【勝負の分かれ目 ローズS】福永騎手のコーチングが実を結び、アンドヴァラナウトが重賞初制覇
前日、一時は不良まで悪化した中京の芝コースは良馬場に回復し、第39回ローズステークスの出走馬18頭がゲートを飛び出した。速いスタートを切った10番のエイシンヒテンが内に切れ込みながらハナに立った。7番ストゥーティ、外から上がってきた15番オパールムーン、3番アイコンテーラーらがつづき、1、2コーナーを回って行く。福永祐一が騎乗する4番人気のアンドヴァラナウトは先頭から7馬身ほど離れた6番手の外につけた。
「初めてコーナー4つのコースで、どういう走りを見せてくれるか半信半疑だったのですが、上手く対応し、いい走りをしてくれました」と福永。
1番人気のアールドヴィーヴルは、アンドヴァラナウトから3馬身ほど遅れた中団の外目を抜群の手応えで進んでいる。1000m通過は1分1秒2。数字だけ見るとスローに思われるが、馬群は先頭から最後尾まで12馬身ほどの縦長になっている。
「もう少しスローになると思っていたのですが、思ったより引っ張ってくれる馬がいて、この馬にはありがたかったです。馬の後ろに入ることができましたし、いいポジションで脚を溜めることができました」福永がそう振り返ったように、コース上での感覚は、時計以上に速かったようだ。2番人気のタガノパッションが2馬身ほど後ろに控え、5番人気のオヌール、3番人気のクールキャットといった人気どころかつづく。
エイシンヒテンが2番手を3馬身ほど離した単騎逃げのまま3、4コーナーを回り、直線へ。ラスト400mを切り、2番手以下の馬たちがエイシンヒテンをかわしにかかるが、エイシンヒテンはしぶとく二の脚を使って、そう簡単には並ばせない。
このまま逃げ切るかに思われたが、ラスト200m付近で、外からアンドヴァラナウトが豪快に伸びてくる。エイシンヒテンに並びかけてじわじわと伸び、1完歩ごとに差をひろげて行く。さらに後ろから馬の間を抜けてアールドヴィーヴルも迫ってきたが、勝負は決していた。福永の右ステッキに応えて末脚を伸ばしたアンドヴァラナウトが、2着のエイシンヒテンに1馬身1/4差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。
「外に誘導したら非常に鋭く反応してくれて、とてもいい内容で勝ってくれたと思います。上手に息を入れて走ることができています。体が整っていないわりに気持ちだけで走るところがあったので、心身をフィットさせていくことが課題でしたが、教えてきたことが実を結びました」そう話した福永は、この馬のデビュー戦からずっと競馬を教えてきた。今回もソツのない騎乗で、見事に能力を引き出した。
(文:島田明宏)