国産との決定的違いは? 欧州ハイブリッドカーの実力

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆続々増える欧州製PHEVは、日本ではお呼びじゃない!

報道によれば、近い将来ガソリン車(ディーゼル含む)の新車販売がゼロになりEV(電気自動車)ばかりになる模様。そして、それまでの“つなぎの技術”として注目されているのが、外部から充電できるEVで、ガソリンでも走れるプラグインハイブリッドカー(PHEV)。今回は、そんなPHEVのプジョー508GTハイブリッドに注目。欧州ハイブリッドカーの実力を探りました!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆日本のカーマニアに悲報!

 菅総理は昨年、14年後の2035年までに、「新車の販売を100%電動車にする」と表明。2050年には、「国全体でCO2排出ゼロを実現する」と国際公約したのであります! が、「日本の電動車」にはハイブリッドカーも含まれるため、少なくとも2050年まではエンジンのついたクルマを販売できるはず。それまではガソリンスタンドも存在するでしょうから、私が88歳の喜寿を迎えるまでは、古いフェラーリで爆走可能なのであります! 目が見えればですが。

 一方、欧州やアメリカのカリフォルニア州では、2030年以降、ハイブリッドカーを含め、化石燃料で動くエンジンを積んだ新車の販売が順次禁止されるっ! あわせてガソリンスタンドも激減するだろうから、古いフェラーリでの爆走も終了か!? 日本人でヨカッタ~!

 が、そこには小さな抜け穴がある。それはプラグインハイブリッドカー(PHEV)。つまり外部充電可能な大きめのバッテリーを積んだハイブリッドカーであります!

◆アウトバーンを時速200㎞で飛ばしたら…

 イギリスやカリフォルニア州は、プラグインハイブリッドカーも禁止の方針ですが、ドイツやフランスはOK(今のところ)。プラグインハイブリッドカーはガソリンエンジンを積んでいるので、そのおこぼれをもらって、古いフェラーリも爆走できるかもしれない! 少なくとも2050年までは。

 いずれにせよ、日本の中高年カーマニアは安泰なのですが、大変なのは欧州の自動車メーカーだ。

 欧州では高速道路での長距離移動がアタリマエだが、それはEV(電気自動車)が一番苦手な分野。アウトバーンを時速200㎞で飛ばしたら、あっという間に電池がカラになる。EVは速度を上げると、航続距離が猛烈に短くなるのであります!

 そこで市街地ではEV、高速ではガソリン車として使い分けられるプラグインハイブリッドカーが、現時点での最適解となるのです! 欧州では、プラグインハイブリッドカーは、EVモードの航続距離が50㎞あれば、CO2排出量を3分の1に換算できるので、燃費規制の罰金からも逃れられる。まさに一石三鳥であります!

 前置きが長くなりましたが、今回日本に導入されたプジョー508GTハイブリッドも、そんな欧州の状況に適応したプラグインハイブリッドカーであります! もともとプジョー508には、ガソリン車とディーゼル車がありますが、それらは遠くない将来消滅し、このプラグインハイブリッドモデル(+EV?)だけになる雲行きであります。

◆その走りですが…

 で、その走りですが、重いであります! ガソリン車より280㎏重いので、激太りした中高年のように、身のこなしが鈍いであります!

 電気での航続距離は実質50㎞弱。ハイブリッドモードにしておくと、モーターとエンジンを使い分けて走るので、走行距離70㎞くらいまではリッター30㎞以上の低燃費で走ります。急速充電はできず、自宅等での普通充電のみですが、50㎞ぽっちのEV走行をするために、わざわざ外で充電する人もいないでしょうから、これは問題ナシであります。

◆バッテリーがカラになると?

 が、バッテリーがカラになると、そこからの燃費は、リッター12㎞くらいまでガックリ落ちるのであります! この数字は、同じプジョー508のガソリン車とほとんど同じ。いったいナゼ?

 欧州のプラグインハイブリッドカーは、電池が残っている限り電気で走り、そこから先はほぼエンジンで、という設計思想なのです! つーか、トヨタみたいな高度なハイブリッド技術がないので、そうせざるを得ないのです! 同じく電気で実質50㎞くらい走れるプリウスPHVは、電池がカラになってもリッター24㎞くらい走る。もともとプリウスはそれくらい走れる設計だから!

 欧州製プラグインハイブリッドカー、それはまさに“つなぎの技術”。つないだだけの技術とも言えますね。我が国には必要ないであります!

◆【結論!】

プジョー508はアラン・ドロンのような伊達な4ドアクーペ。鈍重なプラグインハイブリッドカーより、軽快なガソリン車のほうが100倍イイであります! そのほうが100万円安いし。

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/9/26 8:53

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