とにかく明るい安村「東京ってスゴい」「こんなことができる」にある言葉の空白

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月12~18日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

川島明「僕、ヒシアマゾンのバーターやと思ってください」

 情報バラエティとしての番組の性格が、少しずつ認知されてきたように見える『ラヴィット!』(TBS系)。他の番組でも「大喜利番組」として言及されるシーンがしばしば見られるようになり、最近は番組全体の中でも特にバラエティ度が高いオープニングの時間が、徐々に長くなってきているような気もする。

 で、そんなオープニングで、MCの川島明が連日、競走馬を紹介していた。15日のオープニングのトークテーマは「あなたが忘れられない名勝負は?」。そこで川島はヒシアマゾンを紹介。16日の「あなたのスーパースターは?」というテーマでは、ブロードアピールという馬の紹介をしていた。ヒシアマゾンを紹介し、共演者に「他の番組でも紹介しているのを見た」などとツッコまれた際、川島はこう返した。

「僕、ヒシアマゾンのバーターやと思ってください」

 川島の競馬好きはよく知られているところ。また、ゲームだったりマンガだったり、最近の『ラヴィット!』は、番組コーナーのなかで川島が趣味とするカルチャーが紹介されるシーンが多い気がする。

 少しずつ川島色が色濃くなってきたように見える『ラヴィット!』。以前、ゲストにムーディ勝山が呼ばれたこともある。そのうち、ムーディ、天津、若井おさむ、ネゴシックスといった川島の友だちオールスターズによる朝番組が放送されたりするのではないか。始まってもないのに、なんだか今からワクワクしている。

 情報バラエティ『ラヴィット!』では、他の情報番組でもよく見られるように、VTRの途中でスタジオの出演者に向けて簡単なクイズが出される。5秒とか7秒とか短い時間で答えなければならない、よくあるやつだ。が、『ラヴィット!』の場合、ここが大喜利タイムになることも少なくない。番組キャラクターのラッピーによるいわゆる“ムチャ振り”に、見取り図の盛山晋太郎が四苦八苦、という流れもよく見る(最近は少なくなってきた気もするけれど)。

 で、14日の同番組には、ドラマ『プロミス・シンデレラ』(TBS系)の番宣で主演を務める二階堂ふみらがゲスト出演していた。彼女が参加したのは、宮下草薙の2人や菊地亜美らがロケをしていた「お悩み解決コーデ」のロケコーナーからだ。

 で、そのロケの途中、VTRが止まっていつものようにクイズが出される。問題は「(宮下草薙の)宮下さんの彼女はファッションに関してある悩みがあるそうです。それは一体なんでしょう?」というもの。指名されたのは二階堂、制限時間は7秒だ。彼女はとっさに次のように答えた。

「え! すごい! どうでもいい! どうしよう!」

 正解のない大喜利にも、思わず「正解」と言ってしまいたくなる回答がある。この二階堂ふみの答えもそういう類のやつだろう。少なくとも情報バラエティの大喜利的に正解。もしかしたらクイズとしても正解かもしれない。

 とにかく明るい安村のネタ「東京ってスゴい」に惹かれるのは、どういうことだろう。『有吉の壁』(日本テレビ系)で披露されてきたこのネタ。海パン一丁の安村が「東京ってスゴい 東京ってスゴい」と繰り返し、奇妙なダンスを踊りながら、「北海道の 田舎の 控えめでおとなしかった俺が 東京に来て 20年経ったら 恥ずかしくもなくこんなことができる」「小4のとき 親が離婚して おばあちゃんに育てられた俺が 東京に来て 20年経ったら 恥ずかしくもなくこんなことができる」などと歌う。

 北海道で生まれ育ち、ベンチ要員だったものの甲子園の出場経験もある安村。そんな彼が、友人に誘われて上京し、芸人になり、今では裸でテレビに映る。腹の贅肉を揺らし、息を切らしながら歌い踊る。そんな安村のドキュメンタリーが重なるパフォーマンスが、悲哀を帯びたおかしみを生む。ひとまず、そう言えるだろう。

 もう少し考えてみたい。安村は、16日の『クセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)でこのネタをロックバージョンで披露していたのだけれど、そのとき千鳥の2人とゲストの井森美幸がネタ終わりにこんなトークをしていた。東京に出てくると、知らない間に自分が変わっていってしまう。そのことに、自分ではなかなか気づけない。自分が変わったのではなく、東京が自分を変えさせているのだ――。そして、大悟が語る。
 
「変わったことが悪いことでもないのよ。だから『東京は悪い』じゃなくて、『東京はスゴい』のよ」

 なんだか、「東京ってスゴい」に惹かれる理由がさらにわかる気がした。「スゴい」という言い方には、とても曖昧だ。何がスゴいのか、スゴいからなんなのか、良いのか悪いのか、何も語っていない。「恥ずかしげもなくこんなことができる」の「こんなこと」もそうだ。それがどんなことなのかは、言葉では何も語られていない。

 そこには指示内容も価値判断もなく、ただ、言葉の強さがある。そんな空白の言葉に、東京に暮らす人も、そうでない人も、私たちはそれぞれ自分の人生の一端を投影してしまうのだろう。

 15日の『有吉の壁』で、阿佐ヶ谷姉妹の木村美穂(妹のほう)が『セーラームーン』のキャラクター、セーラーマーキュリーに扮して「セーラーマキュート!」と、この世におそらく存在しないキャラクターの名前を叫んでいた。渡辺江里子(姉のほう)は「セーラージュピター!」と、納言の薄幸は「セーラームーン!」と叫んでいたので、パロディというわけではなく、単に間違えたのだと思う。そしてその後も、何もなかったかのように平然としている美穂さん。

 とりあえず、東京ってスゴい。そして、マキュートってなんだ。

  • 9/22 11:00
  • サイゾー

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