パ・リーグまさかの番狂わせ。ロッテとオリックスはなぜ強いのかを分析してみた

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◆パ・リーグの優勝争いに異変あり!

 野球といえば東京五輪での金メダル獲得が記憶に新しいが、プロ野球のペナントレースも大きな盛り上がりを見せている。そんななかで特に注目を浴びているのがパ・リーグの優勝争いだ。なぜならば、球団として47年間優勝に遠ざかる千葉ロッテマリーンズが首位に立ち、それを猛追するのが25年間リーグ優勝経験のないオリックスバファローズだからだ。

 優勝はもちろん、近年下位に甘んじるシーズンの多かった2チームがどうしてここまで強くなったのであろうか? 野球ライター・キビタキビオ氏の意見を交えながら分析した。

◆“粘りの野球”が浸透した千葉ロッテ

 まずは、単独首位をひた走る(9月20日現在)千葉ロッテマリーンズの快進撃の要因を探っていきたい。キビタキビオ氏はこう分析する。

「昨年から続けている“粘りの野球”が機能していることでしょう。マーティンとレアードの両外国人をポイントゲッターとして、荻野貴司、中村奨吾といった主力選手がつなぎに徹する打線は、派手さはないですが勝負どころで効果的に得点できている。

 そして、リードを奪ったら、投手継投で勝ちを拾う。昨年はややデキすぎの感があり、今年は同じようにはいかないのでは……と心配していましたが、今年はむしろ“粘りの野球”がさらに洗練されて、勝っておきたい展開の試合をしっかり拾っているところが首位の要因でしょうね」
 
 “粘りの野球”だけではない。データから見るとロッテはリーグトップの得点、本塁打、盗塁をマークしている。打順問わずスキのない走塁を試みており、外国人打者が欲しいところでホームランを含む長打を放っていることが判明。

 また、オリックス・ソフトバンク・楽天といった優勝争いをするチームにすべて勝ち越しており(※9月16日の対ソフトバンク戦は引分)、上位チームに嫌な印象を与えていることも強さの理由であろう。

◆吉井投手コーチの光るマネジメント力

 また、キビタ氏は“吉井理人投手コーチのマネジメント”もロッテの強さの理由だと語る。

「特筆すべきはリリーフ陣。ここぞというところ以外は、無理をさせていません。クローザーの益田直也が春先は不調で試合を壊したこともありましたが、これまでの実績を尊重し、決してプライドを壊すことなく調整させて、再び好調な状態に持っていった手腕は見事。

 期待の若手・佐々木朗希についても、周りから何を言われようとも独自の長期育成路線を貫いている。それが、徐々に1軍での好成績につながってきているからさすがです。

 先発投手陣は、石川と二木、美馬がエース格ですが、現状で他チームにいる山本由伸(オリックス)や千賀滉大(ソフトバンク)のようなスーパーエース的な別格感はありません。しかし、エース格に続く小島、岩下、ルーキー・鈴木なども内容が良く、少数精鋭ながら安定したローテーションを維持している。このあたりも吉井コーチによる手腕でしょう」

 確かに、チームで最も勝ち星を挙げているのは若手右腕の岩下と中継ぎ・佐々木千隼の8勝と首位に立つチームにしては少なめ。絶対的エースがいないなかで投手陣をうまく起用できていることが分かる。

◆ロッテの強さの原動力は「雨慣れ」!?

 さらに、キビタ氏は、独自の見解でロッテ野球を分析する。

「この夏は降雨が多く、屋外のZOZOマリンスタジアムを本拠地とするロッテは、雨の中でも試合をすることが多かった。全面人工芝という環境もあってか、中程度の降り方であれば当然のように試合を強行していました。

 特に、8月は試合当日の午前中に雨が降っていて“今日は試合があるのか?”という雰囲気のなかで開催されることが多々ありました。普段、ドーム球場を本拠地としているチームと比べれば、当然、コンディショニングやメンタルの調整についても、“雨慣れ”していたのではないかと。

 千葉県千葉気象台の天候データと照らし合わせる形で独自に調べたところ、7月~9月のZOZOマリンスタジアムでの開催で、試合日の午前中に雨が降っていたときの試合でのロッテは、7勝5敗で勝率.583。“激的に強い”というわけではないですが、9月15日時点での勝率.574を上回っており、雨の不安がよぎる日の試合でも安定した勝率を維持できているところが、ロッテの意外な躍進なのでは?」

