「疲れてる」日常の漫画がSNSで反響、作者は会社員との二足の草鞋

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 いま、コロナ禍で多くの人が疲れを感じているかもしれない。そんななか、日本でおそらく唯一、「ああ…自分疲れてるなと思う瞬間」をテーマにしている漫画家がいる。『ぼくらはみんな疲れてる』(辰巳出版)の著者であるたくまる氏だ。

 インスタグラムにたくまる氏とその家族(妻のさっちゃん、娘のチェリー)の日常的な出来事を投稿し続けて約2年。だれもが共感できるエピソードや展開のリズムにハマる人が続出し、現在フォロワー数は8.6万人。そんな人気漫画家でありながら、実は一般企業で働く会社員でもあるという。どのように両立しているのか。そして、漫画を描く時に意識していることは何なのか話を聞いた。

◆SNSにたまたま投稿した「疲れてる瞬間」に大反響

 インスタグラムのアカウント(たくまるさんちは疲れてる@takumaru_illust)に「ああ…自分疲れてるなと思う瞬間」の“あるあるネタ”を週に1本投稿しているたくまる氏だが、2018年5月にアカウントを開設した際には、まだこのテーマに絞っていたわけではなかった。

「いろんなジャンルのあるあるネタを投稿していました。インスタグラムで自分の投稿を多くの人に見てもらうためにはどうしたら良いか、他の人気アカウントの共通点を探っていたところ、多くの人に“共感してもらえる内容”が大事だと気づいたんです」(たくまる氏、以下同)

 すると開始3か月後の2018年8月には2万フォロワーまで増加、さらに9月には3万フォロワーを達成することができた。

「ある時、『ああ…自分疲れてるなと思う瞬間』というタイトルでいつものようにあるあるネタを投稿したら2万いいねがついたんです。そこで、あるあるネタの中でも特に疲れてる話は共感できるのかなと思い、以降はそのテーマに絞って投稿するようになりました」

◆週1本の投稿ペースでネタのストックは3年分以上

 とはいえ、さすがにたくまる氏自身の実体験だけで投稿し続けるには限界があった。そこで、フォロワーから「ああ…自分疲れてるなと思う瞬間」を募集することに。

「不定期でインスタグラムの質問機能を使って募集をするのですが、1回の募集で1,000件以上のネタが集まります。その中からシンプルでわかりやすいものや、インパクトが強いものを選んで漫画にしています」

 多くのフォロワーからの協力のおかげで、なんと投稿ネタのストックは3年分以上もあるという。

◆「稼げるアカウント」にするために

 今や8.6万フォロワーまで成長したが、たくまる氏は「稼げるアカウント」にするために意識していることがある。

「自分の漫画を読んでもらいたいという気持ちだけでなく、時間と労力をかけて漫画制作をするからには稼げるアカウントにしたいという気持ちもあります。描き続けるには、ある程度の資金がないと創作活動も続けることは難しいので……。

 インスタグラムで稼ぐにはPR案件を受ける方法が基本ですが、どんなに人気のアカウントでも投稿した途端に『なんだPRか』と興ざめしてしまう方が多く、フォロワーが減ってしまうことが多いのが現状です。そのため、僕は納得できる金額の場合しかお引き受けしないことを決めていて、少ないPR案件の数でも安定した創作活動ができるように工夫しています」

 目先のことだけでなく長期的な人気アカウントづくりを目指した結果、フォロワー数は伸び続けた。そして、ついには書籍化の話も舞い込んだ。

 ここまで成功した理由をたくまる氏は「ニッチ×需要のあるコンテンツ」の方程式だと明かす。

「ほかにも人気の漫画アカウントはたくさんありますが、わかりやすい漫画を描いているということ、そしてその内容がニッチなことですかね。『疲れてる』話だけを描いて投稿し続けている漫画家は、おそらく日本で僕だけです」

◆本業はYouTube関連の会社員、漫画家との2足の草鞋生活

 実はたくまる氏はYouTube関連の仕事をする会社員でもある。普段本業では動画撮影や編集をするため、ある「職業病」が漫画制作にも影響してしまうのが悩みだそうで……。

「フォロワーさんから提供してもらったあるあるネタを漫画にしていく際に、どうしても動画のシーンを考えるようにコマ割りを考えてしまうクセがあるみたいで。出版社の方にも『コマの作り方が動画的ですね』と指摘されて初めて気づきました。漫画家さんみたいな感じでコマを作りたいというのがひそかな悩みです……」

 しかしその動画的な独特のコマ割りがテンポよく読める面白さにつながっているような印象もある。

◆家族や職場が協力してくれた

 そんな本業と漫画制作の両立はどのようにしているのだろうか?

「漫画の制作は基本的に土日にまとめて1か月分(4~5投稿)作成しています。楽しみながらゆるく描いているのですが、さすがに書籍の制作をしている時は本業との両立や時間の管理が大変でした。ただ、嫁がすごく協力的で『あなたは漫画だけ描いていればいい、家のことは何もしなくていいから!』と言ってくれたので、土日も朝から深夜0時までずっと制作に専念できましたね」

 また、職場も漫画制作に理解を示しており、有給を取らせてくれたという。「目標だった」という書籍化を実現した今、たくまる氏が目指すものとは……?

「フォロワー数10万人を目指したいと思います! あとは、『疲れてる』あるあるネタへの共感だけでなく、漫画に登場するキャラ(主にたくまる氏の家族)のファンになってくださる方を増やしていきたいですね。

 長く漫画を愛してもらうためには、ネタの面白さで読んでくださる方に寄り添うだけでなく、キャラにファンがついていることが大事だと思うので。なにより、キャラに人気があればグッズを出しても売れるようになりますし(笑)」

 “たくまるさんち”の大黒柱として意外と抜け目がない。正直すぎる回答でむしろ気持ちいいほど。そんなところも魅力のひとつなのかもしれない。

<取材・文/松本果歩>

【松本果歩】
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA

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