美容整形をSNSで逐一報告する29歳女。予想以上にバズり、調子に乗った結果…

彼氏やパートナーがいる人が幸せって、誰が決めたの?

出会いの機会が激減したと嘆く人たちが多い2021年の東京。

ひそかにこの状況に安堵している、恋愛に興味がない『絶食系女子』たちがいる。

この連載では、今の東京を生きる彼女たちの実態に迫る。

▶前回:26歳で初めて彼氏ができた女。記念日にホテルに連れて行かれたが、緊張のあまり…

前編:自分しか愛せないオンナ・咲子(29)


『え~咲子、今月も無理なの?』

電話の向こうでため息をつく友人に、私は苦笑しながら謝罪する。

「ほんとごめんって。いつも言ってるけど、私じゃなくて別の子誘ってあげてよ」

『ダメだよ。向こうが“咲子ちゃん呼んで”ってしつこいんだもん』

友人からの食事会の誘いを断るのは、これで8回目だ。

それでも彼女が声を掛けてくるのは、男性側が私の写真を見て会いたいと熱望しているかららしい。

『来月でいいから。だめ?』

「うーん、来月もなぁ……」

スケジュール帳を見ながら悩んでいると、友人があきれた声で言う。

『咲子、せっかくそんなに“課金”してるんだからさ、そろそろちゃんと彼氏でも作りなよ。もったいなくない?』

「いや、男のためにやってるわけじゃないし。彼氏とか結婚とか、興味ないんだよねぇ」

え~でもぉ、と友人は話を続けようとするが、これ以上話していてもお互いに時間の無駄になりそうだったので「今度2人でアフタヌーンティーでも行こう」と言って一方的に電話を切った。

スマホをテーブルの上に置き、代わりに手鏡を取る。

そこに映っていたのは、ギプスとテープで鼻から頬が固定されている痛々しい自分の顔だった。

― 今回こそはうまくいってくれているといいけど……。

テープの上から鼻をさする。

これで鼻の修正は3回目。もし今回もダメなら、次は肋軟骨の移植も検討しなくてはならない。それなりの大手術で、費用もかさむ。

美容整形は、想像以上にお金や時間がかかる。もちろん痛みもつらいし、メンテナンスも大変だ。それに、失敗のリスクも結構高い。

それでも私が美容整形を繰り返すのは、常に最高の自分へとアップデートしていきたいから。

― 彼氏が欲しいから、とかそんなチープな理由ではない。私は、完璧に美しい姿を自分のために手に入れたいのだ。

理想の形になった自分の鼻を想像しながら、鏡に向かって小さく微笑んだ。

美容整形を繰り返す、この女の過去とは?

1番になりたくて……


子どもの頃から、極度の負けず嫌いだった。

そのおかげで、勉強や運動はいつもクラスで1番。

努力をした分だけ結果はついてくるし、周りから羨望の眼差しを向けられることが嬉しかった。

でも、どれだけ努力しても、絶対に1番になれないことがあった。

「咲子ちゃんより○○ちゃんのほうがかわいいから、俺こっちに投票するわ」

中学生の頃。生徒会長選挙に出ていた私は、そんな男子たちの会話を盗み聞いて絶望した。

― 私はこんなに頑張っているのに、顔のせいで選ばれないなんて……。

生徒会長選挙は、僅差で私が勝った。でも、そのときに受けたショックから、私は顔に強いコンプレックスを抱くようになる。

― 美容整形をして、誰にも負けない美しさを手に入れたい…。

そして高校卒業後、横浜国立大学に進学。地元福岡から都会に出てきて、私は本格的に顔面工事を開始する。

19歳の頃に初めて目頭切開と二重の埋没手術をし、その後、鼻、歯、輪郭、唇と、次々と施術をした。

そのうち、顔だけではなく二の腕や腰の脂肪吸引も行うようになった。

もちろん、脱毛や、ダーマペン、フラクショナルレーザーなどの美肌治療も欠かさない。その他、新作が出るたびにデパートで買い足している月々のコスメ代を入れれば、現在に至る9年間で美容にかけた総額は軽く800万を超える。

