「野党共闘」は自公の選挙協力を模範とせよ<慶大名誉教授・弁護士 小林節>

◆政権を目指さない政党はない

「政党」とは、それぞれに同じ政治的主義・主張を持った人々の結社で、いずれも、政権を獲得してそれを用いて全国民の福利を増進させたいと願って活動している集団である。

 例えば、自民党は、自由と民主主義(とはいえ、2012年改憲草案によれば明治憲法的な国家観)によって日本国を統治することで、日本国民の最大多数の最大幸福が実現すると考えて活動している政治結社である。また、公明党は、日蓮仏法を信ずる人々の政治結社で、法華経の精神に従って国を統治してこそ国家は平和裏に発展すると考えている人々の集団である。

 私たち人間には、歴史の成果として、思想・良心の自由(憲法19条)と結社・表現の自由(21条)と参政権(15条)が等しく保障されているのだから、人々が、信条別に政党を結成して活動することは文字通り自由である。

 だから、マルクス・エンゲルスによって確立された共産主義を指導原理とする政党を結成することも自由である。「新自由主義」と称して弱肉強食の資本主義が大手を振っている今日、私有財産の無統制な自己増殖による弱者に対する搾取のない平等な社会を目指す共産党には、今こそ価値があるのではないか。だから、当然に、共産党も政権入りを目指して活動しているし、それは、政党として当り前のことである。

◆「野党共闘」の模範は自公選挙協力

 小選挙区(1人区)を中心にした現行の衆議院選挙制度の下では、まず、与党側が候補者を1人に絞っている以上、野党側も1人に絞らない限り、始めから勝負にならない。

 自公政権(特に安倍・菅政権)による権力の私物化・利権化の結果、国民大衆の生活は確実に悪化している。不誠実なコロナ対策、重税、福祉の切り下げ、労働法制の改悪等により、国民大衆の中には不満がうっ積している。しかし、過去6回の国政選挙で政権交代は起きていない。

 それは、自公政権が支持されたというよりも、野党には期待できないから「どうせ選挙に行っても何も変わらない」と棄権する有権者が半数以上もいるからである。だから、支持率で50%にも満たない与党が選挙の結果では60%以上の絶対多数の議席を得てしまうのである。そして、「役に立たない野党」に対する期待はさらに遠退いて行く。

 だから、菅政権が国民の信を失って瓦解した今こそ、野党は「自公に学んで」全ての小選挙区に「野党統一」の一本の旗を立てるべきである。

◆「野党共闘」と「選挙区内調整」

 ところが、この期に至っても、野党第一党の立民からは、「特定の選挙区で共産党の候補者を降ろせ」「共産党とは選挙協力はしても、政権を奪取しても共産党は閣内に入れない」とか、訳の分からない話しか聞こえてこない。これは、要するに、共産党は立民の議席獲得のために犠牲になれ……と言っているに等しい。政治家以前に人として失礼千万な話であろう。

◆「共産党異質論」について。公開討論を

 もちろん、立民もそれなりに「理屈」を言う場合がある。曰く、「共産党とは基本理念が異なるから内閣に入れることはできない」。

 しかし、それならば、「俱に天を戴けない」相手に、自分達の存続にかかわる選挙協力など求めるべきではない。

 しかも、「基本理念が異なる」と言っている内容に説得力がない。曰く、「自衛隊、日米安保、天皇制等について考え方が違う」。しかし、まず、立民の中でも上記論点について意見が一様でないという事実を指摘しておきたい。

 その上で、⑴日本国憲法は、本来、自衛隊や日米安保のいらない世界を目指しているが、今の国際情勢がそれを許さないことは認める。しかし、憲法が海外派兵を禁じていることは今守られるべきである。⑵明治憲法下の統治権を総攬していた国の主権者たる天皇と、日本国憲法下で主権者国民の総意に基づく象徴天皇は、法的に別異のものである……。という共産党の主張のどこが「俱に天を戴けない」程にまずいのか? 立民が公開討論の場を設けることを期待する。

 これは非常に重要な、時の公的関心事であるのだから。

<文/小林節>

<初出:月刊日本10月号>

こばやしせつ●法学博士、弁護士。都立新宿高を経て慶應義塾大学法学部卒。ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。著書に『 【決定版】白熱講義! 憲法改正 』(ワニ文庫)など

―[月刊日本]―

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

2021/10/2 8:50

この記事のみんなのコメント

4
  • 日本共産党が暴力社会を?

  • ここでも書くが、共産党は暴力革命を否定していないため、現在も公安調査庁による監視調査対象団体となっています。

  • トリトン

    10/2 14:01

    殺人テロリストの共産党と猿以下の知脳反対と審議拒否しか知らないキムチ原人の雑種の立憲?ブラックジョークだよね。せいぜい猿山の猿の集団のところに行って勉強してこいや。猿以下のダニが。

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