映画『空白』吉田恵輔監督・古田新太・寺島しのぶインタビュー「人って大切な事をポロっと言うもんだよなって」

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主演・古田新太さん、共演・松坂桃李さんの映画『空白』が9月23日(木・祝)より公開中です。『ヒメアノ~ル』(16)、『愛しのアイリーン』(18)、『BLUE/ブルー』(21)など衝撃とともにその才能を見せつけた吉田恵輔とタッグを組み、現代の「罪」と「偽り」、そして「赦し」を映し出すオリジナル脚本で挑むヒューマンサスペンスです。

娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無実を証明しようと、店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も恐るべきモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく…。古田さんと松坂さんの緊迫感あるシーン、寺島しのぶさんら豪華共演者のお芝居が心を震わせます。

今回は吉田監督、古田新太さん、寺島しのぶさんの3ショットインタビューをお届けします!

※吉田恵輔監督のよしは土に口です。

ーー本作拝見しまして大変感動いたしました。監督の書いたお話と、古田さん、寺島さんのお2人をはじめとする俳優の皆さんのお芝居が凄まじかったです。

吉田:「俺が書いたものを料理して見せてくれる人」が好きなんです。出来ない人を手取り足取りやって、俺が育てたみたいな欲望ってほぼ無いんで。できる限り上手い方にお願いしたいんです。だから現場でも「OK!」しか言っていない。俺が言う相手は撮影と照明だけ。俺も照明部あがりなので、その面白い芝居をどうしたら一番良く見せられるかを気をつけるだけで。

古田:撮影早かったよね。

寺島:もう最高!

古田:普段からどんな現場でも「早く帰りたい」しか考えていないから。何もしていない、ただ睨んでいるだけのオイラとか、しのぶちゃんとの言い合いを桃李が「止めづらいなこの人達…」って困っている姿を撮ってもらって、「OK!」っていう。

吉田・寺島:笑い。

古田:桃李、本当に止めづらかったんですって。俺にはどうしようも出来ないっていう。

吉田:俺がまず現場で、一番最初のお客として演技を見たいので。俺が書いた本なのに、俺が書いたセリフと全然違う感じで言ってくれて、さらに良くしてくれるっていう。後半で、古田さんがこの映画のテーマ的なセリフを言うシーンがあるのですが(※)、それを「重要な言葉言ってますよ」っていう感じで言うんじゃなくて、サラッと言ってくれたんです。それを聞いた時に、人って大切な事をポロっと言うもんだよなって。(※文末でこのセリフについて触れています)

そこまでもずっと古田さんのお芝居に感動していたし、観客に伝わるなと思いました。理解出来ない感じだったら「ここは重要なセリフです」って演出しないといけないけど。そうしたらやっぱり、レビューでそのセリフが印象的だったって挙げてくれる方が多くて。

ーー古田さん演じる添田が、松坂さん演じる青柳にする嫌がらせは、もう本当辛かったですし、リアルでした。

吉田:割とそういうのをよく目にするし、自分自身も文句を言いたいけど我慢する生活をしていますね。こないだもお弁当屋さんでとろいおばさんがいたから、(遅いなあ…)って顔見ていたら、家が隣の方で「あら〜!」なんて言われて。「そうかなあと思ったので!」って誤魔化しました(笑)。揉め事とかも率先して見に行くタイプなので、ああいう嫌な描写はいくらでも出て来ます。

古田:ラーメン屋の大盛りのシーン良いですよね。関係ないんですけど、オイラ、いっぱい食う人が好きなです。自分はほとんど飯を食わないから。大盛り食べてると「へ〜、大盛り食べるんだ」って嬉しくなるんです。早乙女太一と飯食べ行くとめちゃくちゃ楽しい。居酒屋行ってまず最初に白飯頼むんです。デリカシーないなあと思いつつ、嬉しい(笑)。

寺島:(笑)。自分が食べられない分、食べた気になるというかね。

古田:そうそう。

寺島:古田さんはどこにいてもこのまんま、添田さんになっちゃってたから。現場の片隅でタバコ吸っている姿も添田さんだし、歩いている姿も添田さんだし…ズルイ!って感じでした。

古田:オイラは何にもしてないんだけどね。まんま、立ってる。スーパーに桃李とかしのぶちゃんがいる姿を外からずーっと眺めてるんだけど、監督の「カット!」がかかっても、何も変わらない(笑)。

吉田:こっちのカメラサイドは「やっぱり、完璧に役作りしてくれているな」と思って見ているから、すごいなって震えるほど感動していたんですよ。でも、カットかかって違う場所でくつろいでいる古田さんを見たら、全く一緒で(笑)。

古田・寺島:笑い。

ーー何もしてないと古田さんはおっしゃいますが、前半と後半の添田さんの表情って全く違いますし、本当に凄かったです。

古田:台本に書いてありますから。色んな出来事があって、周りに誰もいなくなって、あんな状況になったら人間弱くなりますよ。(藤原)季節しか残ってくれない(笑)。

ーー藤原季節さんが演じた野木の存在は本作で救いだなと感じました。

吉田:俺の中で季節くんって、捨てられた、濡れた犬みたいなイメージを感じたので、季節くんが演じた野木が添田についていくっていうことは、添田はそんな悪い人じゃないって思えるんですよね。季節くんの独特の雰囲気が良い関係を作ってくれていて。

古田:あれが菅田将暉だったら全然違いますからね。季節がやると、なついている感があるっていうか。添田も根っからの悪人じゃないんだろうなって想像出来る。アメやクッキーくらいはあげているんだろうなっていう。

