「あなたとはもう働けない」信頼した部下から送られてきた、4000文字の抗議文

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―[モラハラ夫の反省文]―

◆もはやパワハラ上司は下克上を食らう時代

「仲良くやっていると思っていた部下が、自分とはもう仕事をしたくないと言っているのを知ってしまった。何が悪いのかもわからないし、評価にも響くし、困る」(筆者への相談者)

DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。

 僕自身もDV・モラハラ加害者です。そのせいでたくさんの人を傷つけ、仕事や家庭が破綻寸前になり、ようやく自身の加害行為、それを生み出す加害的な思考・価値観を自覚しました。現在は日々自分の言動を改善しながら、妻と関係を再構築させてもらっています。

 この連載では、僕自身の経験や当事者会での気づきを共有していきます。職場や家庭でモラハラに苦しんでいる方々、無自覚に加害を行っている方々の参考になれば幸いです。

 さまざまな加害者の方々と話していて、そして自分自身の経験を振り返っても間違いなく言えることは、多くの職場には加害が溢れているということです。

 GADHAに参加する人の中には「そんなつもりはないのだが、会社では怖いと言われる。言葉がきついからもう働きたくない、とプロジェクト終了後に言われたこともある」といった人や、

「自分がされてきたように、部下に対しても全員の前で叱責していたら、パワハラだということでエースの部署から外されてしまった」という人もいます。

◆部下に「お前はバカ」という無言のメッセージを送り続けていた

 かく言う僕も、その一人です。信頼していたチームメンバーの2人から、ある日連名で4000字近い量の文章がSlackで送られてきたことがあります。そこには以下のようなことが書かれていました。

・自分の方が全体が見えていて情報量が多いのにそれを伝えず「わからなければ聞いて」と言い、働きやすいような情報の提供、仕事の依頼ができていない

・相手が望んでいることや本当の目的を汲み取れる人が「仕事のできる人」「賢い人」であり、そういう人と働きたいという発言を通して、それができない自分たちが責められてるように感じて、働いているのが辛い

・よって、来月からはもう一緒に働けない

 ショックでした。自分としては良い関係を築けているつもりだったからです。まさに「無自覚な加害者」として、人を傷つけながら働いていたのです。

「わからないことがあれば聞いて」というのは、自分の中では親切にしているつもりでした。自分は一人で仕事をしてきたので、聞ける相手がいるだけで十分恵まれた環境だ、と思っていたのかもしれません。

 しかし実際には、本来であれば負担する必要のない「理解コスト」を相手に押し付け、自分の「説明コスト」を下げる行動にすぎませんでした。それは、相手を人として尊重していれば取らない行動でした。

 そして無自覚であることが恐ろしいことに「説明コストをかけさせるのは馬鹿のすること」「そういう人とは働きたくない」というメッセージを垂れ流していました。自分が相手の理解に必要な情報を渡していないにもかかわらずです。

 こんなことを言っていれば当然メンバーからすると「これを確認すると馬鹿だと思われるんだろうか」と思われてしまい、仕事の中でもビクビクしてしまったり、聞くのが怖くて聞けず結果的に問題を起こしてしまうなど、良いことは何もありません。

 しかも愚かしいことに、自分にとってはそれが褒め言葉のつもりだったのです。「そういう説明コストの不要なみなさんは優秀です!」と、自分の依頼する能力の低さは棚に上げて……。

◆家でのモラハラも、まったく同じ構造で行われる

 そんな人間と一緒に仕事をしたいと思う人なんていませんよね。そして、もしそんな人が家でも同じように振る舞っていたとしたら、一緒に生活したい人もいないはずです。

 多くの加害者と同じように、僕は、職場での加害と同じような加害を家でもしていました。今回の例でいうなら「説明コストをかけないで依頼しておきながら、それを理解できないと愚かだだとジャッジする」ということです。

 例えば妻に「料理作り始めちゃってからいくつか材料がないことに気づいたから買い物をしてきてほしい」と言われた時に、「口頭で言われると忘れちゃいそうだからメモが欲しい」と伝えたとします。

 その時に、妻が「手書きのメモ」を渡してきたら嫌な顔をしてしまうのです。「手書きだと読み間違えるかもしれないからLineなどでテキストで共有して欲しかった。ブランドが間違ったりしても嫌だから今使っているものの写真とかを撮って添付したり、検索してURLをシェアして欲しい」といったように、自分の依頼の仕方を棚に上げて相手を責めるのです。

「違うもの買ってきて困らせるのも嫌だから、できればラベルの写真とか送ってくれると嬉しい」とか、「ブランドとかはそんなにこだわりないのかな? もしあるなら教えてもらった方が安心かも」とか、手書きのメモを音読して間違いがないか確認したりとか、自分にできることがたくさんあるにも関わらず、できませんでした。

 人間として未熟で、加害的で、そんな人間と妻がいつまでも一緒にいてくれるとなぜ思えていたのか今ではわかりません。

◆妻や仕事仲間からは、徹底した反省と自己分析により許された

 その後、紆余曲折があって自分のモラハラを自覚し、DV加害者であることを自覚してから、少しずつでもこういった話し方、嫌な言い方というのは減ってきました。妻からは「別人のように話しやすくなった」と言ってもらえています。

 ちなみに、チームメンバーの方々とはその後も関係を続けることができました。連絡をもらってすぐに2週間ほど時間をくださいと伝え、コミュニケーションやマネジメント、チーミングなどの本を読み、自分の誤りを認め、謝罪し、実際に行動を変えることができたからでした。

 この記事を読んで、少しでも「どきっ」と思い当たるところがある人は、職場での加害をしているはずです。そして、職場で加害をしている人は必ず家でも加害をしています。パートナーから「あなたと一緒にいるのが辛い」「もう一緒にいたくない」と言われたことがありませんか?
 
 加害者と言われて混乱したり腹が立ったりすることもあるかと思います。しかし、自分の加害性に目を向けて学ぶことで、変わることができます。変わることができれば、多くの人と良い関係を築くことができ、自分も傷つくことが減ります。

 仕事で学ぶことができる人は、それと同じように、家庭での問題についても学ぶことができます。ぜひ共に学び変わっていきましょう。

―[モラハラ夫の反省文]―

【えいなか】
DV・モラハラなどを行う「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。 ツイッター:えいなか

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