競馬予想でメシを食うために必要な「馬券予想力」以上に大事なこと

◆最後の決め手は伝える力

 ネットの普及で競馬予想家が活躍できる場は広がり、予想家になりたいという人も増えています。過去2回にわたって、馬券攻略誌の編集長であった私がお届けした「競馬予想家になる方法」も本稿が最終回。まずは簡単にこれまでに挙げた条件を振り返っていきましょう。

(1)SNSのフォロワーを増やせ!

(2)アニメや萌えキャラのアイコンは避けろ!

(3)尖った特徴=旗印を揚げよ!

(4)顔出しOKでいけ!

 この4項目をクリアしていれば、かなりの確率でメディアの目に留まる可能性は高いはずだ、と前回までにお伝えしました。今回は、ダメ押しとなる要素を2つ紹介しておきましょう。おそらく、ここまで条件を満たせば「あの新人、めちゃくちゃイイ!」と話題になるはずです。

◆予想力以上に大事な文章力

 意外と意識されていないのが文章力。「予想が上手ければ文章は関係ないだろ」と思われるかもしれませんが、そんな特例が許されるのはほんの一握りです。もちろん、周囲を唸らせるような名文を書く必要はありません。丁寧に、論理が破綻しないように書くことが重要です。

 私は編集者の先輩に「馬券本の編集では、いかにツッコミどころをなくすかが大事」と教えられました。ともすれば独りよがりになりがちな競馬予想の世界。自分の理論の正当性を主張したいがために、「Aという馬を推す根拠が、実は消しているBという馬にも当てはまっている」なんてことも。そういう矛盾をチェックし、潰していくことが編集者の任務なのです。

 逆説的になりますが、これをクリアしていると編集者の仕事が一つ減ります。先の例で言えば、「この理論だと実はBも当てはまっています。しかし~」と、先回りして消しの理由を書いてあると「この書き手は分かっているな」と思うのです。

 単行本『降格ローテ』の著者、とうけいばさんがまさしくそのタイプ。特別凝った表現を使うわけではありませんが、読者の疑問に先回りする形で丁寧に説明がなされている文章に、聡明さが滲み出ていました。

 また、競馬という特殊な固有名詞が数多く存在するジャンルだけに、そこで誤植しないことも重要。馬名やレース名はコピー&ペーストが基本です。ブルーメンブラッド(正しくはブルーメンブラット)、関谷記念(正しくは関屋記念)などは要注意(笑)。ちなみに、先の先輩は「誤植を3つ見つけたら、俺はもう読まない」とも言っていました。

◆折れない心を持とう

 初回の原稿で「フォロワーの数は営業力の証明」と書きました。今現在、メディアで活躍している有名な予想家の方も、きっかけはほとんどが売り込みか紹介です。日刊SPA!でもお馴染みTAROさんも、競馬雑誌の編集部に足を運んで御自身の馬券理論をプレゼンされたとか。今やスター予想家の一人であるTAROさんでさえ、スタート地点は地道な営業活動だったのです。

 もちろん、営業をかけても全てが上手くいくわけではありません。「たまたま、対応した編集者やディレクターと合わなかった」「別の人を売り出すタイミングだった」など、本人の資質や理論の内容とは関係ない部分ですれ違ってしまうことは大いに有り得ます。しかし、そこで諦めてしまうとチャンスを逃してしまいます。

「あの人は、何であんなに本を出せるんだろう?」「なぜか、メディアに出ているよな」という人がいますよね。実はそれも、とてつもない営業の賜物だったりします。あらゆるメディアに営業をかけ、AというテーマがダメならBというテーマで、単著がダメなら共著で…など、何度断られようとアクションし続けることで、半ば根負けするような形で企画が通ることもあります。

 それを「節操がない」「厚顔無恥だ」と言うのは簡単ですが、何もアクションしなかった人との結果の差は明白です。

◆競馬予想界のニューフェイスの登場を待つ!

 もし、メディアに出たいという気持ちがあるなら、「SNSで力を磨いて…」「毎週、真摯に競馬と向き合い良い予想を積み重ねて…」と誓うよりも、まずは動いてみることをオススメします。SNS上で予想家の方やメディア関係者にアクションを起こしてみる、交流の場に積極的に打って出る、オンラインサロンに参加してみるというのもアリでしょう。

 今、中央地方問わず、馬券の売上が好調です。競馬文化の隆盛のために、馬券が売れるのは大変喜ばしいこと。そして、新しい価値観を提示できる予想家の存在は、馬券の売上を支える重要な一つのピースだと考えます。

「この手があったか!」「こんな見せ方があるのか!」と唸らせてくれるような新予想家の出現を、私は心待ちにしています。

文/松山崇

―[競馬予想家でメシを食う]―

【松山崇】

馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。

2021/10/2 8:29

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