政治知識ゼロで「生活が不安」なライターが政治家とぶつかり稽古!? 見えてきた「新しい民主主義」という地平【和田靜香×小川淳也トークイベントレポート】

 新型コロナウイルスが大流行し、誰もが先の見えない不安を生きている現代。この危機に政府が講じたのは、アベノマスクやGoToといった愚策だった。我々が感じる不安と政治不信は、ほぼイコールの関係にある。

 そんな中、ライター・和田靜香さんの新刊『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)が発売された。50代、単身、フリーランス、お金なし。さらにコロナ禍でバイトをクビに……という状況に陥った和田さんが、その“不安”の正体を知るべく、国会議員の小川淳也さんに体当たりで話を聞いて問答した1冊である。

 9月上旬、この刊行を記念したトークイベントが東京・下北沢の本屋B&Bにて開催された。タイトルは「私は政治がわからない」。登壇者は和田さん、小川さん、そして同書に「並々ならぬ愛情を持っている」作家の星野智幸さんの3人だ。

 

和田靜香(わだ・しずか)

相撲・音楽ライター。1965年千葉県生まれ。著書に『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。

 

 

小川淳也(おがわ・じゅんや)

国会議員。1971年香川県生まれ。東京大学法学部卒。1994年自治省に入省し、2003年に民主党より衆議院議員選挙に初挑戦するも惜敗。2005年に初当選。現・立憲民主党所属の衆議院議員(5期/2021年7月現在)。

 

 

星野智幸(ほしの・ともゆき)

作家。1965年アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。2年半の新聞社勤務後、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』で文藝賞を受賞しデビュー。2011年『俺俺』で大江健三郎賞、2015年『夜は終わらない』で読売文学賞、2018年『焔』で谷崎潤一郎賞。近著に『呪文』『だまされ屋さん』『植物忌』などがある。

 

 

 政治知識はゼロだけど、言いしれぬ“不安”にさいなまれていた和田さん。「私は政治がわからない」とは、小川さんに話を聞きに行った著者の偽らざる気持ちである。つまり、彼女は私たちでもあるのだ。そんな和田さんのつたない問いかけに、小川さんは熱く回答しまくった。

何がわからないかもわからなかった


和田靜香さん(以下、和田):まずは、私からこの本の説明をさせていただきます。ずっとライターをしながら生活が大変でいろんなアルバイトをしてきたんですが、いつも時給が最低賃金だったので、このタイトルになりました。とても生活が不安で、どうしたらいいかまったくわからないときに小川さんのところへいきなり行って、話をいろいろ聞いたり問答を重ねたりして、その間の悩みや苦しみや「ああ、わかんない!」ということを全部、この本に書いたんです。

小川淳也さん(以下、小川):皆さま、こんばんは。小川淳也と申します。ある日突然、和田さんが「本を作りたい」とおっしゃって。じゃあ、よっぽど立派なプランとかアイデアがあるのかなと思ったら、何にもなくて。

一同:(笑)

小川:でも、本を作りたいっていう情熱だけはひしひし感じて。和田さんが真剣に取り組んでくださるのであれば、私もそれに応えたい。もしかしたら新しい世界観を生める可能性があるかなと思って始まったんですが、まあ本当に大変な“デスマッチ”が1年近く続きました。

星野智幸さん(以下、星野):この本の最初の取材で和田さんが小川さんに会ったとき、「何がわからないかもわからないです」が第一声だったと、この本に書いてありますよね。普通、そんな話だったら断っちゃう政治家が大半だと思うんです。少なくとも、世の人たちは政治家ってそういうものだと思っています。

和田:私、「自分が何もわかっていない」ということさえわかってなかったんですよ。「じゃあ、なんで行ったの?」ってことになるんだけど、とにかく不安で「この不安をぶつけないともうダメ」っていう衝動だけ。ただただ苦しいってだけでいきなり会いに行ってるという(笑)。

小川:だから、カウンセリングに来られたみたいな感じですよね。

和田:そうそう! 本当、小川さんがカウンセラーみたいな(笑)。

小川:1回目に来られたときは本当に手ぶらで、まったくノープランなので。さすがに私もあのときは驚きました。「ああしたいです」とか「こうしたいんだけど、どうすればいい?」ということかと思ったら、「何もわからないんです」。で、じーっと座ってるんです。

和田:ハハハ!

