『チコちゃんに叱られる!』お刺身と菊の花びらの理想的な関係性 「菊の香りがすごくしてくる」

 9月24日に『チコちゃんに叱られる!』(NHK)が放送された。パラリンピック中継のみならず他番組の放送が数週挟み込まれたため、本放送枠である金曜夜に『チコちゃん』が流れたのは1カ月以上ぶりだ。

 この日のゲストは五木ひろしと夏菜。夏菜といえばNHKドラマへの出演が予定されていたが妊娠が判明し、大事を取って降板したと報じられたばかり。今回はそれより前に行われた収録だろうか?

ビートルズの音の良し悪しを聴き比べる「格付けチェック」

 この日最初のテーマは、「なんでコンセントは穴が二つなの?」というもの。はて、抜けにくくするためだろうか? というか、穴が三つの場合もあるけども。チコちゃんが発表した正解は、「入り口と出口が必要だから」であった。

 詳しく教えてくれるのは、近畿大学理工学部の講師・津山美穂先生だ。曰く、コンセントには+(プラス)とー(マイナス)で行ったり来たりする「交流」という電気が使われているとのこと。この電気は右の穴から入って左の穴へ出た後、左の穴から入って右の穴へ出る……を交互に繰り返しているという。つまり、右の穴と左の穴はどちらも入り口であり出口なのだ。

 電気は入り口と出口がないと流れず、さらに電圧が高いところから低いところに流れる性質がある。コンセントの場合、右の穴の電圧は常にプラスとマイナスに行ったり来たりしている。一方、左の穴の電圧は常に0なので右の穴がプラスのときは右から左へ、右の穴がマイナスのときは左から右へと電気が流れるのだ。右の穴の電圧は常に入れ代わり、電気が右から左へ、もしくは左から右へと交互に流れ、この電気の流れを生み出すために穴が2つ必要ということだ。右から左へ……ということは、コンセントはムーディ勝山「右から来たものを左へ受け流すの歌」に似ているのか? ここで、唐突にムーディの歌を歌いだす津山先生。五木ひろしゲスト回に歌うのもなかなかの勇気だし、なんだったらムーディ本人を呼んであげればいいのに……。

 実は、コンセントは左右で違いがあるらしい。コンセントをよく見ると、左の穴のほうが大きいのだ。もちろん、差す向きを合わせたほうが性能はより発揮される。例えば、オーディオ機器がそう。一部のオーディオ機器には、プラグに▲や●などの目印がついている。コンセントに差すときは、目印のほうを左側にしたほうが音が良くなるらしい。これは、全然知らなかった事実! うちのオーディオ機器も今すぐ確認しなきゃ……と思ったものの、コンセントの向きを気にするような高尚なオーディオ機器を筆者は持っていない。そもそも、今は家にオーディオ機器がない人も多いだろうし……。

 兎にも角にも、番組はある実験を行った。同じ曲を2回再生し、コンセントの向きを正しくした場合と向きを逆にした場合を聴き比べ、いい音だと思ったほうの札を上げるという比較実験である。回答者は20~40代の番組スタッフ3人。これは格付けチェックよりも難しそうだし、モスキート音が聴こえないと言われる40代を入れるのも不安だ。あと、見ている我々もテレビのコンセントの向きを確認してから参加したほうがよい?

 今回、使用する楽曲はベートーベンの「運命」と、ビートルズの「Come Together」の2曲である。結果、これがびっくりした。テレビを通しても、両者で音がまったく違うのだ。なのに、40代のスタッフだけが2問とも不正解……。つまり、どんなにいいオーディオを買ったところで目や耳が衰えていたら意味がないということ。いや、もしかすると40代以上はコンセント逆向きの音のほうが心地いいという証明になったか? あと、スタジオにいる五木が正解したのかどうかも気になった。

「この中で一番、料理が得意なステキな大人ってだーれ?」という呼びかけから2問目の回答者に指名されたのは、新婚の夏菜だ。チコちゃんの疑問は、「なんでお刺身に菊がついてるの?」というものだった。はて、薬味に使うためか、お口直しに食べるためなのか? 余談だが、菊の代わりにお刺身にレモンを乗せる飲食店は、レモンの味が移るから即刻やめてほしい。それはさておき、夏菜は「抗菌っていうか殺菌っていうか……お魚を弔っている?」と回答、「ボーッと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱り飛ばされてしまった。

 正解は「お刺身を醤油で食べるようになったから」である。

 詳しく教えてくれるのは、食文化史研究家の永山久夫先生。曰く、お刺身を醤油で食べるようになる前は、酢にお刺身をつけて食べていたという。事実、この食べ方は「なます」と呼ばれ、奈良時代には登場していた。当時は保存技術がないため、生臭みを消すうえで匂いと味の強い酢が役立ったのだ。あと、酢には防腐効果と殺菌効果があるので、食中毒を防ぐのにも重要であった。そうか、そんな時代から酢はあるのか……。

 ただ、その頃は酢が高価だったので、金持ちや上流階級じゃないと「なます」は食べられなかった。確かに、酒と酢酸菌で作る酢は高かったと思う。その後、江戸時代になると漁業技術や流通が発達、庶民の食卓に並ぶ魚の種類が増えていく。そして、刺身ブームが到来! カツオやマグロを刺身にして販売する刺身屋が登場するほどのブームが巻き起こったという。そのとき、高価な酢の代わりに重宝されたのが濃い口醤油だった。匂いと味がきついため、生臭みを消すのに役立ったと言われている。江戸時代初期、醤油は主に関西から取り寄せていたので酢と同じく高価だったが、江戸の味覚に合う濃い口醤油が関東で作られるようになり、輸送コストがかからず大量生産もできるようになると値段は下がった。こうして庶民の間で醤油が広まり、お刺身を醤油で食べるようになっていったのだ。つまり、醤油は酢よりも新しいということ。

 しかし、食中毒にかかる人が増えるという問題が発生する。ということは、お刺身を酢につけて食べていた人だけが助かっていた? それはともかく、ここで注目されたのが菊だ。菊は酢と同じく、体にいいと昔から言われていた。「重陽の節句」では菊を入れたお酒を飲むと病気から身を守ると信じられていたし、菊には免疫機能を高めるビタミンEが多い。そして、菊の花が咲くのは7~10月頃の食中毒が増える時期だ。江戸時代、菊に食中毒の予防効果があると庶民が知っていたかは不明だが、菊と一緒に食べることで食中毒を防ぐと信じていた可能性は高い。こうして、お刺身に菊が添えられるようになった。要するに、アニサキスを殺すためにイカ刺しに添えられる大葉、生姜と同じ意味だ……って、ならば冒頭の夏菜の回答は正解だったのでは!? ちなみに、お刺身とわさびを一緒に食べ始めたのは江戸時代後期頃だそうだ。

 さて、お刺身に菊がつく理由はわかった。でも、どう食べればいいのだろう。そもそも、食べる人なんているのか……? 永山先生が推奨するのは、醤油の中に菊の花びらを散らし、まんべんなくお刺身に菊をつける食べ方である。これを、番組ディレクターが試してみると……

「魚の味がしっかりとしたあとに、菊の香りがすごくしてくる。うまいな」(ディレクター)

 ディレクターのリアクションに「ハハハハハハ!」と喜色満面の永山先生。ただ、個人的には抵抗がある。醤油に入れる菊の量が予想以上だったのだ。これはちょっと……。地域によっては食用菊を食べるところもあるが、飲食店では菊を使い回すなんて話も聞いたことがあるし、正直言って遠慮したい。あと、永山先生もちょっと特殊だ。若い頃は生活が苦しく道端の雑草を食べていたそうで、「特に初台の草はうまかったなあ」と遠い目をする人なのだ。初台(渋谷区)の雑草なんて、きっと埃と排気ガスまみれだろうに。

 最後に、“日本の美味しい食用菊”3選を永山先生が教えてくれた。第3位は新潟県「かきのもと」で、第2位は青森県「阿房宮(あぼうきゅう)」。天ぷらで食べるのがおすすめだそう。そして、第1位は山形県「もってのほか」。濃厚な味と香りが売りの“食用菊の最高峰”である。いや、天ぷらにすれば大抵のものはうまくなるだろうし、異論の余地はなきにしもあらずだ。でも、これだけ見せられるとちょっとだけ菊が食べたくなってきた。食用菊だから、決してまずくはないだろう。スタジオにいる回答者たちも考えを改めている。

岡村 「菊をちぎって食べたほうがいいんですね」
夏菜 「超捨ててた!」
岡村 「ね!」
五木 「それはもってのほか!」

 このオチは芸人の岡村が言わなきゃいけないセリフでしょうが! 歌手の五木に言わせるなんて、「もってのほか」だ。

  • 10/1 18:00
  • サイゾー

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