男の子用“平安”衣装が可愛すぎる!ネットで完売中の子ども服、作った人を直撃
平安時代に生まれた衣装の一種、「水干(すいかん)」をご存じですか?
その名の由来は「糊を使わず水張りした生地を使うから」とも「晴雨両用で便利だから」とも言われ、映画『千と千尋の神隠し』では謎の少年「ハク」が水干風の衣装を着用するなど、現代でもさまざまな作品の中で愛され続ける伝統衣装です。
ハンドメイドの子ども服ブランド「ペンギンのおしり(Penguinbum)」は、そんな水干を赤ちゃん・子どもの普段着用にアレンジした「童の水干」シリーズを販売。先月とあるTwitterユーザーの投稿に取り上げられると4万件近くのいいねを集め、通販サイトでは販売直後に完売するほどの大人気となっています。
今回は制作者でもある「ペンギンのおしり(Penguinbum)」店主さんに、制作の背景やこだわりについてお話を伺いました。
◆特別感があり、着心地良く動きやすい「水干」
――子ども向けに「水干」を制作しようと思ったきっかけを教えてください。
「私自身の子ども達の夏の普段着として甚平(じんべい)を着せることが多いのですが、毎日見ていると物足りなくて、和装コーディネートのバリエーションの一つとして制作したのが始まりでした。
忍者やカンフーをヒーローの一種として『かっこいい』と思っている子ども達にとっても、水干は特別感があったようでとても好評でした。
和装については、自身が幼少より日舞や弓道の経験があり、着物や袴などが身近な環境で育っていたことも、水干をイメージする要因となっていたかもしれません。古典の世界も好きで、高校時代は『更級(さらしな)日記』や『源氏物語』で詠まれる和歌の表現や、当時の生活様式や文化に思いを馳せ、友人と語るのも楽しかったです」(「ペンギンのおしり(Penguinbum)」店主さん。以下カギカッコは同じ)
◆「誰でも気軽に、日本らしい風情を楽しめる」ことを目指す
――制作するうえで、特にこだわっている点はどこですか?
「着心地の良さと動きやすさです。ベビー・キッズに寄り添った素材で、快適に着られることを心がけています。同じ素材で大人のお洋服を作成して、自分で着心地を確かめたりもしています。
母としては、お洗濯も含めて、手入れのしやすさも気にしています。また、男の子が元気に動き回ってももたつかない着丈や袖丈、着崩れにくさを考えています。
水干については、本来は、おそらくもっと大きな袖や雅な装飾があり、華やかで神聖な装束だと思います。しかし、私が目指しているのは『誰でも気軽に、日本らしい風情を楽しめる』こと。コスプレではなく、タブリエ(※前掛け、ドレスエプロン)のような感覚で、自然にワードローブに取り入れてもらえたら…という気持ちで制作しています」
◆着付けの知識がなくてもOK!羽織るだけで特別感ある和装コーデに
――基本的には甚平の上に着用するという形なのでしょうか。コーディネートのコツやポイントがあれば教えてください。
「基本的には、甚平の上に羽織る仕様ですが、Tシャツなどのお洋服の上に着てもいいと思います。実際に、作品ページのモデルはスタンドカラーシャツの上に簡単に羽織っております。
パンツは、少しボリュームのあるひざ下以上の丈のものを合わせるのがおすすめです。歩き始めの赤ちゃんは、かぼちゃパンツを履いても可愛いですよ。
どんなお子様でも気軽に、着付けの知識がなくても大丈夫。普段着のように楽しめることを考えて着丈や袖の長さ等をデザインしております」
◆小さくても、サイズぴったりの可愛いお洋服を。低出生体重児向けの洋服も制作
――ご自身の経験から、小さく生まれた赤ちゃん(低出生体重児)向けのお洋服も制作されていますが、こちらはどんな点にこだわっていますか?
「私の第一子は、予定日よりも早く、推定体重よりもかなり小さく生まれました。元々分かっていた訳ではなく『生まれてみたら小さかった』ので、そのための心づもりもお世話用品も準備がなく、入院中から夫婦でバタバタしていた記憶があります(笑)。
特に、着られるお洋服がなかなか見つかりませんでした。授乳間隔2時間の小さい我が子を見ながら服を探すのも、作るのも時間がなくて…。しかし、新生児のうちには、退院着やお宮参り、お食い初め、初節句…たくさんのフォーマルイベントがあります。
『身体が小さくても、サイズぴったりの可愛いお洋服でお出かけしたい』 私と同じような境遇のママの助けになればと考えたのが始まりです」
――購入者さんからの反応はいかがですか?
「お客様のお話を伺うと、小さめ赤ちゃんは肌が敏感な子も多いように思います。
私が制作しているのは主にフォーマルなシーンに向けたお洋服ですが、裏地にダブルガーゼを使用したり、柔らかいコットンリネンを採用したりと、できるだけ肌当たりの優しいものを意識しています。
デザインにも共感してご注文くださるが多く、制作の励みとなっております」
◆「自分の世界観を大切にしながら、フットワークの軽い作家でありたい」
――最後に、今後新たに制作したい商品や試みがあれば教えてください。
「私は、お洋服がハンドメイドである価値は、個人のニーズに寄り添うことができることにあると考えています。
今までも、多くのお客様が公開中の作品に共感してくださり、『このお洋服と合わせて、こんなものが欲しい』『このお洋服の雰囲気で、このような形のものを…』とお声かけくださって、ご相談しながら形にしていきました。今後も、自分の世界観を大切にしながら、フットワークの軽い作家でありたいと思っています。
現在は、公開中の甚平の親子コーデに加えて、ママとのリンクコーデや女の子とのお揃いができるお洋服の制作を考えております」
9月24日には、発売後即完売が続いている「童の水干」シリーズに秋らしい新柄が登場。Twitterで大きな話題を集めた「竹林を駆ける、童の水干」の再販も予定されています。
今後の販売日程や販売作品、新作などの情報はInstagramとTwitterで発表されますので、気になる方はチェックしてみてください。
<文/まゆカーダシアン>
【まゆカーダシアン】
フリーライター。美容、エンタメ、クルマなど幅広いジャンルで執筆。Twitter:@SHAMPOOOOxxx