ゴールデンで地球規模? 千鳥・大悟のミクロでマクロなズラし笑い

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(1月31~2月6日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

大悟「こっちではスベってるのに、あっちではあんな愛が育まれてる」

 芸能人が街ブラロケをしたVTRにスタジオの千鳥の2人があれこれ言う。そんなシンプルなシステムを採る『相席食堂』(朝日放送)は、むしろそのシンプルさゆえに、千鳥のツッコミというかガヤというか、注釈が本筋に反転するような解釈芸の面白さを引き立てる。

 そんな『相席食堂』が2日、初めてゴールデンタイムで全国に向け放送された。2020年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)のファイナリスト10組がロケに挑んだスペシャル版だが、そこでもやはり千鳥の「ちょっと待てぃ!」ボタンを押してからの視点と言葉が光った。

 たとえば、こんなシーン。オズワルドの畠中悠が函館の実家に戻る。だが、畠中は父親に芸人になることを伝えずに家を出ていた。今回のロケが7年ぶりの帰郷だという。遠洋漁業の漁師で家を空けることが多かった父親と、畠中は微妙な距離感にあるようだ。

 そんな2人が、相方や漁師仲間とともに酒を飲みながら向き合う場面。見ているこちら側にも緊張感が伝わるシーンだが、父親が「本人が好きなことやってんだったら、俺は親としては『幸せだな』と思う」と語りその緊張感が少し解ける。スマホで歌詞を見ながら長渕剛の『乾杯』を歌い始める父親。そこで大悟はVTRを止めてこう言った。

「奥にお化けがおる」

 確かに、父親の後ろで少し開いているふすま。その奥の暗がりに人影のようなものがうっすら見える。が、見方によっては“ちょっといいシーン”でVTRを止めてわざわざ「お化け」を指摘する落差がおかしい。

 いや、そもそも「お化け」が映り込んでいるはずはない(実際には畠中の祖父らしい)。が、大悟の発言に「そんなわけないやろ」と振ってVTRを見直し「おる!」と叫ぶノブの共犯者的な動きで笑いが増幅する。ここから話は畠中家のご先祖へと展開。大悟の気づきの面白さが、いないものをいると言って興じる2人の面白さへと移行していく。

 あるいは、こんなシーン。札幌を訪れた錦鯉が、ある施設のフードコートに立ち寄ったときのこと。長谷川雅紀を中心にボケが続くものの、うっすらスベり続ける展開。たまらずノブがVTRを止めて「俺らが止めない間に16スベりよ」とツッコミを入れるのだけれど、それに大悟が「16スベり中にひとつの愛が生まれてたん知ってた?」と応じた。

「スベり倒してる奥で親子がチューしてた。地球っていろんなとこでいろんなことが行われてるな、と思った。こっちではスベってるのに、あっちではあんな愛が育まれてる」

 改めてVTRを見てみると、カメラににじり寄りながら「食べちゃうぞ~」とギャグのようなものをしている長谷川の奥に、お父さんとその子どもが肩を寄せ合う背中が映っている。画面いっぱいの長谷川の顔との対比もあり、画面の隅に目を向ける大悟の視点に「そこ気づく?」と笑わされる。

 いや、画面の隅に小さく背中だけが映る2人が、本当に「チュー」をしているのかはよくわからない(たぶんしてないと思う)。けれど、背中しか見えない状況が想像力を刺激し、見えない「チュー」を幻視させる。さらに大悟はその想像力を地球大に拡大し、「こっちではスベってるのに、あっちではあんな愛が育まれてる」と壮大な物語に展開していく。札幌のフードコートでスベる男を映すカメラ。そのカメラを地球全体が見えるところまで一気に引く視点の移行。親子愛とスベる男の対比は宇宙からの視点で捉え直され、スベる男はさらに笑いを呼ぶものになる。

「お化け」にせよ「チュー」にせよ、大悟は画面の隅に見えないものを見る。カメラがフォーカスを絞る対象から目線を外し、自身のフォーカスで画面を捉え直す。そんな捉え直しが、スベりを含む何かしらの緊張感を帯びた画面から私たちの視線をフッと外し、笑いを生む。さらにその隅を見つめる微視的な視点から出発し、ノブとともに織り直される巨視的な物語が、笑いを増幅していく。

