二子玉川ライズがオープンし、大規模な再開発が完了! 二子玉川駅周辺はどうなる?

 

 これまで東京都内を中心に、都市計画決定された24個の駅を見てきました。25駅目の今回は、都会と自然が調和したバランスの良い街「二子玉川」を歩いてきました。

 世田谷区の南西に位置し、南には多摩川が流れ、程よく自然も感じられる洗練した街、二子玉川駅周辺は2002年に「二子玉川東第二地区」の再開発が都市計画決定され、15年に再開発が完了し、複合施設「二子玉川ライズ」がグランドオープンしました。

 駅前が整備され、ますます住みやすい街へと生まれ変わった二子玉川駅周辺ですが、毎年話題になるSUUMOの「住みたい街ランキング2021関東」では、20年20位以内だった二子玉川は、21年では24位とランキングが下がってしまいました。

 それは、19年10月の台風19号による多摩川の氾濫で、二子玉川駅周辺で起こった浸水被害が影響しているのだと思います。

 しかし、人気女性誌「VERY」(光文社)が1998年頃から二子玉川の「おしゃれな主婦」を「ニコタマダム」と呼び全国区の認知度となり、近年はすっかり「おしゃれな街」というイメージが定着しています。

 そして、2018年5月に地域密着系都市型エンターテインメント番組『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)で「二子玉川」が特集されました。番組では、最先端タウンにもかかわらず、すぐそばに自然があるリフレッシュできる街として取り上げられ話題となりました。

 実際に二子玉川を歩いてみると、洗練された商業地が出来上がっていました。週末ということもあり、子供連れの家族がたくさんいました。ただ、すでに大規模な開発や工事はなく、完成された街という印象で、今後の東急グループの街づくりに期待したいです。

 この記事では、不動産を購入する観点から、さらに二子玉川駅周辺の特徴や将来性、利便性を極力定量的に分析・詳細に解説していきます。二子玉川駅周辺の不動産購入を検討している方は、最後まで読み、参考にしてください。

 

 

 まず、近隣の溝の口駅や三軒茶屋駅と二子玉川駅を年収別にその割合で比較してみました。二子玉川駅は年収1,000万以上の方が住む割合が溝の口駅よりも多いことがわかります。三軒茶屋駅よりは低いですが、やはり、ゆとりある世帯が好む場所なのだということがわかります。

●1-1.行楽地から商業タウンそして新たな街の創造へ

 時代の変化と共に姿を変えてきた二子玉川。二子玉川駅周辺といえば、1907年に玉川電気鉄道(玉電)が開通してから、観光鮎漁や鵜飼など、 川遊びの店が軒を連ね始め行楽地として賑わっていきました。

 また、玉川遊園地やプール、テニスコートなどが建設され、花火大会が開催されました。

 69年には、日本初の郊外型デパート「玉川高島屋S・C」が誕生し、多くの人達がショッピングに訪れる商業タウンとして発展。現在もその人気は高く魅力も増しています。

 例えば、2004年には「玉川高島屋S・C」の裏路地にかつてあった花町を感じさせる飲食街「柳小路」もオープン。15年は東急グループ主導の再開発でできた「二子玉川ライズ」、17年には「キュープラザ二子玉川」が開業しました。

 また、「玉川高島屋S・C」は19年に開業50年を迎え大規模リニューアルを実施し、約100店が新規・改装オープンしました。周辺では、若い世帯が増えていることから、30~40代の取り込みをねらった食品関連のショップが特に充実しています。

【参照】

https://www.rise.sc/whatsrise/history/

https://www.asahi.com/articles/ASM8P3F5BM8PULFA002.html

●1-2.駅のすぐ側には自然を感じられる憩いのスポットも!

