大迫勇也、「距離感」突き詰めて得たJ復帰初ゴールを自信に…W杯予選でも結果を

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「個人的にはもっとチームの戦術、周りの選手と合わせていかないといけない部分がたくさんある。あとは個人的にゴールが欲しい。貪欲に狙っていきたいと思います」

 日本代表の絶対的1トップ、大迫勇也はヴィッセル神戸移籍から約1カ月が経過した9月23日、得点への渇望を口にしていた。

 FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選の中国戦で値千金の決勝弾を叩き出してはいたものの、その時点で新天地でのゴールはゼロ。帰国後2週間の自主隔離で練習と試合以外はホテルから一歩も出られない生活を強いられたこともあり、コンディション調整にも苦しんでいた。

 だが、24日の清水エスパルス戦と29日の川崎フロンターレ戦で盟友・武藤嘉紀の先制弾を立て続けにアシスト。孤立しがちだった8月下旬の2試合に比べると、明らかにゴールに近い位置でプレーできるようになり、得点の予感も高まった。

「今の状態をキープすれば自然と結果はついてくるとは感じていたので、そこは焦らずというか、最高の準備を常にしようと心掛けていました」と本人もやるべきことを見極め、感覚を研ぎ澄ませていた。

 それが具現化されたのが、10月2日の浦和レッズ戦の先制弾だ。セルジ・サンペールから左の酒井高徳へとパスが渡った瞬間、背番号10は相手守備陣との巧みな駆け引きからアレクサンダー・ショルツの背後を取り、守護神・西川周作に倒れ込みながら左足浮き球シュートを蹴り込み、Jリーグで7年ぶりの一撃をお見舞いしたのだ。

「ただ前に張っているだけでは難しい時もあるし、ロングボールが増えると特徴的にもったいない選手が多いので、しっかりつないでいくプレーが増えればと。アンドレス(・イニエスタ)との関係だけではなくて、周りとの距離感もすごく大事になってくると思うし、チーム全体として1人1人の距離感がもっとよくなればいいかなと感じます」

 大迫自身はそんなイメージを描きつつ、得点の形を追及していたが、まさにこの先制弾は「いい距離感でつないで崩す」という理想の形。武藤との2トップで挑んだことで浦和守備陣が面食らったこともあっただろうが、決定力の高さが遺憾なく発揮されたのは間違いない。

 この一撃で勢いに乗った神戸はイニエスタが2点、武藤が1点を追加。最後には同時期に加わった新戦力、ボージャン・クルキッチまでもがゴールし、AFCチャンピオンズリーグ出場権を争うライバルの浦和を一蹴した。

「長かったですけど、これからまだまだ(ゴールを)積み重ねていきたいですし、ヴィッセルが勝つためにも自分の持てる力を全て出していこうと思います」と大迫は試合後のテレビインタビューでも爽やかな笑顔をのぞかせた。

 神戸を常勝軍団にするという大目標遂行は重要命題だが、彼にはその前にやらなければいけない重要なタスクがある。10月のW杯最終予選2連戦での結果だ。9月のオマーン戦を落とし、目下グループ4位に甘んじる日本にとって、7日のサウジアラビア戦と12日のオーストラリア戦は勝ち点6が必須のゲーム。取りこぼしは絶対に許されない。

 誰もが重要度を認識している天王山。しかしながら、中国戦で決勝点をお膳立てした伊東純也が出場停止のためサウジアラビア戦に出られず、久保建英もケガで不在という苦境に直面している。古橋亨梧は何とか追加招集されたが、南野拓実や鎌田大地といったキーマンたちも所属クラブで苦しんでいる。それだけに、攻撃陣最年長の大迫は力強く仲間たちをけん引しなければならないのだ。

「ここ2、3年は『代表を引っ張っている』と自覚しているし、代表戦に先発で出られるのは11人だけ。FWはその中でたった1人。そう考えたら全力でいろんなものを賭けて戦う価値がある。正直、ロシアの時の代表チームの方が強いと思うし、カタールまでにはあのレベル以上にならないとダメ」

 森保一監督体制発足から約1年が経過した2019年夏。大迫は偽らざる本音を口にしたが、あれから2年が経った今、日本代表が2018年のチームより強くなったとは言い切れない。ただ、10月2連戦を皮切りに最終予選の修羅場をくぐり抜け、若い世代がたくましさを増し、チーム全体の総合力がアップすれば、「ロシア越え」を果たせる可能性は皆無ではない。そうなるように、31歳のベテランFWは身を持って世界基準を示す必要がある。

 大迫の代表通算ゴール数は24。ようやく中村俊輔に並んだが、かつて「ビッグ3」と言われた50点の岡崎慎司、37点の本田圭佑、31点の香川真司の領域はまだ遠い。長友佑都が「アジアで頭抜けたFW」と太鼓判を押す彼ならば、少なくとも30の大台突破は必須と言えるのではないか。

 難敵揃いの最終予選でゴール量産は難しいが、10月2連戦の成否は、大迫勇也の双肩にかかっているといっても過言ではない。

取材・文=元川悦子

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