 見えないものを見えると言い張るそんな遊びに、私たちも共犯者的に加わって笑うのだ。

 大悟のそんな視点のズラし方は別の番組でも随所で見られるものだ。

 たとえば、4日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)にて。去年から仕事でまったく手応えがないと語るかなで(3時のヒロイン)は、最初にテレビに出たときはキレキャラがウケていたのだという。では、改めてこの場でキレてはどうか。そんな流れになるのだが、相方のゆめっちいわく、今回の収録はひな壇に意識しているシュウペイ(ぺこぱ)がいるから、かなではキレられない。

 これにかなでが「ホントのわけないでしょうが! だって私、好きな人いますもん!」とキレキャラで応じる。が、周囲が「誰?」とたずねると、「え……それは言えないですよ」と彼女は“素”の表情に戻る。その演技力が生む激昂と冷静の落差。バラエティ番組のノリのようなものに乗らないかなでの挙動が、スカしとなって笑いを生む。

 周囲もこの笑いに対し、「普通の女の子やないかい」といったツッコミで笑いを増幅させる。が、大悟は笑いながら少し引いた視点で次のように言った。

「そのほうがええと思うワシは。かなではもう女の子でええ。今までみんな言うてきたけど、もう言わない時代でいいと思う」

 あるいは、5日の『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)。松本人志がゲストとともに語らう「酒のツマミになる話」の企画で、大悟が語り始める。

「テレビで僕らずっとおるんですけど、このシステム何? みたいなんで……」

 バラエティ番組につきものの番宣。俳優や歌手などがゲストとして出演し、番組内で映画やドラマ、新曲などをPRするシーンだが、そこで周囲の芸人から「番宣かい!」というツッコミが入ることがある。そんなノリを大悟は問い直す。

「あれってよう考えたら、何がおもろいん?」

 もちろん、大悟は自分もそんなツッコミをしたことがあると語る。また、その場にいた俳優の坂井真紀が「確かに番宣で出てるんですよ。でも番宣だけで出てるつもりないです」といい、松本人志の「ちなみに今日はなんなんですか?」というフリに坂井が「番宣です」と応じると、大悟はいち早く「番宣かい!」と松本と共にツッコんで笑いに変えた。

 大悟はしばしばこのように、テレビの“お約束”のようなものを問い返す。テレビに潜在する暗黙の了解のようなものを俎上に載せ、疑問符をつけて笑いに変える。もちろんそれは“お約束”の破壊ではなく、ましてや否定でもなく、 “お約束”をフリにして状況を少しズラした別の笑いの創造だけれど。

 そんな大悟のテレビ内でのポジションを的確に表現したようなトークも先週は聞かれた。それは先述の『アメトーーク!』でのワンシーン。まず、屋敷裕政(ニューヨーク)が『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)のスポーツテスト企画に呼ばれたときの状況を「中3の部室に呼ばれた中1みたいな顔になる」と表現した。

「あれってマジで、中3の部室に呼ばれた中1みたいな顔になるじゃないですか。中3の先輩がいるんすよ。ザキヤマさんとか有吉さんとか。その中3の先輩の前で、『シュウペイでーす』とか言うしかないんです。中1の笑いのとり方が一番求められるんです」

 屋敷のこの卓抜な比喩に刺激され、狩野英孝はずっと留年している中1、かまいたちは中2だけどたまに濱家隆一だけ中1に戻る、藤本敏史(FUJIWARA)はひとりで誰よりも元気な中1と中3をやっている――と周囲も巻き込んでトークは芸人の相関図作りへと展開していくのだけれど、そんな中、大悟が『ロンハー』の同企画での自身の立ち位置を次のように触れた。

「ワシも中1でも中2でもないような顔でおったよ。他校のやつが見に来てるみたい」

 先輩・後輩のタテ関係の外側にいる、けれどそのタテ関係を理解していないわけでもない「他校のやつ」。その場のルールを熟知しつつも、素知らぬ顔でそのルールにツッコミを入れて笑いを生む存在。大悟のテレビの中での立ち位置がいろいろと腑に落ちるようなひと言だった。

  • 2/9 16:00
  • サイゾー

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます