コロナ禍で焼け太りするのは誰だ? 政治・官邸主導の問題点

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 文部科学省OBの前川喜平、寺脇研らがあるべき官僚制の姿について語った『官僚崩壊 どう立て直すのか』。本書のために収録されたフリーアナウンサー・吉田照美さんとの鼎談のうち、書籍未収録の箇所をWeb限定で公開する。

◆一斉休校は必要なかった

前川喜平(以下、前川):やはり新型コロナに関しては初動に誤りがあったと思います。やはり感染が広がり始めたときにPCR検査を抑えたというのはおかしかったのではないでしょうか。

 また、文部科学省を見ていても非合理的政策というか場当たり的なことをずいぶん行ってきたと思います。私がもっとも腹が立ったのは一斉休校なんです。(※2020年2月27日に安倍首相は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国すべての小中高等学校と特別支援学校について、臨時休校の要請を行った。多くの地域で5~6月まで休校が続いた)

 一斉休校は必要なかったと思っています。もちろん、感染の起こっているところでピンポイントの対応は必要ですが、一斉に休校する必要は全くなかった。

 さらにGOTOキャンペーンにも腹が立っています。第三波を招いたのはGOTOキャンペーンであったことは間違いないと思います。さらにGOTOイートです。結局、業界のために行っている施策です。

◆GOTOイートの何が変だったのか

吉田照美(以下、吉田):GOTOイートが飲食業界のための施策であることは、国民にも知れ渡りましたね。

前川:業界もさることながら、GOTOイートについては菅さんのお友だちが潤っているわけです。「ぐるなび」の会長に滝久雄さんという方がいますが、菅さんのお友だちです。結局、国民の命を守る方に気持ちが向いていません。飲食店の経営者は経営が行き詰り、お店を畳もうかどうか思案したり、自己破産をしたりと塗炭の苦しみを味わっている人たちがたくさんいます。また、観光のようなサービス産業や飲食店、小売業といったところで仕事をしているシングルマザーたちが仕事を失い、子どもたちの食べるものがないということもある。バイトで苦学しながら大学に通っていた学生たちが、収入が無くなり学費も生活費も払えない。今や大学が率先して食料を配布しています。今や日本は大学が学生に食料を渡さなくてはならないという状況になっているんです。

吉田:本当にひどい状況ですね。

前川:困窮している人たちをそのままにしておいていいのかという話です。

吉田:そういうことに対して声をあげる政治家がいないということが悲しいですよね。

前川:コロナに感染して亡くなっている方も増えていますが、自殺者も増えています。2020年の一年間で高校生以下の子どもの自殺がものすごく増えているんです。2019年までは年間に300人台でした。それでも多かったのですが、2020年は一年間に499名もの子どもたちが自殺をしているのです。恐ろしい数です。

◆コロナ禍で焼け太りするお友だち

前川:私は結局、自民党のスポンサーのためと、権力を握っている人たちのお友だちのために役人は仕事をさせられているんじゃないかと思っています。パソナや電通は火事場泥棒的にたいへん潤っているわけです。

 誰のために仕事をしているのかという点では、前述のぐるなびの滝久雄さんが文化功労者になった件もあってはならないことと思います。滝さんは菅さんのお友だちです。

吉田:お友だち優遇ということがはっきり国民に知れ渡っていますよね。しかも、それがバレても続けるという図々しさが恐ろしい。

前川:滝さんを文化功労者にすると聞いた時に、文化庁のまともな役人たちは「どうしてこの人が?」と思ったでしょう。文化勲章受章者は文化功労者の中から選ばれるものですし、日本の文化を代表する方たちです。その意味でも文化功労者はそれぞれの道を究めた芸術家などから選ばれなければなりません。文化功労者の格を地に落としてしまった、それほど異例なことだとだと思います。

 滝久雄さんが文化功労者になった功績は三つあるんです。一つ目は食文化の普及。これはグルメサイトを運営しているということです。二つ目はパブリックアートの振興ですが、もともと滝氏はお父さんが創業した交通広告を主に扱う広告代理店、交通文化事業株式会社を、お父さんの急逝から受け継ぎました。ですから、鉄道業界と近い距離にいます。そこから東京駅などに情報端末の「JOYタッチ」を設置するビジネスなどを行い、さらに駅などに芸術作品を置くという事業も行ってきました。しかし、置かれている作品のかなりの部分は滝久雄さんが文化功労者になった時の文化庁長官である宮田亮平さんの作品なんです。もともと宮田さんと滝さんは近い関係にあったのです。それから三つ目の功績と言われているものが、ペア碁の普及です。ペア碁ってご存じですか?