 真夏の長雨に泣かされた今年の夏。屋外の本拠地を持つチームの利点を生かして、ロッテはジワジワと勝ち上がってきたようだ。

◆宮城と杉本のブレイクで躍進のオリックス

 次に、前半戦を首位で終えて交流戦でも優勝を果たしたオリックスバファローズの快進撃についても、キビタ氏に聞いた。

「投手では宮城大弥、打者では杉本裕太郎の台頭が一番の要因でしょう。両者とも昨年から期待の若手ではあったものの、今年の戦力としては未知数でした。それが、いきなりタイトルを争うほどの活躍ですから。元々、投打の柱として山本由伸と吉田正尚がいるなかで、宮城と杉本の台頭によってマークが分散して相乗効果を生み出したと言えますね。

 もう一つはクローザー。ここ数年うまくハマっていませんでしたが、メジャーで実績を挙げたかつてのクローザー・平野が復帰し、安定感した投球で試合を締めることができたのも大きかったですね」

◆チームを鼓舞するレジェンド・ジョーンズの存在

 宮城は11勝、杉本はリーグトップの27本塁打(いずれも9月20日現在)という期待以上のハイレベルな成績をマークし、選手層に厚みが増したことが2年連続最下位からの躍進に繋がったようだ。

 また、メジャーリーグで7年連続25本塁打以上を放つなど華々しい成績をマークした助っ人外国人選手のアダム・ジョーンズの存在も大きい。これだけのスターでありながら代打や控えに甘んじているが、一切腐らずにチームを鼓舞するポジティブな姿勢にチームが活気づいているのも好調の要因であるだろう。

◆若手を知る中島監督の我慢の起用

 では、宮城や杉本、その他の若手選手の躍進の理由は何なのか?

「中嶋監督になってから、オーダーをほぼ固定したことが大きいでしょう。その姿勢がもっとも表れているのが、紅林弘太郎の起用です。思い切りのよい打撃が持ち味ながら、まだ粗さも目立つ選手ですが、打率が振るわなくてもずっとショートで固定され、場数を踏んでいる。打率は低いですが、不気味な存在になってきました。

 ホームランを量産する“ラオウ”こと杉本も、開幕直後は安定感がありませんでしたが、我慢強く起用し続けたことで4月中旬以降になって見事に才能が開花。福田周平や宗佑磨のコンバートについても、2軍で監督していた際に彼らの適性をよく見ていた中嶋監督だからこそできた采配でしょう」(キビタ氏)

 確かに今年のオリックスのオーダーを見ると、よほどの野球通でないと知らない選手が並ぶこともしばしば。ヘタをすればファンやOBに批判を浴びかねない若手選手たちの我慢の采配が、見事にハマったことも大きかったようだ。

◆ロッテ・オリックスに不安要素はあるのか

 そんな2チームの不安要素があるとすればどこなのだろうか? キビタ氏は指摘する。

「ロッテは若手の藤原恭大が覚醒し、我慢して起用してきた安田尚憲も上昇気配が出てきて明るい材料はありますが、ここまでやってきた“粘りの野球”が仇になるかもしれません。

一度歯車が狂ったらチームの勝ちパターンが崩壊する危険とは背中合わせですし、投手力のある楽天や巨大戦力のソフトバンクが猛烈な連勝スパートを切ってきた場合は、一気に追い抜かれる可能性がある」
 
チーム力でコツコツと勝ちを積み上げてきたロッテは、井口監督や吉井コーチらのベンチワークで連敗しないことがカギになりそうだ。

 「オリックスは、選手層という意味ではまだまだ。現在活躍中の主力選手が欠けると途端に急失速する可能性がありますね。また、優勝経験がない選手がほとんどという現状にも不安はある」

 この指摘通り、チーム屈指のスラッガー・吉田正尚がケガで戦線離脱してからは、打線が下降ぎみで負けが混んできている。吉田のケガは長引くという報道も出ているだけに、オリックスは苦境に立たされていると言えるかもしれない。

◆優勝争いは最後まで目が離せない

 ここまで驚異の快進撃を続けるロッテやオリックスについて語ってきたが、優勝争いは戦力豊富な楽天やソフトバンクまでの4チームが絡んでくることになりそうだ。果たして“リーグ優勝”という栄光を勝ち取るのはどのチームなのか? 今年のパ・リーグは最後まで目が離せない――。

【キビタキビオ氏】
“炎のストップウオッチャー”の愛称で知られる野球ライター。『野球太郎』(廣済堂出版)、『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)ほかで執筆するほか、『球辞苑』(NHK-BS1)に出演中。

取材・文/木田トウセイ

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

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