いきなりキレだした彼氏が、部屋を飛び出して…。“空白の4時間”を過ごしていた、まさかの場所

結婚前の、男女の葛藤。

「本当にこの人と結婚していいの?」

大好きなはずなのに、幸せなはずなのに…。そんな想いとは裏腹に、不安は募るばかり。

カレンダーを見ると“結婚予定日”まで残りわずか。そんなタイミングで発覚した、改姓トラブルや妊娠・出産に関するアレコレ…。

2人は無事に危機を乗り越え、幸せな結婚を迎えられる?

◆これまでのあらすじ

歯科衛生士として働く桃香は、婚約者である陽介から海外赴任の可能性を告げられた。

今のクリニックを辞めたとしても、何か仕事を続けたいと思い、WEBライターの仕事を始めることに。こうして桃香は、順調に副業をスタートさせたと思っていたが…?

▶前回:モテなかったはずの親友が25歳で寿退社して…。彼女の結婚式でかけられた、キツすぎる一言


「婚約者の海外赴任で、仕事を辞めることになるかもしれないんです。いつか資格が使えなくなっても、手に職をつけておきたくて…」

桃香は、今現在働いている歯科クリニックにも相談して、副業の準備を進めていた。

それから数日後。無事に許可が下りて、歯科衛生士として働くかたわら、ライターとしてデビューを果たすことができたのである。

― ようやくスタートラインに立てたな。ここから両立、頑張らないと。

執筆作業はおろかノートパソコンを触ることも、これまでほとんどなかった桃香。

ブログを書いていた経験のある陽介に手伝ってもらい、文章の添削からショートカットキーの使い方まで教わることになった。

おかげで、少しずつ副業のための作業にも慣れてきた頃。

「陽介だって忙しいのに…。本当にごめんね」

「全然だよ。俺が仕事中でも、困ったらいつでも話しかけて。桃香の役に立てて、俺も嬉しいからさ」

そんなふうに言ってくれていた陽介と、まさか険悪なムードになってしまうなんて。このときの桃香は予想もしていなかったのだ。

兼業に戸惑う桃香に、陽介が口にした辛辣な一言とは?

部署異動で毎日仕事に追われる陽介と、歯科衛生士をしつつライターとしても働く桃香。

最近の2人は、休日といえど恋人らしい時間を過ごすこともなく、お互いパソコンに向かって作業をするのが当たり前になっていた。

家事はからっきしの陽介も、仕事のことになるとスイッチが入ったように別人になる。桃香にとってメンター的存在になっていたのだ。

おかげで副業の収入も少しずつ増えていて、すべてが順調に進んでいると思っていた。…この日までは。

「相談したいことがあるんだけど、ちょっといい?」

ある休日の夜。桃香は夕飯の片付けを終え、ダイニングで作業をしていた陽介に声をかけた。

「どうしてもいい表現が思い浮かばなくて…。一緒に考えてほしいんだけど、今いいかな?」

仕事をしている陽介の邪魔をするのは気が引けたが、コーヒーの入ったマグカップをそっと彼の横に置きながら尋ねる。

すると陽介は、ため息をつきながらこう言ったのだ。

「ごめん。悪いけど、俺も忙しいんだから少しは自分で考えてよ」

「…えっ?」

陽介から飛び出した予想外の言葉に、桃香は驚きを隠せない。

― たしかに頼りすぎていたかもしれないけど。二人三脚で頑張ろうって言ってくれたのは、そっちじゃん。

「兼業とはいえ、ライターとして報酬も貰ってるんだから、もうプロでしょ。俺に聞いてばっかりで、ライターとしてのプライドはないわけ?」

以前から不満があったような口ぶりに、桃香も思わずムキになって言い返してしまう。

「私に不満があったなら、言ってくれれば良かったのに。文句を言い合うんじゃなくて、話し合いをしようって前から決めてたじゃない」


突然怒り出した陽介も、その言葉にハッとしたようだ。今度はうつむいて、ゆっくりと立ち上がった。

「…ごめん、言い過ぎた。最近、仕事がキツくて桃香に当たっちゃったわ。ちょっと頭冷やして隅田川沿い散歩してくる」

近頃の陽介は朝6時に家を出て、帰宅するのは23時過ぎ。それでいて休日も仕事をしているから、働きすぎではないかと桃香も心配していた。

― よし。帰ってきたらマッサージでもしてあげよう。

しかし、すぐ帰ってくると思っていた陽介が帰宅したのは、4時間も経ってからのことだったのだ。

「一体こんな遅くまで、どこ行ってたの?心配したんだよ。LINEも返ってこないし…」

「ああ、ごめんね。コンビニ行ったら、ちょうど友達に会ってさ…。あと、これさっきのお詫び」

そう言って、コンビニのスイーツを差し出してきた。

― コンビニでそんなに立ち話できるわけないでしょ!嘘がヘタにもほどがある…。

怪しい言い訳を続ける陽介を、桃香はギロリと睨む。その視線に居たたまれなくなったようで、陽介は“空白の4時間”の出来事をポツポツと語りだしたのだ。

「頭を冷やしてくる」と出かけた陽介が、行っていた場所とは

「偶然、友達に会ったらさ。『独身最後だし、競馬行こうぜ』って言われて。それで…」

「ウソでしょ、信じられない…」

桃香は何かあったのかと心配していたのだが、馬鹿馬鹿しくなり声を荒らげた。

「一緒に貯金頑張ろうって言ってたじゃん。しかも婚約中なのに独身気分でお金使うのってさ、これから結婚するって自覚がないんじゃない?」

「なんだよ、それ。別に、好きなことにお金や時間を使っても良くない?」

どうやら毎日、会社で怒鳴られてストレスが溜まっているらしい。「稼いでいるんだし、気分転換くらい好きにさせてくれ」というのが、陽介の言い分だった。

だからといって八つ当たりされる筋合いはないし「結婚前だから」と好き勝手遊びに行かれるのも、桃香は許せなかったのだ。

「…もういいよ」

その日は結局、ソファで寝ると言いだした陽介。2人は初めて、別々の部屋で夜を過ごした。


明けて、日曜日の朝。桃香が目を覚ますと、キッチンから甘い香りがした。

恐る恐る寝室のドアを開けると、そこには桃香の大好物である“フレンチトースト”を焼く、陽介の姿があった。

「…おはよう」

ぎこちない様子で、声を掛けてくる陽介。

洗面台で身支度を整えた桃香がダイニングテーブルに座ると、いれたてのコーヒーとフレンチトーストが運ばれてきた。

「昨日は本当にごめん。今、仕事がいっぱいいっぱいで…。余裕なくてイライラしてたんだ」

そう言う彼の目の下には、うっすらクマがある。その姿を見た桃香は、自分の頑固さが恥ずかしくなった。

「ううん、私も陽介に甘えすぎてた。いくら結婚するとはいえ、干渉しすぎは良くなかったし」

こうして、ようやく仲直りできた2人。その後に食べたフレンチトーストは、いつもより甘く感じたのだった。



その日の午後。桃香は大学時代の友人である芙美、絢と『ザ・カフェ by アマン』の、ハロウィンアフタヌーンティーへ行く約束をしていた。

会うのは久しぶりだったが、SNSでは繋がっているメンバー。だからお互いの近況は、何となく把握している。

「桃香、おめでとう。まさか、このコロナ禍で結婚相手が見つかるなんてね」

「本当に良かったじゃん!彼のお名前は?どんな仕事してるの?」

会うなり、冷やかしながらも結婚を祝福してくれた2人。まるで自分のことのように喜んでくれる彼女たちの様子に、桃香も思わず笑みがこぼれる。

「ありがとう!私も、今の相手と結婚するなんて思ってなかったから、ビックリだよ。彼はね…」

そう言って陽介のことを話し出した桃香は、このあと友人たちが見せた反応に、ショックを受けてしまうのだった…。


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友人たちの一言に、桃香がモヤっとしてしまったワケとは

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