日曜夜の千鳥という文脈、芸人たちをかき混ぜていく第7世代の潮流

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(10月25~31日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

千鳥・ノブ「シ~ンじゃ! 見てみぃ! シ~ンじゃ!」

 ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で伊佐山泰二を演じた市川猿之助が、ここのところバラエティ番組によく出ていた。当然そこでは番組MCなどから『半沢』の話題を振られ、猿之助が「詫びろー!」などと絶叫する時間が必ずあった。どの番組でも一発ギャグのように「詫びろー!」が求められるので、最近は「芸人みたいになってきた」と本人が自虐的に語る場面も見られる。そんな画面が、なんだかツラい。

 もちろん、ドラマ内での伊佐山は面白かった。セリフが話題になったのも頷ける。けれど、あれが面白かったのは「現代の時代劇」とも呼ばれたあの『半沢』の中だったからで、同じものをバラエティにそのまま移し替えても同様に面白いわけではない。

 ドラマ、バラエティ、報道といったテレビ番組のジャンルは文脈だ。文脈が変われば同じメッセージでも意味が変わる。にもかかわらず、ドラマの外でも変わらず“面白いもの”として提供され周囲も盛り上げている感じが、なんだかツラい。あの絶叫に抱腹絶倒している人もいるのだろうけれど、個人的にはいたたまれなくなる。もちろん、猿之助には歌舞伎の観客の裾野を広げるためといった目的があるのは理解する。理解するからこそ、かもしれない。

 文脈が変われば意味が変わる。番組のジャンルだけでなく、放送の時間帯もそうかもしれない。どの時間帯=文脈に乗るかで同じ番組でも意味合いが変わってくる。深夜帯にトガッた企画をやっていた番組がゴールデンタイムやプライムタイムに“上がる”と、深夜時代の面白さが無くなってしまうのではと、しばしば懸念される。実際、時間帯が変わるとすぐに終わってしまったり、深夜時代とはテイストが大きく変わってしまう番組もある。

 その点、ともに深夜時代から日曜22時台に放送時間が移った『テレビ千鳥』と『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』(いずれもテレビ朝日系)は、深夜時代から変わらず面白い。

『テレビ千鳥』はタイトルが示すとおり、千鳥がやるテレビ。2人がただただ面白いことをやっているバラエティ番組だ。

 18日と25日に2週続けて放送されたのは、深夜時代の特番でも好評だったノブの歌唱企画。1か月かけて練習した歌をノブがスタジオで披露する企画である。

 音痴というよりも極端に歌が下手という言い方が適切に思えるノブの歌唱力は、今回も健在だ。そんなノブへの歌唱指導はボイストレーナーもついたものだが、大悟流にアレンジされたレッスンにノブが振り回されていく。ハイレグのパンツを履かされたり、バンビーノの「ダンソン」のネタをやらされて足を痛めたり、股間にマラカスを入れてもっこりさせながら歌わされたり。大悟に終始振り回されるノブの嘆きツッコミに笑ってしまう。

 今回の一番の笑いのポイントは、予期せぬところからやってきた。喉を締めて歌いがちなノブに、吉幾三風に話す感じで歌うようトレーナーがアドバイス。すると、大悟が『俺ら東京さ行ぐだ』を歌っていたときの吉幾三の消防団風の衣装をノブに着せる。ノブはその衣装で吉の『Dream』を歌い始めるのだが――。

「住み慣れた……我が家に」

 奇妙な間を開けながら歌うノブ。彼らの漫才には、童謡『サッちゃん』を独特の節回しで歌う大悟にノブがツッコミを入れるというネタがある。が、今回はそれとは逆に、大悟がノブに「クセがスゴい!」とツッコミを入れる展開となった。

 そして1か月後、ノブはスタジオで歌声を披露する。練習の成果もあり、その歌は特に大きな引っかかりはない。ということは、面白みも特にない。そのまま普通に歌は終了。静寂に包まれたスタジオでノブが叫ぶ。

「シ~ンじゃ! 見てみぃ! シ~ンじゃ!」

 最終的に、オチとして吉幾三の『Dream』を歌うノブ。その歌は「住み慣れた……我が家に」とやはり「クセがスゴい」節回しで、出演者と視聴者の笑いを誘うのだった。

『相席食堂』(朝日放送)ではロケをする芸能人のVTRを見ながら、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)では芸人のネタを見ながら、千鳥の2人は独自の切り口や言い回しでツッコミを入れていく。対象が置かれた文脈を少しズラし、自分たちの笑いの文脈に引っ張り込みながら、“面白いもの”を作り上げていく。いろいろなものを千鳥風の笑いにしていくという意味で、千鳥自体がひとつの文脈になっているという面もあるかもしれない。

 そんな千鳥がやるテレビは、時間帯が変わっても変わらない面白さをお届けする。

『テレビ千鳥』の直前、日曜日の22時台に放送されているのが『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』だ。

 この番組の特徴は、今が旬の第7世代の芸人たちと、旬を過ぎた芸人たちが同時に出ている点にある。爆笑問題と同時代に若手として人気を博した、ボキャブラ世代とも呼ばれる芸人たちも定期的に登場する。

 25日の企画は、今年の『キングオブコント』(TBS系)で3位に輝くなど勢いのある若手コント師、空気階段の悩みに芸人たちが答えるというもの。悩みの相談相手として登場したのは、ボキャブラ世代のBOOMERとプリンプリンだ。彼らは、収録中に嫌なことがあると逃げ出してしまいそうになるという水川かたまりの悩みに、収録中であろうとベンチプレスをやれと言ったり、ギャンブルで多額の借金を抱えている鈴木もぐらに、予想はするけどお金を賭けない「エアー競馬」をしろと言ったり、助言として大きくハズしたものではないけれど、それだけにバラエティ番組的には少しズレたアドバイスを繰り返す。

 さらに取り上げられていたのが、BOOMERの河田キイチとプリンプリンの田中章の間のトラブルだ。爆笑問題が所属する事務所、タイタンのライブに出演予定だった両組。しかし、事前の告知でプリンプリンの名前が消えていたらしい。おそらく運営側のミスと思われるこの一件。だが、田中は河田が勝手に自分たちの出演を阻止したとなぜか思い込んでいるという。

 憤る田中。爆笑問題をはじめ周囲がこれをなだめる。しかし、当人は勘違いを頑として認めようとしない。互いに意固地になり歩み寄りを見せないこの「いい大人同士のトラブル」に、第7世代のEXIT・りんたろー。が場をひっくり返すように叫ぶ。

「仲良くしろよ!」

 ムーブメントとしての第7世代は、芸人の若返りを引き起こしたと言われる。けれど同時に、旬を過ぎたと思われる芸人たちにスポットライトが当たる現象も起こっている。6.5世代などと呼ばれる芸人たちもそうだ。『シンパイ賞』のボキャブラ芸人への再注目は、そういった現象の最たるものだろう。鍋のご飯をかき混ぜて、底にこびりついたおコゲの香ばしさを楽しんでいる状態。

 芸人たちをかき混ぜていく第7世代の潮流。2020年にもなって、芸歴30年近いボキャブラ芸人の「いい大人同士のトラブル」がテレビで話題になるなんて、このムーブメントは奥が深い。時間の経過とともに一種の哀愁というかわびさびを帯びた先行世代を、“面白いもの”として改めて解釈し直す文脈を、用意していると言えるかもしれない。

 だからもしかすると、そのうち用意されるのかもしれない。「バラエティで『詫びろ』と叫ぶ市川猿之助」というモノマネが面白くなる文脈も。

 

  • 11/3 20:00
  • サイゾー

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