カウンタックバカによる「新型カウンタック評」

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆世界限定112台の新型を見て、カウンタックバカは何を思ったのか?

新型カウンタックはありなのか? なしなのか? カウンタック復活のニュースは、買えない人も巻き込んで大きな話題になりましたが、数少ない元祖カウンタック・オーナーは、この衝撃の復活をどうとらえたのか? たまたま身近に元祖カウンタックを2台も買ったオーナー(カウンタックバカ)がいましたので、新型カウンタック評を述べてもらいました!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信(流し撮り職人)、アウトモビリ・ランボルギーニ=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆まさかのカウンタック復活!

 ランボルギーニ・カウンタックは、人間をバカに変えるスーパーカーである。

 正確には、「人間をバカに変える格好」だろうか。人はカウンタックの性能とは無関係に、その格好を見ただけでバカになる。

 日本には、軽トラをベースに「コカウンタック」を自作したクルマバカがいるが、中国にも25万円で「陳(本人の名前)式カウンタック」を自作したバカがいる。イギリスには、地下室でカウンタックを自作し、完成後に掘り出したバカがいる。人はカウンタックを見ると、理性が崩壊するのである。

 私も11年前、カウンタックを買ってバカになった。自分だけでなく周囲もバカになった。カウンタックで走ってると、ケータイをクルマの窓から突き出して狂ったように追いかけてくるバカがいる。サービスエリアに止めれば子供たちが集まってきて、ママが「絶対触っちゃダメよ!」と金切り声を上げる。通りすがりの自転車のジジイが「何㎞出るの?」と言って写真を撮る。そんな現象、フェラーリではありえない。

◆10年ぶりにカウンタックを買った

 昨年私は、もう一度バカになりたくなって、10年ぶりにカウンタックを買った。10年前は1500万円で買えたカウンタックの最終モデル「アニバーサリー」が、3000万円に値上がりしていたので、半分しか買えずに2名の共同所有になったけど、買うことは買った。

 そして迎えた今年。カウンタック誕生50周年を記念して、カウンタックが復活してしまった!

 車名は「ランボルギーニ・カウンタックLPI800-4」。最初に発売されたカウンタックは「LP400」で、「縦置きミッドシップ4リッター」を意味したが、新型は「縦置きミッドシップハイブリッド800馬力4WD」を意味している(正確には814馬力だけど)。

 いや、カウンタックは性能なんかどうでもいい。格好がすべてなのだから。で、新型の格好はどうかというと、ほぼそのまんま! ただサイズがデカくなっただけに近い。

◆リトラクタブルヘッドライトが固定式に

 もちろん、細かいところはいろいろ違う。リトラクタブルヘッドライトが固定式になったのは、歩行者保護のため、リトラの新型車が禁止されているから。元祖のようにドアが真上ではなく少し斜め上に上がるのは、ベースのベースがランボルギーニ・アヴェンタドールだから。それ以外はほとんどそのまんま、元祖カウンタックに近い格好である。

 あまりにもオリジナルに近いので、オーナーとしては、イイともダメとも感じない。これがぜんぜん違う格好なら、「こんなのカウンタックじゃない!」ってことになるけど、あまりにも忠実なので、拍子抜けして感動も反感も沸きません。

◆生産台数は、わずか112台

 カウンタックを持ってない元スーパーカー少年たち(現オッサン)の反応もおおむね同様で、出てくるのは小さな賞賛か小さな反感程度。ほとんど無風状態だ。あのカウンタックが復活したのだから、カーマニア的には大事件のはずなのに、これほど波風が立たないのは、デザインがそのまんまだったことに加えて、新型は死んでも買えないという現実があるだろう。

 新型カウンタックの生産台数は、わずか112台。元祖が合計約2000台作られたのに比べてもウルトラ少ない。日本には11台が割り当てられ、即日完売したという。価格は未発表。お買いになるみなさまは、値段なんか見ないで注文してるんでしょうが、4億円くらいですかね? ベースになったランボルギーニ・シアン(限定63台)が3億9000万円だったので……。

 これまでカウンタックには、古ければ古いほど値段が高いという法則があった。私のアニバーサリーは今3500万円くらいだが、最初のLP400は今では1億円超という具合に。作ったばっかりのカウンタックが4億円は高すぎるだろ! ならリトラでドアが真上に開く古いカウンタックでええわ! なんて言っても新型は買えないんだけど。

◆【結論!】

元祖カウンタックは、カネを出せばなんとか買えるけど、新型カウンタックは逆立ちしても買えない。買えないクルマには夢を抱けない。だから元スーパーカー少年たちも、新型にはあまり関心がないのでしょう。

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/9/19 8:53

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