小川:これはさすがにどうしたもんかなと。苦し紛れに「お願いだからこれだけ読んでください」と2、3冊紹介して、そこで「疑問に思ったり、もっと聞いてみたいと思ったりしたことがあったら書き出してください」と伝えて、一度お帰りいただいて。それが1回目でした。
 でもその後、和田さんは何の知識もないしまだ本気で考えたこともない、だけどとにかく不安でしょうがなくて迷っている。もしかしたら、多くの方がそうなんじゃないかと。もし、その不安に対応できるとしたら私は政治家として本望だ、それが私のやりたいことだ……っていう気付きにたどり着いたんです。和田さんは悩んだり困ったりしている国民の右、代表だと。いずれ、そういう対話を私はしなきゃいけない。ならば、まず私は和田さんに稽古をつけてもらおう……っていう気持ちでした。

星野:で、和田さんが最初に送った質問は、焦点がぼやけたまとまりのないものだったと。でも、八代田さん(小川さんの秘書の八代田京子さん)が、「和田さんの不安に対して小川がビジョンを示せなかったら、総理大臣にはなれません」というメールをくれたという。

和田:そのメールをもらって「これでいいんだ」とハッとしたんですよね。私の不安でいいんだなと思ったんです。

星野:僕が印象に残ってるのは、統計不正の箇所です。統計について和田さんがものすごく調べて、資料を作成して、それを送ったら小川さんがすごく褒めてくれた。そこから小川さんの反応が変わったという出来事が印象的でした。

小川:あれは本当にすごいと思ったんですよ。統計について国会で質疑するとき、僕らも相当調べるんです。そもそもが専門的な話なのですが、それをこれだけ追いかけ、すごいスピードで整理して私にぶつけてきたということは、和田さんの努力は本物だなと。

星野:そういうやり取りの中から、和田さんに答えることが社会に対して答えることとイコールだと感じるようになった?

小川:そうなんです。これは私がいずれやらなきゃいけないことだし、そもそもやりたいことだったはずだ。いろんな偶然や出会いを経て、和田靜香さんという人が右、代表として私の目の前にいる。そして、この人の疑問は多くの人の疑問である。この人に語るということは、多くの国民に語ることだ。そんなことを感じて、一生懸命、向き合わせていただいた時間でした。

星野:小川さんのその思いは、和田さんも感じたんですよね。

和田:そうですね。もちろん最初からガッチリやってくださっているんですけど、だんだん場が熱くなるっていうか。それをすごく感じたから、盛り上がれば盛り上がるほど、「もっとやらなきゃいけない」と私は思ったんです。例えば、財政の話をするにしても、最初は「財政」という言葉をググることから始まりました。かと言って、いきなり小川さんに「財政ってなんですか?」と聞くわけにはいかないじゃないですか(笑)。

小川:いや、最初はそれに近かったですよ(笑)。

和田:それに近かった(笑)。

小川:でも、途中から僕はものすごい意義を感じていましたから。ある時点から「ここは正解を教える先生と、正解を教えてもらう生徒の場じゃない」と思うようになったんです。そもそも正解なんてなくて、考える材料だけがあるんです。私はプロとして30年間考え続け、調べ続けてきました。和田さんはそうじゃなくて、悩んだり壁にぶつかったり切ない思いをしたり、いろんな人生を重ねてきています。両者がまともにぶつかったとき、どういう観点が生まれるのか。そういう意味で、「正解を教える先生」と「正解を教えてもらう生徒」じゃなく、同じ問題を一緒に考え、ときにぶつかりあう“デスマッチ”の場だと思ったんです。

