「10万円!?」夫から提示された生活費に妻は絶句。足りないと嘆く彼女に、夫が差し出したものは…
夫は、こんな人だった―?
周りに相談しても、誰も信じてくれない。子どもと一緒に夫の機嫌を伺う日々…。
最近、こんなモラハラ夫に悩む妻が増えている。
有能で高収入な男性ほど、他人を支配しようとする傾向が強い。
優衣(32)も、経営者の夫が突然マンションを買った日から、徐々に自由を失っていく。
広告代理店ウーマンから、高級マンションという“籠”で飼い殺される専業主婦へ。
彼女が夫から逃げ出せる日はくるのだろうか―?
◆これまでのあらすじ
妻・優衣に内緒で原宿にマンションを購入した夫・雄二。引っ越しにともない、子どもの預け先がなくなった優衣は退職を強いられた。慣れない原宿での新生活が始まったが…。
▶前回:年収900万の32歳妻が、退職に追い込まれた驚きの理由
朝8時、夫・雄二が起きる時間に合わせて、優衣は朝食の準備をしていた。
ダイニングテーブルに、近所のベーカリーで購入したクロワッサン、ケールのサラダとヨーグルト、コーヒーを並べる。
雄二は引っ越す以前、自分で朝食を適当にとって仕事に出ていた。だが、会社まで徒歩5分の場所に家を買った今、朝からゆっくり湯船に浸かり、しっかり朝食を食べる時間の余裕ができたのだ。
この家に移ってからは、家族3人で朝食を食べた後、夫を送り出すのが優衣にとっての朝のルーティンになっている。
コーヒーを飲みながら、雄二は機嫌良く優衣に話しかけた。
「原宿に引っ越して来てから、睡眠時間もちゃんと取れてるし、体調がすこぶるいいよ。ところで、このパンどこの?」
雄二の「どこの?」に反応して、優衣は顔を上げる。
「ブレッドワークスのだよ」
以前の彼なら、スーパーの袋詰め食パンでも気にしなかった。しかし、引っ越しを機に妻が退職し、加えてキッチン家電のいくつかをバルミューダに買い替えたことで、自宅での食事に一定のレベルを求めてくるようになってしまったのだ。
「リベイクした?」
「ううん、しなくても美味しいし、してないわ」
優衣の返事に、雄二は表情を曇らせる。
「せっかく美味しくパンが焼けるトースターなんだから、ちゃんと使ってよ」
雄二は呆れたように言う。
「ごめんねー、そうだよね。リベイクするからちょっと待ってて」
優衣はにこやかにパンを皿に取り、キッチンへ向かうが、本心は穏やかではなかった。
― 久我山にいた時なら、パンを焼くくらい自分でやってくれたのに。
家族の時間が増えたことは、純粋に嬉しい。とはいえ、「この家を買った俺に感謝しろ」とばかりに、家事育児の一切に手を出さなくなった夫。優衣の心の中には小さな不満が湧き上がっていた。
幼稚園が始まるまでの間、息子に習い事をさせたい優衣。夫の反応は…
「じゃ、行ってくるよ」
雄二はそう言いながら、sacaiの買ったばかりのスニーカーを履き、パンツのバックポケットにiPhoneを突っ込むと、家を出て行った。
パタンと玄関のドアが閉まるや、優衣は大きなため息をついた。
― 今日は何して過ごそう…。
原宿に引っ越して来てから、もう2週間が経つ。
最初の一週間は引っ越しの片付けや、役所での手続きなどであっという間に過ぎていった。それが終わると、時間を持て余すようになり、仕事をしていた時とは生活がガラッと変わってしまったのだ。
今は11月。息子の雄斗は幼稚園に入園できる来年の4月まで預けるところがない。
幼稚園が始まるまで、平日の日中は優衣と雄斗、2人きりの毎日が続くことになる。
「ママー、公園で遊びたい!」
食洗機に朝食の皿をセットしたところで、優衣の足元に雄斗がまとわりついてきた。
「よし!じゃあ、今日は近くの公園に行ってみようか」
優衣は、Googleマップで近所の公園を探し、雄斗と2人出かけてみることにした。
◆
22時。
「ただいまー」
会食を終えた雄二が帰宅した。
優衣が玄関に出迎えると、着ていた上着を脱いで渡し、そのままリビング向かう。上着を片付けた優衣がリビングに戻ると、雄二は珍しく自分で出したビールの缶を、プシュと音を立てて開けたところだった。
「おかえりなさい。昼間、雄斗と出かけたんだけど、青山通りからちょっと入ったところに公園を見つけたの」
雄斗を寝かしつけた後、優衣は帰宅した夫に1日の報告をするのが日課のようになっていた。
「へぇ、表参道にも公園があるんだな」
雄二は、優衣の方に向き直ることもせず、スマホを見ながら適当に相づちを打っている。
「うん。それに、私たちのほかにも公園で遊んでいた親子がいたの。雄斗も久しぶりに同じくらいの年の子と少し遊ぶことができて、嬉しそうだったわ」
雄斗にせがまれて公園に出かけたことで、優衣は初めて知り合いができた。
南青山に住んでいる、恵さんという雄斗の一つ下の男の子のママだ。
彼女から気さくに声をかけられ、子どもを遊ばせながら立ち話をするうちに仲良くなり、なんとなくLINEを交換した。
恵さんはモンクレールの薄手のダウンを羽織り、背が高く、上品で華のある人だ。
彼女によると、この辺りの未就園児は習い事やプリスクールに通う子が多いという。
近所の体操教室や英会話、スイミングスクールなど、雄斗ぐらいの子どもが通える習い事を一通り教えてもらうことができた。
