飲食店から独立失敗、アルバイトとして出戻りしたら「ストレス3倍」

拡大画像を見る

 コロナ禍で多くの企業の体制が大きく変化するなか、「コロナ転職」という言葉が注目を集めている。なかには、この機会に「独立」なんて青写真を描いている人もいるかもしれない。実際に転職や独立した人たちの「その後」はどうなったのか。

 今回は、二人のケースを紹介したい。結局、考えることは皆同じ。よりシビアとも言える。

◆飲食店を辞めて、副業のネットショップで独立するが…

 野中治さん(仮名・20代)は、転職ではなく独立の道を選んだ。もともとは飲食店に勤務しながら、副業としてECサイト(ネットショップ)でアパレル販売を行っていた。

「飲食店ではゼネラルマネージャー(GM)として働き、年収500万円程度もらっていました。コロナ禍より前は昇進の話もいただいており、これから次のステップに踏み出すところだったのですが……」

 しかし、新型コロナの感染拡大とともに野中さんの昇進は取り消されたという。

「はじめに給料の調整が入りました。続いては、俗に言う『クビ』です。正社員の中で、役職が低い人から切られていきました。自分の生活は大事ですが、コロナ禍になって約半年、この状況に耐え切れず、退職を決意しました」

 ずっと飲食店のことばかり考えて生活してきたので、「ようやく肩の荷がおりた」という。独立してから数か月間は楽しかったそうだが……。

◆ECサイトの競争は激化「生活が成り立たない」

「まずは、自分で運営していたECサイトに力を入れていました。最初のうちは売り上げが伸びていき、独立が成功したと思って気を緩めていました。ただ、ライバルが増えてくると、売り上げはみるみるうちに落ちていきました」

 実店舗を構えないECサイトでの販売は、最初こそ順調だった。しかし、これまでは本格的に力を入れていなかったアパレルメーカーはもちろん、野中さんのような人たちがコロナ禍でインターネットの世界に活路を見出そうと、続々と参入してきた。次第に競争は激化。

 このままの状態では、生活が成り立たないと思い、野中さんは試行錯誤を繰り返した。だが、売り上げは戻らなかった。新しいことを始めようにも資金が足りず、足踏み状態となった。

 そこで、野中さんが考えたことは「飲食店に戻ろう」だった。

◆アルバイトとして飲食業界に出戻り

「飲食店では長く働いていたので、比較的早めに決まりました。最初はアルバイトとしての契約でスタートしました」

 しかし、そこからが苦悩の始まりだった。

「バイトの店員としては、年齢的に決して若いとはいえません。まわりに馴染むことができないという問題にぶつかりました。ストレスは今までの3倍。思っていたよりも働きにくい環境で苦悩の連続でした。とはいえ、コロナ禍で働き口があるだけでもありがたいことなので、耐えていました」

 若いアルバイトたちの陰口がきっかけで辞めることになる。

「彼らが『なんであの年齢でバイトしているんだろう』『あの人よりも俺たちをシフトに入れてほしい』と話しているのを聞いてしまいました。まあ、そう見られるよなと思いました。そこで、何かの糸が切れてしまったのかもしれません」

 正社員のゼネラルマネージャーまで経験した人間が、いちアルバイトという立場に戻る。野中さんはプライドを捨て切れなかった。そして数日後、退職を伝えることに。

「現在は、ECサイトを続けながら、新しい仕事を探しています。なんとか生活はできますが、地元に帰ることも視野に入れています」

 コロナ禍で状況が絶えず変化していくなかで、転職や独立をすることがいかに難しいことなのか。野中さんは身をもって知ったという。

◆待遇に不満、8年間働いても新人と同じ時給

 一方、スポーツジムでインストラクターをしていた田中みえこさん(仮名・20代)はコロナ転職を「良い機会だった」と振り返る。

「パートでしたが、8年と長く勤めていました。昇給はなく新人のインストラクターと同じ時給。それでも倍以上の仕事量がある。毎日のレッスンのことで頭がいっぱいでした。

 また、プールレッスンなどの水着は自腹。有給休暇もなく、雇用保険にも加入していない状態。最悪な待遇のなか、改善してほしいことをずっと訴えていました。しかし、要望が通ることはありませんでした」

 自分のキャリアに対する待遇に不満を抱え、もはや心身ともに悲鳴を上げていた。正社員は次々と辞めていき、田中さんはパートのエースとして忙しい日々が続く。そんななか、新型コロナが猛威をふるう。

◆「辞めたい」気持ちをコロナ禍が後押し

「施設が臨時休業となり、ほとんど収入がなくなりました。仕事が再開してもジムの会員は減る一方で赤字が続きます。従業員への待遇も悪くなり、私は退職を申し出ました」

 辞めることに対しては、なぜか説教されたと話す田中さん。会社からは、これまでリーダー的存在として引っ張ってきたことへの感謝の言葉もなかった。

「現在は全く別の職種です。前職を辞めざるを得ない状況をつくるために、転がり込むように今の仕事に就きました。時給はそれほど変わりませんが、待遇は良く、コロナ対策もしっかりしているのでストレスも減りました。転職後の後悔は全くありません

 田中さんは、現職と並行しつつスポーツ少年団の指導者も行っているが、緊急事態宣言に伴い活動を自粛しているという。

 職場に大きな不満を抱えている状態で働いている人の「辞めたい」という気持ちを「後押し」する。それが「コロナ転職」の実情なのかもしれない。

<取材・文/chimi86>

―[「コロナ転職」のその後]―

【chimi86】
ライター歴5年目。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。Instagram:@chimi86.insta

関連リンク

  • 10/3 8:53
  • 日刊SPA!

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます