DV被害で傷ついた女性を励ます“美しい下着”の力「自分のこと大事にしてほしい」

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<みきーるの女子マインド学>

 “寄せて上げる”ではない、身体に添う肌衣を提案するHAVIENAのブランドディレクター・柴尾陽子さん。インタビュー後編は、大人のナイトブラ問題と、DV被害で傷ついた女性たちを勇気づける“下着の力”について伺いました。

◆ナイトブラは着けなきゃいけないの?

――大人の女性が「やっぱり、着けるべきなの?」と悩んでしまうものに、“ナイトブラ問題”があると思うんです。「ナイトブラを着けないと、胸が垂れるかも……」という恐怖と、何も着けない心地よさを求める気持ちがせめぎ合うというか。柴尾さんは、ナイトブラ問題についてどうお考えですか?

柴尾陽子さん(以下、柴尾)「今40代以上の方は、10代~20代くらいのときに『ちゃんとした下着を着けておかないと、胸が垂れるよ』って言われてきた世代ですよね。アラフォー~アラフィフの方(※以下、読者世代)が生まれたのは1970~80年代くらいかと思うんですが、1970年とすると、彼女たちのお母様が生まれたのは1950年ごろになります。

 国内最大手の下着メーカーであるワコールさんが創業されたのは1946年ですので、お母様たちが20代のころ、“お母様のお母様”、つまり読者世代のおばあさまたちは、まだブラになじみがなかったと思うんですよ」

――たしかに。和装の方も多かったと思います。

柴尾「読者世代のお母様たちは、高齢になった自分の母親の身体を見て、『胸、垂れてる! 私は、ああはなりたくない!』と、怯えたんじゃないかなと。そんなときにブラジャーというものが登場して、『美しい身体でいるためにブラを着けなきゃ!』と思ったのではないでしょうか。

 お母様たちは『ああはなりたくない!』と危機感を抱いて、自分たちもブラを着けたし、娘たちにも着けさせました。はたしてブラを着けていれば胸は垂れないのか? その答え合わせが今ようやくできていて……」

――おお!!

柴尾結果、10代からブラを着けてきた私たちも、やはり40代くらいになると垂れるんだなと(笑)。時系列的にわかったんですよ。読者のお母様たちだって『わ! ブラしないとおばちゃんたちみたいになる! 垂れたら大変!』と思ってブラを着けていたと思うんですが……」

◆体型補正したいときに下着でほどよく整えられればいい

――トホホな現実です(笑)。

柴尾「以前、NHKの『あさイチ』でもナイトブラ問題を採り上げていて、乳腺外科医の土井卓子先生が、「(着ければ)見た目は修正できますけれど、乳腺そのものは変えられません」とバッサリおっしゃっていました。とはいえ、『ちゃんとしないと垂れますよ』と言われて心配になる気持ちはわからなくもないんです。でも、ブラをしていなかったおばあさまたちと自分たちがどれほど違うかもわからないですよね」

――本当にそう思います。

柴尾「だから、『着けている間はそれなりに補正するけれど、外せば戻るんだよ』と知った上で着けるのがいいかなと。運動するときにブラをしているかいないかでクーパー靱帯の伸び方も違ったりしますし、胸を保護するために着ける、といった付き合い方もいいと思います。

 リアルの胸がどうであれ、体型補正したいときに下着でほどよく整えられれば、それでいいのではないでしょうか」

◆DV被害で困難を抱える女性への支援

――“垂れさせないために!”というより、「今日はロマンチックにしたいから、素敵なナイトブラを着けよう」みたいなスタンスがいいなと思いました。女性はどんな下着を着けるかで、気分も変わると思いますので。下着って、本当に不思議な力がありますよね。

柴尾「はい」

――下着の力といえば、柴尾さんはDV被害で困難を抱える女性への支援として、久留米市に下着を寄贈されたそうですね。この活動について教えていただけますか?

柴尾「コロナ禍で困窮に陥る人の中には、シングルマザーや夫からDV被害を受けている女性も多くいます。私自身もシングルマザーなのですが、他人事ではないと思ったのがきっかけです。

 出産育児で環境が大きく変わり不安もありましたが、コロナ禍でも自分の会社を続けられましたので、そのご恩返しをするような気持ちをこめて、何かできないかなと考えました」

◆ボロボロの下着を使っているDV被害者の女性たち

――それで下着を寄贈された?