さらに、何度か美容整形のために渡韓をしているので、その旅費も含めたらもっとかかっているかもしれない。

費用は、学生時代は親からの仕送りとバイト代、そしてお食事会などでもらう“タクシー代”でまかなっていた。

大手人材紹介会社に就職してからも、給料だけでは足りないのでバイトもしながら、美容代を稼いでいる。

こうして美容にお金をかけていることで、私は美しくなり続けている。

もう、「あの子のほうが」なんてけなされることもない。

でも今の私は、誰かと比較できるレベルの、ありふれた可愛いや綺麗なんて求めていない。

私が手に入れたいのは、「究極の美」。

それは、自分自身の心を満たすために必要だった。

当然、男性から言い寄られる機会は急増したし、何人かと付き合ってみたりもした。

しかし、ダウンタイム続きでなかなか会えなかったり、私の美意識が高すぎるせいで「一緒にいて疲れる」と言われたり。

そういった男性とのすれ違いがだんだんと面倒になり、いつしか恋愛そのものから遠のいていくようになった。

男性から愛されるよりも、鏡に映る美しい自分を眺めているほうが何億倍も幸せだった。


コロナ禍でリモートワークになり、人と会う機会が激減。おかげで、有休消化せず自由なタイミングでダウンタイムを取れるようになった。

しかも、友人や親から恋人がいないことを心配されたり、出会いの場に連れ出されることも以前よりは少なくなった。

渡韓ができないことや、大手を振ってデパートに出かけられないことは、残念ではあった。けれど、ゆっくりと美と向き合う時間が取れるので、幸せな毎日を過ごしている。

そんな私が自粛中に開設したのが、Twitterの「美容整形アカウント」だ。ユーザー名は、「サキ」。

以前から私もその類のツイートを見て情報収集をしていたので、自分の体験談が少しでも誰かの役に立てばいいと思い、暇つぶし程度で始めたのだが…。

そのTwitterが予想外にバズり、1年でフォロワー数は1万人を超えた。

『個人的に金ドブだったのは、糸リフト!私の場合、全然効果を感じられませんでした。あとは小鼻のBNLS注射かな~』

この程度のツイートに、300以上の「いいね」がすぐに付く。

「アルファツイッタラー」になれたことで、少し調子に乗っていた私のもとに、ある日、DMが届いた。

Twitter経由で、運命の出会いが……!?

“同志”との出会い


『初めまして。マコと申します。不躾な質問で大変恐縮なのですが、サキさんが貴族手術をなさった病院名と執刀医をご教示いただけますでしょうか?

症例の写真がすごくお綺麗だったので、僕も同じところでやりたいなと思いまして…。お返事をお待ちしております』

私にリプライやDMをくれるフォロワーは、ほぼ全員が女性だ。

しかし、文面やアイコンを見る限り、このDMをくれた『マコ』と名乗る人は恐らく男性だろう。

― にしても、綺麗な顔の男の子。BTSのテテに激似だ……。

そう思って彼のプロフィールを見ると、『テテになりたい26歳男子の美容整形垢』と書かれていた。好きな芸能人に憧れて美容整形を繰り返す人は、男女ともに珍しくない。

― ていうか、この人5万フォロワーもいる!めちゃめちゃ人気アカウントじゃん……。1万人程度で浮かれてたのが恥ずかしいな。

私は気後れしつつも、彼のような人気者から自分の症例を褒めてもらえたことに悪い気はしなかった。


その後、私は彼と何通かDMでやり取りをした。見た目の華やかな印象とは異なり、とても丁寧な文章の彼――マコくん。

しかも同じ韓国アイドルが好きで話も盛り上がり、その流れでLINEを交換。家での時間は暇だったこともあり、毎日のように彼と連絡を取っていた。

『今日わたし涙袋ヒアル入れてきたんだ~。いつもより力んじゃったせいか内出血しちゃったよ』

『わかります。僕も、あの“にゅる”っと入っていく感じが気持ち悪くて苦手です…お疲れさまでした!』

美容整形のことを楽しく語り合える友人がいなかったので、私は彼と出会えたことをとても嬉しく思っていた。

人生で初めて、“同志”に出会えたような感覚だった。

『サキさん、よかったら今度ランチでもいかがですか?南麻布に完全個室の韓国料理屋さんがあって。そこのタッカンマリが絶品なんです』

彼からの誘いを、私は二つ返事で快諾した。

コロナの流行以降、男性からの誘いは全て「コロナだから無理」と断っていた。ましてや、ネット上で知り合った男性と実際に会うなんて、今までの自分じゃ考えられない。

でも、彼にはすごく興味があったし、本当の親友になれそうな気がしていた。

― マコくんと韓国料理、すごく楽しみだな。

このときは、まさか自分が彼とあんな関係になるなんて、想像もしていなかった……。


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マコと会うことになった咲子の運命はいかに…?

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