すゑひろがりず、マヂラブも ブレイクの前に喰らったイレギュラーな介入

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(2月14~20日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

すゑひろがりず・南條「アレが1個のターニングポイント」

 新しいものを作ろうと計画して出来上がったものは、本当の意味で新しいものなのか。イノベーションは意図的に引き起こせるものなのか。大げさにいえばそんなことを考えさせる言葉を先週、いくつか聞いた。

 たとえば、18日の『やすとものいたって真剣です』(朝日放送)に出演していたすゑひろがりずの言葉。その日は伝統芸能をモチーフにした和風の漫才師である彼ららしく、東海道五十三次の宿場町をドライブするという企画をやっていた。

 で、旅の道すがら、鶴の置物のようなものを見つけた2人は、自分たちが今のコンビ名になったきっかけを話し始めた。

 2人がまだ「みなみのしま」というコンビ名で活動していた頃のこと。関西のベテラン漫才師、宮川大助・花子の花子に「あんたら『こりゃめでてーな』って、いい芸風でええ名前やな」と間違えられたらしい(「こりゃめでてーな」は実際にいる別のコンビ)。で、誤りを指摘すると花子は「そんなんアカンやないの! めでたい名前つけんと!」と激昂し、こりゃめでてーなを呼び出して「名前をあげなさい」と無茶なことを言い始めたのだとか。

 困った2人は大助に相談。すると大助は、「こりゃめでてーな? 『めでてー』言うたら鶴は千年、亀は万年いう話があってやな、亀は9000年、鶴より長生きするからさみしがっとるっちゅう話があってやなぁ」とキテレツなよもやま話を展開。2人は「はい」と言うしかなかったという。

 ただ、この出来事がひとつのきっかけとなり、2人はすゑひろがりずに改名。試行錯誤の後に、名前に見合った現在のおめでたい芸風にたどり着いた。

「ホンマにそれがよかった。アカンって言われてましたからね、みなみのしま。アレが1個のターニングポイント」

 南條はそう振り返る。南條と三島という名前から1文字ずつとった「みなみのしま」というコンビ名ではうまくいかず、大助・花子のぶっ飛んだ助言でつけた名前できっかけを掴む。

 自分たちの延長線上では行き詰まり、外からの予期しない介入でうまく転がり始めるというのは、なんだか示唆に富む。すゑひろがりずだけに、現代の昔話かもしれない。だとしたら、めでたしめでたし。

 あるいは、20日の『That’s!オール漫才』(毎日放送)に出演していたチュートリアルの徳井義実の言葉。

 2006年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で優勝した彼らだが、その前年の2005年にも決勝に進出。バーベキューのネタで審査員からも高い評価を得ていた。バーベキューの串に何をどの順番で刺すかという細かいことに執拗にこだわる徳井、その演技とリアルの狭間の狂気じみた顔が強い印象を残した。彼らの翌年の優勝は、あのネタで”自己紹介”を終えていたことが大きかったはずだ。

 で、そのネタは原型がまったく違ったものだったらしい。ネタが化けたきっかけは、関西で毎年年末の深夜に放送される若手芸人のネタ中心のバラエティ番組『オールザッツ漫才』(毎日放送)。同番組は、近年は少しマイルドになっているような気がするけれど、以前はもっとアングラ的というか、カルト的な人気を誇っていた。

 徳井も自分たちが出演していた当時を「『オールザッツ』って特殊やないですか。キワモノしかウケへんみたいな」と振り返る。そんな番組に、彼らは毎年「とりあえずやり過ごす」というスタンスで臨んでいたらしい。

 が、2004年の出演時、「今年はなんかもうちゃんと向き合って、むちゃくちゃやってでも爪あと残そう」というスイッチが入ったのだとか。もともとは「ちゃんとしたネタ」だったバーベキューのネタをその日のうちに(放送中も相方とネタ合わせをしながら)組み替えて、面白い部分だけを引き伸ばして披露したという。そのときの「半生ぐらいの、アドリブみたいな感じでやった」漫才をきっかけに、彼らは自分たちの芸風を完成させ、M-1の栄冠を手にした。

 そして、昨年のM-1チャンピオンのマヂカルラブリー。その20日の『人生最高レストラン』(TBS系)での言葉。

 彼らが初めてM-1決勝へと歩を進めたのは2017年のこと。しかし、ようやく掴んだチャンスで彼らは最下位に沈んでしまう。さらに、審査員の上沼恵美子からは「よう決勝残ったな」などと“酷評”される。直後、野田クリスタルは相方の村上に「もう漫才やれないけど、どうする?」と問いかけるほど諦めていたという。

 ただ、上沼に“怒られた”コンビとしてM-1の後は仕事が急増。他方、翌2018年の『キングオブコント』(TBS系)の決勝では7位とM-1よりは好成績だったものの、仕事にはつながらなかった。2人は言う。

村上「そのあたりで若干上沼さんってすごいのかもって思いだすみたいな」

野田「あのM-1は1個の正解だったのかなって思うようになって」

 そこから気持ちを切り替えたマヂラブ。再び決勝に進んだ昨年のM-1で優勝したが、上沼との予期せぬ“事件”が後押しとなったことは間違いない。

 師匠からの無茶苦茶なアドバイス。キワモノが跳梁跋扈する現場。大御所審査員の無軌道な放言。何か新しいことが起きるときには、そういったイレギュラーな介入が必要になってくるのかもしれない。もちろん、そういった介入を「きっかけ」に出来るだけの力量が、受け止める側にあることが前提にはなるのだろうけれど。

 そして、上沼や大助・花子の周囲には、介入の失敗例が成功例以上に積み上がっているのかもしれない。だとしたら、くわばらくわばら。

  • 2/23 13:00
  • サイゾー

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