柴尾「はい。DVに遭うと精神的に追い詰められて、自分をすごく価値がないものだと思ったり、生きる希望を失ってしまう女性も多いと思うんです。恐怖だったり、先が見えない絶望感もあるでしょうし。そういう女性たちって、夫や恋人から下着も買わせてもらえなかったりするんです。

 DV被害者の女性たちはボロボロの下着を使っていたり、身に着けるものにささやかな贅沢もさせてもらえない。相手のことを大事にする人だったら、相手が好きなものや喜ぶものを認めて暮らすってすごく自然なことだと思うんですよ。

 でも、それが支配のような構図になってしまうと、当たり前の権利で選べるものさえ買わせてもらえないんです」

◆自分のことを大事する気持ちを取り戻してほしい

――「チャラチャラするな!」とか、「お前には、ボロボロの下着で十分」などと言われるのでしょうか。

柴尾「そうですね。言葉にしなくてもそんな圧をかけるようなところがあります。そうやって女性の自尊心も低く貶めてしまう。そんな女性たちが着の身着のままで逃げてこられた場合、下着も足りないだろうなと。

 実用的なものも考えましたが、女性としての高揚感を呼び覚ましたり、『女性に生まれてよかったな』と思える気持ちになるものって、嗜好品のほうがいいかなと思いまして。

 行政側に相談して、「もしかしたら却下されるかも」と思ったんですけど、受け入れてくださったので、弊社の下着を寄付させていただきました。女性たちに美しいものや自分が気に入ったものを身に着けて、『私、ちょっときれいかも』とか、『自分のこと大事にしたいな』という気持ちになってほしいと思いましたので」

◆他人の言葉に振り回されるのはやめにしよう

――素敵な下着を着けていると、ちょっと強くなったような、誇らかな気持ちにもなれますよね。

柴尾「はい。実際に、DVの被害者だったり、デートDVをする彼氏と別れて『速攻で下着を買いに行った!』という女性のお話もけっこう聞きました。やっぱりきれいな下着を買わせなかったり、けなすような言動で精神的な支配を強めていく例は少なくないようです。

 そこを多くの女性に気づいてほしいし、『私はこんな素敵な下着を着ける資格はない』とか『私は貧乳すぎて価値がないから、豊胸手術しないとだめかな』とか、簡単に思い詰めないでほしいです。

 それよりももっと自分と向き合って、それでもしたいと思ったらその気持ちは尊重されていいと思いますが、闇雲に、誰が言っているかもわからない他者基準に振り回されるのは止めにしようよと、心から言いたいです

◆「胸が崩れた」なんて言わないで

――裸の胸、そしていちばん初めに肌に触れるのが下着ですから、人に勝手に価値を決めさせず、思い切り大事にしてあげたくなりました。

柴尾「人の身体も自分の身体も大切に思っていれば、『胸が崩れた』というような言葉は出てこないと思うんです。言霊じゃないですけど、発している言葉が自分にも返ってくると思いますので。なるべく気持ちが豊かになるような言葉で表現したりしたいと思いますよね」

――はい。お話させていただいて、私はこれから「熟れた(こなれた)」という言葉を遣おうと思っています。「成熟した」「自分らしくなじんだ」といった意味合いがありますし、「胸、崩れたな~」というのは残念ですが、「胸、こなれたな!」なら、ほんわかすると思うのです。本日は、ありがとうございました!

※2021年9月、リモート取材にて収録。

【柴尾陽子(しばお・ようこ)】
同志社女子大学短期大学部を卒業後テキスタイルメーカー、アパレル商社を経て2005年12月創業。下着等の輸入卸を経て2011年よりオリジナルブランド HAVIENAローンチ。「HAVIENA」とは、日本語のHANA(花・華)とフランス語のVIE(暮らし)を組み合わせた造語。ランジェリーを主軸に花のような潤いや華やかさのある暮らしを提案している。「ランジェリーを通してもっと自由で豊かな社会へ」をミッションとしている。

<取材・文/みきーる>

【みきーる】
ジャニヲタ・エバンジェリスト。メンタルケアカウンセラーⓇ。女子マインド学研究家。応援歴20年超のジャニーズファン。女心を知って楽しく生きるためのライフハック“女子マインド学”を提唱。著書に『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)『「戦力外女子」の生きる道』他。Twitterアカウント:@mikiru、公式ブログ:『ジャニヲタ刑事!』

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