「夫のパンツと、自分の洗濯物を一緒に回したくない」妻が夫を、生理的に受け付けなくなったのは…

“男女平等”が叫ばれている、昨今。

しかし「6歳未満の子を持つ夫婦の、1日あたりの家事・育児関連時間」は妻が平均7時間34分。

それに対し、夫は1時間23分(総務省「社会生活基本調査」)ほどだという。

日本における夫の家事参加率は、先進国の中でも最下位なのだ。

家事・育児に非協力的な夫。それに対し不満を抱き、愛想を尽かす妻たち。

これは、そんな「夫力(オットリョク)」皆無の男が、離婚を免れるために日々成長していく物語である…。

◆これまでのあらすじ

流星という謎のイケメンが配信する「夫力向上委員会チャンネル」の動画にハマった俊平。しかし相変わらず“夫力”は向上していないのだった。

一方の柚葉は、出かけた先のスーパーで偶然、流星と出会ってしまい…?

▶前回:帰宅すると、異様に機嫌のいい妻が…。夫の知らぬ間に、女がコッソリ会っていた相手


今朝から、妻の様子が変だ。

お風呂あがりには、見たこともないほど化粧水をバシャバシャとつけていたし、今は念入りにフェイスパックまでしている。

「柚葉、どうしたの?明日って何かあった?」
「前に話した通り、友達とお茶する予定だよ~」
「そっか、そうだったね」

― 友達って誰だろう。

気にはなったが、言葉をグッと飲み込む。夫婦とはいえ、過干渉は良くない。それに、昼間にお茶をするくらいなら、本当に友達なのだろう。

こうして、翌日の土曜日。ルンルンと鼻歌を歌う妻を送り出そうとした、そのときだった。

ドアノブに手をかけた柚葉が、急にこんなことを言い出したのだ。

「あ、俊平。悪いんだけど、洗濯物だけお願いできるかな?」

洗濯なんて、たかがボタン1つである。楽勝だし、妻がいない間に洗濯をしておくなんて“夫力”を見せつけられるチャンスだ。

「洗濯物?うん、任せておいて!」

そう笑顔で送り出したこのときの自分は、なんと能天気だったのだろうか…。

俊平がまたしても“やらかした”こととは…?