吉田:そうです、そうです(笑)。

ーーそして、寺島さんが演じられた草加部さんも本当に凄かったです。

古田:見せ場ですね!今回の映画の一番の見どころは、しのぶちゃんのシーンですから。

寺島:やめてください。私が演じた草加部さんは、青柳くん(松坂桃李)に淡い恋心を抱いているので、とにかく触れようとするし、触らせようとするんです。青柳くんが怯えているので、草加部さんの痛さを感じてしまうんですよね。相手に良かれと思ってお節介をして、相手は迷惑というどこにでもいるようなおばちゃんを本当に監督が上手に書いていらっしゃるなと思いました。

吉田:ありがとうございます。ベジタリアンの人とか、そのこと自体は悪いことじゃないんですけど、肉を食べている俺にむかって「ドイツは進んでいるからさあ」とか言われると、(進んでないんだ、俺は)みたいに内心思うんですよね。ベジタリアンは個人の自由だけど、俺を進んでない扱いはやめてくれない?っていう。

寺島:その場にいる人達が気まずくなっちゃうような、言葉のチョイスをするんですよね。

吉田:そうなんですよ、そういうのは全部帰りの電車でメモっています。

寺島:衣装合わせの時からすごく楽しかったんですよ。おお〜、チェックにチェックに水玉ね。みたいな(笑)。そういう部分からスタッフさんが草加部さん像を盛り上げてくださっていました。

吉田:寺島さんはボランティア中に、他のスタッフ(なつみちゃん)がカレーをこぼして怒るシーンがあるのですが、テストの時と本番のギアの入り方が違いすぎて、そのスタッフ役の子がガチでビビるっていう(笑)。

寺島:あはは(笑)。なつみちゃんがすごくイラっとさせるキャラクターなんですよ。監督がオーディションで選ばれた方なのですが、すごく印象的なお芝居をしてくださいました。

ーー監督、お2人からご覧になった松坂桃李さんはいかがでしたか?

吉田:松坂さんは、想定していたよりも「青柳ってこんなに溜めてたんだ」「ここまで追い詰められていたんだ」って感じを出してくださいましたね。もう少し淡々と演じるかな?と思っていたので、意外でしたし素晴らしかったです。やっぱりこの2人に囲まれていたから…

古田:やりにくかったと思いますよ。こういう作品だけど現場は和気藹々としていたんですよ。さっき監督もおっしゃっていましたけど、「よーい!」の言葉でバチっと切り替えられる人たちが多かったから、どんなに緊迫したシーンを撮っていても、カットがかかったら「今日何食べる〜?」みたいな。そのくらいの軽さだったんです。

しのぶちゃんは来れなかったけど、片岡礼子ちゃんとか、趣里ちゃんとか、(田畑)智子ちゃんとご飯食べに行ったり、監督も来てみんなで飲みに行ったりして。でも「桃李、中華料理食べ行くけど来る?」って聞いたら「いいえ」って。

吉田・寺島:笑い。

古田:そっかそっか、ごめんな!って(笑)。

寺島:真面目!

古田:すごく役に対してじっくり向き合っていたんだと思います。

寺島:桃李くんはもうちょっと私に優しくして欲しかった。

古田:めちゃくちゃ面白かったよね。草加部さんが青柳に「かまってかまって〜」みたいになるシーンの撮影が終わった後、しのぶちゃんが桃李に「そんなに嫌?!」って聞いていて。芝居だっていうのに(笑)。

寺島:(笑)。そうなんだけど、芝居なんだけど。桃李くんに「草加部さんって、ここまで押しが強くなかったら、2人は付き合っていたかもしれないよね?」って聞いたら、「いや……無いですよね」って。

吉田:そこ気遣わないんだ!っていう(笑)。

寺島:完全に草加部さんとして見られちゃっていたから、今後何かの形で、綺麗な役で桃李さんにお会いしたいですね(笑)。草加部さんが青柳くんに絡むとあるシーンでも、もうちょっとサラッとやりたかったんだけど、監督が続けて欲しいっていうから仕方なく、ずっとやっていました。

古田:この映画って可哀想な人しか出ていないから。可哀想じゃなくて、本当に恐いのって草加部さんだけじゃない。

寺島:う〜ん、草加部さんも何かあったかもしれないですよ!過去に。この映画の後、草加部さんはどうなっちゃうんだろう。

吉田:バックボーンというか、俺のイメージでは、草加部さんは子供がいないバツイチで、DVみたいなこともあったから、ボランティアにのめり込んでいって…みたいな。「自分がやっていることで人が傷ついているな」って少し気付けた分、そこも救いのあるラストにはなっているかなと思います。自分が見えていないやつが一番恐いので。

ーー「自分が見えていないやつが一番恐い」確かにおっしゃるとおりですね、登場人物たちが最後、自分に気付ける所が、本作のとても温かな部分なのかなと感じました。今日は大変貴重なお話をありがとうございました!

<古田新太さんクレジット>
ヘアメイク:田中菜月
スタイリスト:渡邉圭祐

<寺島しのぶさんクレジット>
ヘアメイク:片桐直樹
スタイリスト:中井綾子

撮影:オサダコウジ

【作品情報】

出演:古田新太 松坂桃李
田畑智子 藤原季節 趣里 伊東蒼 片岡礼子/ 寺島しのぶ
監督・脚本:吉田恵輔※田監督のよしは土となります。
音楽:世武裕子
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
制作プロダクション:スターサンズ
撮影協力:蒲郡市
配給:スターサンズ/KADOKAWA
製作:2021『空白』製作委員会(C)2021『空白』製作委員会
公式サイト:kuhaku-movie.com

【※インタビュー中の古田さん演じる添田のセリフについて。以下はネタバレを含みます】
四十九日後のタクシーの中で、添田が「みんな人生にどうやって折り合いつけているのかな」と言うセリフ。

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  • 9/27 8:00
  • ガジェット通信

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