この日の公園遊びは、優衣にとっても思いがけず大きな収穫になったのだ。
「雄斗にも習い事をさせたいな。友達もできるし、それに幼稚園入園まであと半年弱あるでしょ?」
優衣の話は耳に入っていないのか、雄二は動画を見ながらニヤニヤと笑っている。
「ねえ、聞いてる?」
「あぁ、聞いてるよ。それで、その人んちは何習ってんの?同じでいいんじゃない?」
雄二の興味なさそうな口ぶりに、優衣は思わずイラっとする。
「じゃあ明日、申し込むね。スイミングと体操」
そう言って優衣がこの話を終わりにしようとすると、雄二がいきなり顔を上げた。
「で、それいくら?」
生活費を入れて欲しい妻。夫が提案した金額は…
優衣がWEBで料金表を調べ、答える。
「スイミングが週に2回で2万円ちょっと。体操は週1で1万円くらいかな。引っ越す前はリトミックをやってから、体操はやらせたいな」
「ふーん。それならやれば?子どもの習い事も結構するんだな」
小さな子どもの習い事にたいして関心がないのは、以前も同じ。違うのは、月謝を聞いてきたことだろう。
そして、優衣もお金にまつわることは、とりあえず夫への相談なしに進められないのが以前とは違う。
それをわかっているから、夫の機嫌を損ねまいと、彼女はその場をグッと堪えた。
「ありがとう。さっきのは月謝で、初月は入会金とかもかかるから。あと、お願いがあるんだけど…」
習い事の費用もそうだが、優衣にはこれに乗じて相談したいことがもう1つあったのだ。
「あと、引っ越し前につい言いそびれちゃったんだけど…。私、もう仕事をしていないから、生活費をもらいたいの」
退職と引っ越しがほぼ同時期。引っ越しの準備やら、役所の手続きやらで、忙しかった優衣は、今の今まで退職後の生活費について相談をできずにいた。
それに、これまで完璧に財布が別々だった雄二と優衣。夫にお金の相談をすること自体、実は初めてなのだ。
「それは全然構わないよ」
雄二はあっさりと答えた。
だが、生活費の額にかなり認識の違いがあることを、彼女は思い知らされる。
「光熱費、携帯、住宅ローンとか固定費は全部払っとくから、雄斗の習い事代も入れて10万もあれば足りるでしょ?」
― え?今、10万って言った?
雄二の提示した金額に呆然となる。
夫いわく、食費を含め、優衣が使える生活費が10万ということらしい。
「10万って…1ヶ月分じゃないよね??」
恐る恐る尋ねると、雄二は悪びれた様子もなく言う。
「え、まさか足りないとか言うの?うちの会社の田崎の奥さんなんて、1ヶ月の食費1万5千円だってよ?」
雄二の会社の社員、田崎さんは食費を極限まで切り詰めるライフスタイルをYouTubeで公開し、まもなくフォロワー20万人になるという話は何度となく聞かされていた。
― またこの話か…。
優衣はうんざりした。
そもそも朝食にベーカリーのパンを所望し、食事のたびにビールやワインを飲み、卵は平飼い、肉は国産と、彼の希望すべて汲み取れば、10万すべてを食費に使ったとしても足りるか微妙なラインだ。
生活にかかる費用に無頓着な雄二は、お構い無しに続ける。
「ていうか、今までいくら使ってたの?優衣って自分の給料で食費と雄斗の習い事くらいは負担してくれてたけど、貯金もしてなかったの?」
興味本位で聞いているようにも見える、夫のその態度が腹立たしい。
「困った時のために、少しの貯金ぐらいあるわ」
仏頂面で答える優衣だが、ここで夫の機嫌を損ねるのも得策じゃない。そう思った彼女は気を取り直し、雄二が納得する理由を並べてみる。
「でも、ここ原宿だから、さすがに10万じゃ無理よ。スーパーだって紀ノ国屋か、ビオセボンみたいな高級スーパーばかりだし。それに私だってちょっと自分のものを買ったり、友達とお茶を飲んだりする余裕がないと、専業主婦を続けられないわ」
優衣は肩を落とし、申し訳なさそうに事情を説明する。
そして、うつむきながら雄二の表情をチラ見し、うまくいったはずだと心の中でほくそ笑んだ。
「そっか。そうだよな。ここ原宿だもんな…優衣の言うとおりだな。わかったよ」
優衣の言い分に納得したようだ。
すると、立ち上がってリビングから出て行くと、今度は何かを手に戻って来た。
「はい、これ」
渡されたのは1枚のカードだ。
「これスタバのカード。5千円くらいチャージ入ってるから、お茶する時に使えば?現金は10万で、足りなくなったら相談して。あ、その時は何を買ってどう足りないのかわかるように、必ずレシート全部取っておいて」
― 何これ…。ママ友とスタバなんて行かないし、こんなカードなんて足しにもならない!
想定外の提案にもはや反論する気力も出ず、この話し合いは終わってしまった。
― とりあえず、自分の貯金を崩さないようにやりくりしないと…。
そんなことをぼんやりと考えながらも、優衣は自分の自由になる現金が手元にないということの意味を、改めて思い知ったのだった。
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綺麗なものを見て気持ちを癒して。そう言って夫が持ち帰ったものを見た妻は、言葉を失った
羆キャスター(元気だよ!(off!)……♪デス!)
10/2 12:42
全く感情移入できんw