 15年、二子玉川駅から二子玉川公園までをつなぐ全長約1kmの歩行者専用道路「リボンストリート」が開通。公園までおしゃれなお店でショッピングを楽しみながらお散歩を満喫することができます。

 公園内には、日本一景色が良いと噂のスターバックスコーヒーもあり、その隣にある階段から見る多摩川の風景はとても気持ちよく、住民の憩いの場になっています。

 21年2月には「二子玉川蔦屋家電シェアラウンジ」がオープンし、フリードリンクと、ナッツやチョコなどのフードを30分605円で楽しめる有料カフェラウンジがあり、最新テクノロジーと本のある空間で上質な時間を過ごすこともできます。

 二子玉川駅の目の前には多摩川河川敷があり、バーベキューをしたり、夏には花火大会などが開催され多くの人が訪れます。

●1-3.渋谷まで直通で約18分!2路線が乗り入れ

 二子玉川駅は東急田園都市線と東急大井町線の2路線が乗り入れているので、目的地に合わせて使い分けられ便利です。写真は二子玉川駅の改札口付近で、親子連れが多く、沢山の人でにぎわっていました。

 東急田園都市線は渋谷駅まで乗り換えなしで約18分のため、利用者が非常に多く東急電鉄では分散乗車とオフピーク通勤・通学に協力を呼び掛けています。

 東急大井町線は自由が丘駅や溝の口駅に直通で行くことができるので、買い物の幅も広がり使いやすい路線です。

 

 ゆとりあるファミリー層に人気の二子玉川駅周辺の治安は良い印象です。実際に治安は良いのか、二子玉川駅を管轄としている玉川警察署が発表した『過去5年間の刑法犯の推移』のデータを確認します。

 過去5年間で発生した犯罪件数は減少傾向でした。2017年に比べると20年は半数に迫る勢いで刑法犯数が減少しています。周辺はファミリー層の多い落ち着いた住宅街なので、比較的安心して暮らせるエリアだと個人的に思います。

3.再開発完了から10周年を迎え新たな街づくりへ

 2021年秋には「二子玉川ライズ」内に新施設がオープンし、この民間複合再開発は都内最大級の規模となりました。

 駅から二子玉川公園へと続く街のなかに商業施設、オフィス、そして住宅街区等を美しく配置し、水と緑、光にあふれた街づくりを掲げ、都会にいながらも移りゆく自然を感じながら暮らすことが可能です。

 さらに、21年で竣工第一期から10周年 を迎える「二子玉川ライズ」は、次の10年に向け、新しい「コミュニティ・プラットフォーム」として支持され続ける施設づくりを目指していくと発表しています。

 21年秋には「遊ぶ!学ぶ!楽しむ!新施設」がオープン予定です。これまでにはなかった新しいタイプの屋内施設が誕生します。さらに、発信力があり希少性の高いブランドを誘致するなどの計画もあるようです。今後の変化も楽しみな街です。

 新たな開発が行われていなかったので、しばらくはライズを中心にテナント誘致をしつつ、施設内の回遊性を上げる作戦なのかもしれません。

 今まで見てきたように、大規模な開発が一段落し、落ち着いていた二子玉川駅周辺は暮らしやすい環境が整っています。

 しかし、不動産購入を検討するには、将来的な価値を見込めるのか見極める必要があります。そこで、それぞれのデータをもとに詳しく確認していきます。

●4-1.二子玉川駅周辺の世帯数の比較

 

 上記のグラフは「二子玉川駅」と「溝の口駅」、「三軒茶屋駅」の世帯数の比較です。

 「三軒茶屋駅」は単身世帯が多いのに比べ「二子玉川駅」は2人以上、家族世帯がどの駅よりも多い傾向があります。

 買い物や外食も便利で、駅から離れると閑静な住宅街、さらに近くには多摩川があるバランスの良い環境がファミリー層に好まれているようです。

●4-2.二子玉川駅周辺の人口予測

 

4-2-1.各駅徒歩15分圏内の人口推計のデータ

 2050年までの人口の増加数は、二子玉川駅は3,090人増加予想となっています。一方三軒茶屋駅周辺の人口は減少予想であり、今後は駅個別で不動産の選別を行っていく必要がありそうです。

4-2-2.過去10年間の世田谷区全体の人口推移

 上記グラフは世田谷区「町丁別世帯数および人口表」をグラフにしたものです。2020年までは順調に上昇していましたが、21年には新型コロナの影響からか、減少しています。

●4-3.交通機関の乗車数から見る利便性

 

 東京都交通局が発表している『各駅の乗車人員』のデータを基に、「二子玉川駅」の乗降者数の推移を考察していきます。

 二子玉川駅は、再開発が完了した15年から乗降者数は大きく増加しています。また、09年田園都市線複々線化により大井町線が溝の口駅まで乗り入れ開始したことにより、溝の口駅の乗降者数が一気に上昇しその後も順調に増加しています。