和田:小川さんが「ここは取っ組み合いでいっしょに考える場だ」と言ってくれたとき、めっちゃ嬉しくて、まさに私もそれがやりたいことだなって思いました。

「思う」ライターと「考える」政治家のすれ違い


星野:この本でも、財政(3章)の辺りまでは、和田さんが教えを請うている感じです。でも、特に住宅政策(3章)に入った辺りからは、小川さんが30年間考えてきた政策の言葉に対して、和田さんが渦中にいる者としての言葉をぶつけている。その政策が正しい、間違ってる、じゃなく、現場の人たちがどんなに絶望的な気持ちでいるかを一生懸命伝えようとしている。そういう場面が起こるんです。それで、小川さんは……。

小川:ある意味、私が白旗をあげるんです。和田さんのストレートな問いかけと熱意、その背景にある本物の不安と不信。専門家を自負してきた私が至らなかった発想であり、私は現実を正しく理解しきれていなかった。それで白旗をあげる瞬間があるんです。

星野:わかっていないことを認める政治家なんて、大半の人は見たことがないと思うんです。そこが今の政治の問題じゃないかと思うのですが、小川さんがそういう反応を素直にとれたのはどうしてなんですか?

小川:それは私のポリシーです。「本当に悪かったな」「想像が至らなかったな」「思いが不十分だったな」と思ったときは、本気で謝りたい。和田さんが住宅の確保にどれだけ苦労し、切ない思いをしてきたか。それは、少なからず日本の政策と関わっているんですが、私はその溝を理解しきれていなかった。だから最初、和田さんが言ってることがわからないわけですね。でも、私の真面目なところは、帰宅してからこの問題を改めて考えてるんです。なぜ、この溝が埋まらなかったのか。
「思う」と「考える」には違いがあり、「思う」はどちらかと言うと自分の感情に支配された状態です。それはそれで重要な意味のあるメッセージなんですが、自分の感情に支配されたまま揺れ動くのが「思う」状態だとすると、「考える」は調べることとほぼ同義です。調べて、事実に行き当たり、事実を突き詰め、分析して……っていう、ちょっと知的な作業が必須なんですね。それで言うと私は、今の住宅政策はどうなっているか、どういう形で税金を使ってるかをもう一度調べました。すると、確かにそこには乖離があった。思いが至ってない人間が応対してたわけで、反応が不十分だった。だからそのことを和田さんに謝りたいし、きちんと説明をしてお返したい……っていう、自然な頭と心の動きなんですよね。

星野:和田さんは、小川さんがそう言ってくださったことで、自分の思いが政治家に通じたという手応えを感じたんですか?

和田:正直、手応えとか感じてないんです(笑)。わかってくれて嬉しいなあっていう。ただ素直に、「小川さんはそんなに考えてくれたんだ」っていう。

星野:有権者と政治家が政治を作るまさにその瞬間を目の当たりにしたシーンでした。この本が作られた意義、さらに類書がないと感じるのは、その過程が生々しく記されているからなんです。ここは「誰でも政治に参加できるんだ」ということにつながっていく重要な過程だと思います。
 後半のクライマックスにあたる、非正規で女性が働くことに関しても、和田さんは小川さんに思いをぶつけにいった。ここでも、和田さんは小川さんの政策の話に「何か違う」とモヤモヤを感じ、そして小川さんに手紙を書いたんですよね。

和田:ここは本当に悩みました。女性に限らず非正規雇用の話をしたとき、小川さんは「非正規と正規の壁を打ち壊していけば、女性の大変な労働の現状も変わっていくよ」と政策の話をしてくれるんですけど、そうじゃなくて、非正規やバイトで働いてる人たちに対しての言葉が本当は聞きたかったんです。だけど、その場では聞けなかったんですよね。なぜ、自分は聞けなかったのか。
 きっと、小川さんに「そんなのわかんないよ」と言われたらすごいショックだと思ったんですよね。そこはまだ小川さんを信じ切れてないところで申し訳なかったんですけど。 でも、帰宅してからもずっとモヤモヤしていて。それで星野さんにメールをして、「小川さんにこういうことを聞いたらおかしいかな?」って聞いたら、星野さんが「いや、絶対聞いたほうがいいよ。すごく大切なことだから」って。「政治家が市民に寄り添って言葉をかけてくれることが、政治に一番近づくことだ」「だからこそ、小川さんに聞いたほうがいいよ」って星野さんが言ってくれて、「そうか、じゃあ聞こう!」と思って。

小川:あのとき聞かれたのは、直接的には政策のことだと思ったので、政策的なやり取りにどうしてもなってしまったんですよね。限られた時間だし、和田さんに喜んでほしいということ以前に自分自身の思いもあるので、先に政策の話を片付けて、その上で一番大事な話をしようじゃないかと思っていたんです。
「ささやかな人生」という言い方をしていいのかどうかわかりませんが、その尊さとか、愛しさとか、切なさとか、それが政治のテーマにならないはずがないんですよ。それこそが政治なんですよね。もちろん、私にとっても他人事ではありません。それは、今もパーマ屋の店先に立っている私の母であり、戦争から帰って行商をして4人の子どもを育て上げた私の祖父でもあり……。父は戦後すぐの生まれですけど、カレーライスにお肉が入ってたことは1度もなくて、お揚げしか入ってないんです。魚肉ソーセージが1本あると、兄弟4人で分けて食べてね。小さい頃は、魚肉ソーセージ1本まるかじりすることが夢だったんですよね。まさにそういうことの積み重ねで、世の中はできてるわけでしょう。

星野:小川さんが政治をしているのは、そこが原点としてある。

和田:やっぱり、政策の話をしているだけではそこが見えてこないというか、伝わってこない。

星野:そうですね。和田さんは「思う」について話したかったんだけど、そこで「考える」ほうの言葉が返ってくると、すれ違っちゃうんでしょうね。

和田:そうそう。私はあくまでも素人の「思う」人で、小川さんはプロとして「考える」人で、一見するとうまく話は進んでいるようなんだけど、実は合致してるようでいて合致してない部分っていうのがそれまではあったと思うんですね。でも、この話ができたことで、すごく合致したような気がしました。

今までの民主主義は「共感」が置き去りにされていた


星野:これが、この本のもう一つ大きな価値だと思うんですね。和田さん流の民主主義というのを僕は感じたんですけども。この本を作る過程で和田さんは八代田さんや、僕や、金井真紀さんというライターの友人とか、いろんな人たちに弱音を吐きまくりながら少しずつ前に進んで、本が出来上がっていって。だから、これは和田さんと小川さんだけの対話だけじゃなくて、実はその外側で和田さんと一緒に考えてきた人たちも関わってるんですよね。そういう小さなコミュニティの民主主義っていうのが和田さんによってできていたと。

和田:ああ、そうかもしれない。

星野:この本の外側にはそれがある。和田さん流の民主主義のあり方は、「考える」が主体じゃないんですよね。政策だけが主体ではなくて、「共感」がベースになっている。だから、和田さんがそういう話をバーってぶちまけるときは、あるテーマを議論するのではなく、「何が苦しい」だとか「こういうことで希望が見えた」とか、そういう話をして周りを巻き込んでいく。そうすると、こっちは巻き込まれていること自体が楽しくなってくるというか。自分のテンションも上がるし、「それ、ちょっといいじゃないか」みたいな気持ちにもなれる。今までの民主主義が意見の違う人と議論しながら作っていくやり方だとした場合、それは「考える」ことが主体になります。そうすると、現場の「共感」がどこかで抜け落ちちゃうというか、置き去りにされる形だったと思うんですよ。でも、和田さんはそれをも盛り込んだ形で小川さんにぶつけ、周りの人も巻き込んで民主主義を作っていったのではないかと。これは、これからの民主主義にとってものすごい必要なことで、この苦しい時代における可能性を示したと思うんですよね。

和田:そういうふうに言ってもらうと、民主主義ってすごく楽しかったですね。なんて楽しいんだろうって。小川さんと私の話は、もちろんその場も楽しくて勉強にもなるんですけど、帰ってきたら「今日、小川さんはこんなこと言ってたんだよ」みたいにみんなに伝えるわけですよ。すると、小川さんが言った“1”のことを、他の人が“3”に膨らませてくれたりするわけですよね。

小川:その巻き込む力はすごいし、最終的には和田さんの人徳なんでしょうねえ。例えるなら、洗濯機の中でガンガン回されている大きな洗濯物みたいな(笑)。巻き込まれて、巻き込んで、回される。

星野:だから結局、小川さんも巻き込まれたんだと思うんですよね。要するに、専門性がなきゃ政治や民主主義に関われない、語れない、そんなわけないということですよね。

小川:そうそう、そこですよね。僕、今回で一番嬉しかったのは、和田さんが「言いしれぬ不安からだんだん解放されてきたんです」とおっしゃったときなんです。「言い知れぬ不安」から始まったやり取りだったけど、それがだんだん薄らいできたという言葉に、とても救われて。つまり、病気の診断と似ていると思うんです。いろんな症状が出るけど「何だかわからない」という状態が一番不安を感じる。でも検査した結果、「原因はここにあります。治療法はこうです」というのがわかった瞬間、気が楽になるというか。
 実は、日本社会も同じ構造疾患を抱えていて、構造的な問題を背景とした病魔に襲われてるわけです。そんな日本列島でみんな生きてるわけだけど、それを自覚したり、理解している人はまだまだ少ない。和田さんの不安が薄らいだのは、理解したことによる不安の解消なんですね。

星野:和田さんが「私の不安は日本の不安」と言ってるのは、まさにそれですよね。

和田:本当、そうでした。小川さんと話してたら「私の不安って日本の不安そのものなんだ」ということがだんだんわかって。

小川:この日本社会が登らなきゃいけない山は、もう目の前に広がってるんです。もう、この山は登るしかない。でも、まだその山には霞(かすみ)がかかっていて、登るべきなのか、どうやって登ればいいのか、登った先にどういった社会が広がっているのか? それがまったく見えてないわけです。でも、それを理解し、登山の準備をして「さあ、登るぞ」っていう大変な作業を、和田さんは日本国民の右、代表になって先陣切ってやってくださったと思ってます。
 もう一つ印象に残ってるのは、「これって和田靜香の成長物語だな」と僕は思っていたんです。そしたら、後援会でお世話になっている方から「いや、これは小川さんも成長させてもらってますよ」と言われて、ちょっとハッとしたときがあって。だから、実は僕が稽古をつけてもらっていたんですよ。そして、稽古をしたらいずれは本番に乗り出さなきゃいけない。私の立場からすると、「稽古つけてもらってああよかった」では済みませんから。

星野:本番っていうのは、何を意味するんですか?

小川:この作業は思考実験の場でもありました。今、日本社会がどういう状態なのか、それはなぜなのか、どうすればいいのか、どうできる可能性があるのか? 政治家としてプロである僕側と、よくわからないけど一生懸命な右、国民代表の二者による思考実験だったわけです。でもここからは、それを行動実践に移さなきゃいけない。私もまだ正解を持ってないんです。それを、和田さんと向き合って悩んてきたように、多くの国民のみなさんと対話して一緒に悩みながら結論を生み出し、方向性を取って決断する。「決断する」っていうことは、他のオプションを「捨てる」ということです。一つひとつの結論を出し、山を登る訓練はしてきた。次は、本当に登り始めなきゃならない。登りきったところにどんな地平が広がっているのか。次の世界に乗り出さなきゃいけないですよね。

星野:それはもう、登り始めたら……。

小川:そう、大きな失敗は許されないですよね。軌道修正はありますけど。

星野:もう一度引き返してイチからというわけにはいかないから。

小川:相当、慎重に。しかしときに大胆に。一身に責任を負う覚悟も必要だし、もちろん能力も問われるし。和田さんにせっかくいい稽古つけてもらったので、それを国民のみなさんとやっていかなきゃいけない。それは僕の問題であると同時に、日本国民の問題でもありますから。投票して、国民自身が次の時代を選び取っていく。そういう段階に、少しずつですけど進まなきゃいけないですね。ここで稽古をつけていただいて、和田さんに「親方、ありがとうございます」って言いながら(笑)。