吉田:いや、知りません。

前川:男女がペアでミックスダブルスみたいになって囲碁を打つんです。そのペア碁を普及したという功績なんですね。正直言って普及してないじゃないですか。

吉田:してませんね……。

前川:さらに、滝久雄さんの会社が東北新社の「囲碁・将棋チャンネル」の番組作りに協力しているんですね。

吉田:ああ~。そこでまたつながるんですね。

前川:お友だち同士がつるんでいるんです。

◆政治家は友だち優先、官僚は?

寺脇研(以下、寺脇):官僚は、私的なお友だちを大事にしてはいけないということは鉄則です。政治家というのは政治をするうえでお友だちを中心に票をもらわなければなりません。だから政治主導になればなるほど、特定の人物が利益を受けるようなことが起こる。私も文化功労者を選ぶ仕事もやっていたことがありました。時々政治家が特定の方の名前を挙げて私たちに推薦してくることはありますが、「その方は該当する方ではないですね」と理由を述べてお断りすると、政治家も「そうか。それじゃしょうがないな……」ということはありました。今の前川さんの話は、政治家がお友だちを文化功労者にしようとした際に、官僚は「それはダメなんです……」と言わなければならないということなんです。

前川:滝久雄さんについて思い出したんですが、実は過去に与謝野馨さんから、「滝さんを文化功労者にできないのか」と言われたことがあったんです。与謝野さんは囲碁六段だったんです。いつも「国会議員の中では俺が一番強い」と豪語しているほどでしたから……。与謝野さんの場合には、自分が文化功労者に推してもダメということはわかっていたんです。しかし、「文部科学省に話はしたよ」という事実が必要なので、私に言ってきたわけです。そこで、私は「そんなことはできません」とお断りをしたら、与謝野さんも、「それはそうだよな」と言っていました。結局、「文部科学省に話はしたけど、箸にも棒にもかからなかったよ」というアリバイが欲しいわけです。まっとうな政治家であれば、自分と近しい人を文化功労者にするなんていう無理筋をごり押しはしません。ところが菅さんはするわけです。

吉田:安倍さん譲りですね。

寺脇:安倍さんと菅さんのふたりのパーソナリティだけではなく、構造的にそうなっている部分もあるかもしれません。他の政治家たちもそういうごり押しのようなことをしている可能性だってあるわけです。

吉田:そうですね。あの人が許されるならいいだろう……、ということで上から下まで同じ思考になっちゃうでしょうね。

前川:その結果、役人の中にも公的なものを私物化する人間が出てくる。

吉田:これは何とかしないといけませんね。

(※鼎談は6月30日に収録)

前川喜平
1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部を卒業後、文部科学省に入省。大臣官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官などを経て、2016年6月文部科学事務次官に。その後、省内で起きた再就職等規則違反を受けて退官。著書に『面従腹背』『権力は腐敗する』(ともに毎日新聞出版)などがある。

寺脇研
1952年、福岡県生まれ。東京大学法学部を卒業後、文部科学省に入省。職業教育課長や広島県教育長、大臣官房政策課長などを経て大臣官房審議官に就任。2006年退官後は、映画プロデューサー、評論家として活躍。著書に『権力、価値観、天下り…… 「官僚」がよくわかる本 官僚の実態がわかれば、政治の仕組みがみえてくる!』(アスコム)や『文部科学省 - 「三流官庁」の知られざる素顔』(中央公論新社)など。

―[官僚崩壊 どう立て直すのか]―


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