蛍原徹「オープニングからもう泣きそう」 40歳過ぎてバイトやめられない芸人のふとした“オチ”

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(1月17~23日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

ぺこぱ・松陰寺「もし僕らが敗者復活で選ばれてたら、絶対炎上してただろうなと思って」

「『THE W』で優勝するまで(バイトを)してたんで」

 3時のヒロインの福田麻貴がそう語るように(『どうしてそのバイトやっているんですか?』NHK総合、1月20日)、芸人が「売れた」エピソードはしばしば「バイトをやめた」経験とともに振り返られる。逆に言えば、「バイトがやめられない」状態は、芸人として「売れていない」状態を意味するものとしてよく語られる。

 21日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)は、そんな芸人とアルバイトの関係に焦点をあてた企画が放送されていた。題して「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」。

 出演者は、アイアム野田(鬼ヶ島)、久保田賢治(5GAP)、秋本智仁(同)、小田祐一郎(だーりんず)、TAIGA、キューティー上木(上木恋愛研究所)、中村英将(ゆったり感)、菊池優志(ワンワンニャンニャン)、神宮寺しし丸、桑折正之(レアレア)。賞レース決勝に進出したメンバーもいるものの、世間的には必ずしも知名度が高くない面々が並ぶ。

 彼らの口からは、オープニングから哀愁を帯びたエピソードが語られる。たとえば、TAIGAは2014年の『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)で決勝に進出したこともあるピン芸人。芸人をしながら会場設営などの大道具のバイトを続けているが、コロナ禍によるイベントの減少でウーバーイーツなども始めているという。

 そんな彼によると、かつては自身の単独ライブの前説を後輩のぺこぱがやっていたらしい。が、周知のようにぺこぱは2019年のM-1でブレイク。今では自分がぺこぱの前説をやっているのだとか。かわいがってきた後輩との立場の逆転。それを聞いた蛍原徹も思わず口にする。

「オープニングからもう泣きそうやねんけど」

 一方で、23日の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)。TAIGAのエピソードの中に出てきたぺこぱの松陰寺太勇は語る。

 昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の敗者復活で、視聴者投票で上位3組に残りながらも決勝進出はならなかったぺこぱ(勝ち上がったのはインディアンス)。このときのことを松陰寺は振り返る。

「敗者復活めっちゃスベって。すげぇスベったなと思ったんですけど、知名度だけで3位まで残っちゃったんですよ。もし僕らが敗者復活で選ばれてたら、絶対炎上してただろうなと思って。インディアンスってなったとき、ちょっとだけホッとしたんですよ」

 野外で行われた敗者復活戦。当日は、ぺこぱの出番中に路上の宣伝カーの音が重なるなど、不運も重なった。ただ、実際のネタのウケ方を見ても、松陰寺の言うように比較的名前が知られた存在であることが視聴者投票の結果を押し上げたのは確かだろう。そして、こういったエピソードを語ることがまた、彼らの人気を支えてしまうかもしれないというジレンマ。

 売れた者には売れた者の、売れていない者には売れていない者の、それぞれの場所での葛藤がある。

 話は戻って『アメトーーク!』の「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」。番組内ではバイト内容や、40過ぎてバイトやめられない芸人のあるある、芸人を続ける支えになっている先輩の言葉など、笑いをまぶしながらも悲哀が見え隠れするエピソードが続いた。

 中でも、「なぜ芸人を辞めずに続けるのか?」と尋ねられたときの、レアレア・桑折の言葉がズシりとくる。

「もう今さら辞めたとて、何も変わらないような気がして。辞めてしまうと、ただの45歳フリーターじゃないですか。やってることによって、何かしらのきっかけで人生が変わるかもしれない切符を握りしめてるような気がして。これを放したら駄目だと思って。で、辞めずにいます」

 他の芸人たちも、「(芸人を)辞めてからの人生のほうが成功しない気がする」(5GAP・秋本)、「辞めた芸人がいると、その覚悟がすごいと思って尊敬する」(鬼ヶ島・野田)、「辞めるきっかけ、わかんないですよね」(神宮寺しし丸)などと同調の言葉が続く。

 40歳を過ぎて芸人だけでは生活ができずにアルバイトを続ける。それはなんだか合理的ではない選択にも見えるのだけれど、それはおそらく実際に選べる選択肢が複数ある立場から見える世界なのだろうとも、桑折らの言葉を聞くと感じる。

 彼らが自らたどり着き、同時にたどり着かざるをえなかったところ。「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」のそれを、賢くない選択として断じてしまうのでもなく、芸人の残酷物語として業界批判に落とし込むのでもなく、かといって家族愛や芸人同士の支え合いの物語に一気に美しく昇華するのでもない、そんな語り方はないものか――。

 番組のエンディング。TAIGAが番組収録を終えて家に戻り2歳の息子に語りかける。「トーマスのプラレール買ってやれるように頑張るな。パパの給料で買ってあげられるように頑張るわ」。息子はまだおぼつかない言葉で父親に問いかける。

「うーばーいーつ?」

 面白くも苦味のあるオチが残った。

  • 1/26 19:00
  • サイゾー

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