●4-4.二子玉川駅周辺の土地の価値の推移

 二子玉川駅周辺の土地の価格を確認していきます。商業地域に区分されている『世田谷5-20(二子玉川駅)』と、住宅地に区分されている『世田谷区-38(世田谷区玉川4-27-10)』の地域と近隣の場所を含めた3地点のデータを基に、2011年から21年までの価格をグラフにまとめたものです。

4-4-1.商業地に区分されている『世田谷5-20(二子玉川駅)』について

 

 再開発が完了した15年から価格が徐々に上昇しています。21年と11年では52万円/平方メートル(約58%)も増加しています。

4-4-2.住宅地に区分されている『世田谷区-38(世田谷区玉川4-27-10)』について

 

 

 こちらも再開発完了の15年から価格は上昇し、21年と11年で18万円/平方メートル(約35%)増加していました。やはり再開発により上質な環境が整ったことで、二子玉川駅周辺の価値が向上したことがわかります。

●4-5.二子玉川の中古マンションの価格推移

 最後に、ライフルホームズが発表している『住まいのインデックス』のデータを基に、実際の二子玉川駅周辺の中古マンションの価格推移を確認します。

 まずは、下記のグラフをご覧ください。こちらは、2010年からの二子玉川駅周辺の中古マンションの価格をまとめたものです。

 上記のグラフによると、現在二子玉川駅周辺の中古マンションの価格は上昇傾向です。20年に発生した新型コロナウィルスの影響を受け多少下落しましたが持ち直しているようです。

 直近の3年間で6.98%程度上昇しています。これは東京都の変動の8.98%に比べてやや低めの水準になっています。その他一戸建てや土地の価格も上昇傾向にあり、当面は安定した価格を保つのではないかと予想されます。

 ここから、不動産を購入する上で欠かせない、地盤や災害の影響について解説していきます。二子玉川駅周辺はどのエリアが影響を受けやすいのか、そもそも災害の危険度が高いエリアなのかを見ていきます。

●5-1. 地震情報サイト『JIS』が発表した『東京都世田谷区・地域別危険度』

 

 

 二子玉川駅周辺に位置する玉川1丁目~4丁目までを見て見ると危険度が最も低いのは1丁目ですが、どの地盤も形成された年代が新しく軟弱な地盤となっています。

 ただ、再開発により耐震補強が進んだ1丁目~3丁目は4丁目と比較して、危険度は低く出ているようです。

●5-2.世田谷区作成の「水害ハザードマップ」や対策

 

 世田谷区では、浸水の予想される区域や浸水の程度、避難所等の情報を記載した世田谷区洪水ハザードマップ(多摩川版、全区版)を作成し、配布しています。

 

 19年の台風19号の浸水被害が記憶に新しい二子玉川駅周辺ですが、玉川1丁目には浸水の深さが10~20mの場所もあり、川沿いの河岸段丘付近は多摩川氾濫の度に削られてできた坂で、ハザードマップを見ると分かる通り、水害被害にあう可能性が高く、本当に気を付けてほしい地域です。

 個人的には、この付近は地盤が緩い傾向があり、将来の災害やその後の手間を考えると、購入は避けた方が良いと思っています。できれば、駅から少し離れ、不便かもしれませんが、瀬田付近の物件をチェックしてみるのをおすすめします。

 

 このような事情から、国土交通省は被害の軽減に向けた治水対策を推進しています。

 具体的には、19年と同等の台風などによる洪水が発生しても、洪水を安全に流下させ多摩川からの氾濫を防止することが可能な二子玉川地区の堤防整備を行っています。

 

 大規模再開発が完了し、非常にバランスの取れた上質な街「二子玉川」。これからはそのレベルをさらに洗練したものとして昇華していくことでしょう。

 自然と調和したこの街はファミリー層から人気があり30~40代が増加傾向だそうです。子育て世代には暮らしやすい街だということがわかります。

 しかし、個人的には地球温暖化による気候変動で自然災害が気になる場所でもあります。不動産を購入する際は、しっかりとハザードマップや建物の耐震基準、設備などを確認することが大切になります。

2021/9/29 7:00

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