和田:親方(笑)。

「俺について来い!」タイプのリーダーはもういらない


 最後に、zoomでイベントに参加した視聴者の疑問に、登壇者が答える質問コーナーが設けられた。

星野:やっぱり、小川さんに政策について聞きたい人がいっぱいいるんですけど、今日は政策に関しては控えましょう。

和田:政策については本に書いてあります。だってこれ、基本的に小川さんの政策集ですよね。

小川:う~ん。まあ、入ってはいるね。(和田さんに)納得してもらってない部分もあるけど。

和田:うん。なんか私にいろんなツイートが飛んでくるんですけど、別にこれは小川さんが100%正しいと言ってる本でもないし、決して「小川さんの政策は素晴らしい!」と褒め称える本でもなくて。これを読んで、じゃあ自分はどう思うかっていうことを考えてもらう入り口の本なんです。まずは読んでいただいて、「この政策はいい」とか「悪い」とか、「この政策の根拠ってどういうところなんだろう?」ってことを考えてほしくて出した本ですってリプを返しています。正しいか正しくないかは別に求めているものではないんです。

小川:この本が考えるきっかけになってくれると嬉しいし、もっと言うと「考える」ってどういうことかを追体験していただくというか。

和田:そうですね。私のような知識ゼロの人が考えるようになった軌跡が書いてありますから。どうしたら考えていけるようになるか、それも一緒に感じてほしいですね。そして、もし政治家と話そうと思えば、意外と話せる機会はあるんですよね。小川さんは青空集会をやってらしたし、これから衆院選挙があるから、街宣演説している政治家にも話しかけてみたっていいんですよね?

小川:全然いいです。うれしいと思いますよ、うん。
 私の場合、地域の公民館で誰でも来られる形で対話を重ねてきたし、街頭演説をやってると「会うために来ました」とおっしゃってくださる方もいます。新型コロナの影響でそれができなくなった後は、「どなたでも結構です、オンライン対話しませんか」と募集をして、たくさんの人数にご参加いただいています。ただ、すべての議員や政治家がそういう活動をやってるかというと、ちょっとそれはわからないですね。

星野:そこに対する不安が、まだ有権者にはありますよね。

和田:星野さんは小川さんに対して、何かありますか?

星野:さっきも言ったような、和田さん流の民主主義がいいですね。現場の気持ちをないがしろにしない。もし社会の声を知らないんだったら、知ることのできる場所に出て行くという民主主義のあり方をずっと実践していただければなと思います。

小川:そうですね。まだ今の政治のやり方は、昭和の時代を支えてきた政治のものとほとんど一緒なんですよ。時代はこれだけ変わっているのに、政治だけがほぼ昭和のまんまですよね。今の時代に即したものに、政治を急速にアップグレードしなきゃいけない。そのとき、政治家が頑張るのは当たり前なのですが、有権者が新しい時代の政治、政治家像をリアルにイメージできるかどうかがカギになると思います。私自身、「やりきったな」っていうところまでもうひと踏ん張りだと思っていて、この本に関われたことですごく大きな節目をいただいたので、ここからは実践のフェーズだと感じています。

和田:小川さんにお願いしたいことが一つあるとしたら、どうかあきらめずに一緒に歩いてください。私にもしてくれたように、ずっとこれをやってほしいなということです。

小川:はい。

和田:これからの新しいリーダーって、「よし、俺について来い!」タイプじゃなくて、「一緒にみんなで歩いていく」人だと思うんですよね。リーダーというか、みんなと一緒にやっていく人こそが次の政治のトップで、求められる像だと思います。絶対、そう思うんですよ。

  • 9/29 13:00
  • サイゾー

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