夫が考える洗濯=洗濯機のボタンを押すだけ


妻を見送り、さっそく洗濯機の前に立つ。

2つある洗濯カゴの中にある物を、とりあえず全部洗濯機に放り込む。そして棚から液体洗剤を取り出し、計量して入れて、スイッチを押す。

「なんだ、やっぱり簡単なことじゃないか」

グワングワンと音を立てて動き始めた洗濯機をしばらく見ながら「これなら自分でもできそうだな」と、改めて思った。

今の時代、機械の進化は素晴らしい。こういう全自動のツールがあれば、家事なんて楽勝である。

「さーてと。柚葉もいないし、今日は休みだし…。ゲームでもしようかな」

こうして僕はダラダラとゲームをして、間にUber Eatsで好きな物を頼み、楽しい休日を送っていた。

つまり柚葉が帰宅して洗濯物を見るまで、僕は完璧に“洗濯”という任務をこなせたと思っていたのだ。


「ただいまぁ」
「柚葉、おかえり〜。楽しかった?」

帰宅して、そのまま手を洗うために洗面所へ向かった柚葉。

だがなかなかリビングへ顔を見せないので、心配になって部屋を覗くと、妻が洗濯機の前で立ち尽くしていた。

ちなみに我が家の洗濯機は、乾燥機能付きの全自動だ。いつの間にか乾燥まで終わっていた洗濯機に感心しながら、柚葉に笑いかけた。

「どうした?あ。ちゃんと洗濯しておいたよ〜!洗濯って、簡単だね」

だが僕がそう言った途端、どこからか「プツン」という音が聞こえたような気がした。

「俊平…。これがあなたの言う“洗濯をした”ということなの?」
「えっ?」

そう言うと、何かを僕の顔の前に突き出してきた柚葉。それをよく見てみると、最近妻が頻繁に着ている、お気に入りのニットだった。

「それも洗ったよ!」
「あのさ…。なんでこれを洗ったの?」

最初は、意味がわからなかった。だって僕は、言われた通りに洗濯をしたのだから。

だが柚葉の口調は、静かながらも、怒りを秘めているのが伝わってきた。

「これの、どこが“洗濯”なわけ?洗濯機に洗濯物を入れて、それで終わりだと思ってないよね?」
「え?それ以外に何があるの…?」

柚葉の顔から、笑顔がサァッと消えていった。

家事のゴールを知らない夫に、妻の怒りが爆発し…

妻が、夫のパンツと自分の洗濯物を「一緒に洗いたくない」と思うとき


「まず、ここに洗濯カゴが2つあったよね。中身は、ちゃんと見た?」
「えっと…(み、見ていません)」

最後の言葉は、怖くて飲み込んだ。そういえば、どうして2つもあったのだろうか。

「1つは、ザブザブ洗える洋服やタオル。もう1つは、色落ちとかする可能性があって、オシャレ着洗いが必要な物なんだよ」

― オシャレ着洗いって何??

頭の中が混乱している。洗濯物は、まとめて1回じゃダメなのだろうか。

「こっちに入っていたカゴは、一緒に洗っちゃダメなの。手洗いかクリーニング、もしくは専用の洗剤を使わないと」

そう淡々と話す柚葉が握っている、お気に入りのニット。ようやく気がついたが、まるで子ども服並みに小さく縮んでいる。

「うわっ、ごめん…」
「いや、もう大丈夫だから」

家事を舐めていたのかもしれない。その気になったら、自分でもできると思っていた。なぜなら柚葉は、毎日サッサとこなしていたから。

だからそこまで労力もかからないと、どこかでタカをくくっていたのだ。

「後は私がやっておく」

柚葉が、ガックリと肩を落としていることが伝わってきた。

― あれ?結局僕、何も変われてなくないか?

自分が情けなくなり、その晩すがるように「夫力向上委員会チャンネル」のYouTubeを見る。すると、思わずゾッとしてしまった。

― みなさんこんにちは。夫力向上委員会・実行委員の流星です。さて今日は、洗濯について考えていきたいと思います。


悔しいが、相変わらずイケメンである。しかも偉そうでない語り口調も、また悔しいところだ。

― 「洗濯をする」ということを、ただ洗濯機のボタンを押せばいいだけと、思っていませんか?


「チェッ」

思わず舌打ちをしてしまう自分がいる。なぜ毎回、こうも痛いところを突いてくるのだろうか。

― 洗濯物は、洗濯機を回すだけでなく、必要な物は手洗いしたり、乾燥機にはかけずに浴室乾燥機能を使って干したりもします。そして最後は、畳んでクローゼットにしまうこと。ここまですべてやって、初めて洗濯と言います!


また、完敗だ。

見えない(視覚的には見えているが、実際には会っていないから)敵に負けた気がした。

「なんなんだよ、この流星って男は…」

そう嘆きながら、動画を消そうとしたときだった。最後の締めの言葉が、僕の心にグサッと刺さったのだ。

― ちなみに「夫のパンツと、自分の物を一緒に洗いたくない」と言われたら、もう終わりです。そうなる前に、自分の存在自体、家庭から洗い流されないように気をつけてくださいね!


笑顔で語る流星の顔を、まっすぐ見ることのできない自分がいた。

なぜなら今朝、洗濯機を回そうとしたとき。なぜか僕のパンツと、妻の下着が分けられていたからだ…。

◆妻の日記◆


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9月19日(日曜日)

どうしよう。流星くんから呼び出されて、会ってしまった。

昼間だし、お茶だけだし…。別にやましいことはないのだけど、やっぱり2人きりで会うのはやめた方がいいだろう。

でも、どうして流星くんは私に連絡してきたのだろうか?それになんで、お茶に誘ったんだろう?

…まさか、変な壺でも買わされるのかな。

でもとりあえず、楽しかった。心がフワフワした。

しかし俊平の夫力のなさには、改めてガッカリだ。結婚してから、一度も洗濯機を回したことがない夫。

洗剤の場所がわかっただけで奇跡だけれど、もう細かくガミガミ言うのも疲れちゃった。

どうしたら夫は、変わってくれるのだろうか…。

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▶前回:帰宅すると、異様に機嫌のいい妻が…。夫の知らぬ間に、女がコッソリ会っていた相手

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糸クズと、夫。

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