    10/5 13:30

    アホらしいこう騒いでマスク産業儲けさせようとしているね。安いマスクで良いのに、これ政府公認とか団体やその関連からリベートもらうのだよな。アメリカも似たことしてるからね。

  • いち(

    10/5 12:58

    目から感染せんのか?満員電車どないすんや?感染したらどないなるんや?日本はずーっとさざ波やないか、大津波になる兆候すらないではないか。

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