『青天を衝け』視聴率低下も心配なし! 地味な主人公・渋沢栄一がもたらすであろう“幕末オールスターズ”の活躍

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──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 第2回の視聴率が20%から16.9%に落ちてしまった『青天を衝け』。想定内という声もありますが、筆者としては「だいぶ下がったな」という感がありました。

 第2回を拝見したところ、メインが獅子舞の話と、吉沢亮さん演じるヤング渋沢栄一のフンドシ姿で(笑)、物語がほとんど動かなかったことを考えると、第3回はどうなってしまうのか、という懸念はありますね。

 筆者の感覚にすぎませんが、アニメの視聴者と比べて、ドラマの視聴者が見切りをつけるのは非常に早く、空気が冷めてしまうと後でいくら良い内容になっても、リカバーしきれないところがあるので、ここらでなんとか踏ん張っていただきたいものです……。

 現在放送中の朝ドラ『おちょやん』も、内容が良くなってきた割に数字が上がらないのは、スタート時の内容で大コケしたからのような気がしてなりません。

 今回はそういうこともあって、でもまぁ、もうちょい長い目で見ていきましょうよ、と『青天~』のドラマの最大の「見どころ」になるであろう、渋沢栄一の“人脈”についてお話してみようかな、と思います。

「幕末オールスターズ」登場の可能性

 渋沢栄一が「大河ドラマ」の主人公だと聞いて「地味すぎない!?」とびっくりしたのは、筆者だけではないでしょう。しかし、第1回を見ていて気づいたのは、渋沢栄一自体は地味でも、渋沢栄一が「仕事」で関係する人たちというのは、実は「幕末オールスターズ」と呼んでもよいくらいに「ド派手」な人たちばかりなんですね。

 筆者は歴史エッセイストして執筆活動をしている者ですが、書籍などを書き下ろす場合に取り上げるのは、「誰でも知っているし、面白いエピソードが多数あり、人気もある人」を扱うようにしています。そういうコンテンツ力のある人を「Sクラス」などと勝手に呼んでいるのですが、Sクラスほどではないのが「Aクラス」、そのAクラスよりさらに……などとランク付けをしていくと、渋沢栄一本人は「Cクラス」程度だと思います。あくまで筆者の感覚ですが。

 渋沢については「知る人ぞ知る」程度の知名度、そして「面白いエピソードがある」のは認めますが、それらは、愛人とのエピソードなど性の話題に集中している感はいなめませんので。

 しかし、渋沢本人がかかわる人物……例えば草彅剛さん演じる徳川慶喜は確実に「Sクラス」なんですよね。今回の『青天~』では、この徳川慶喜が第2の主人公だということになっています。

 それなら、なぜ慶喜を主人公にしなかったのか? というと、確実にダメな理由があるのです。

 本木雅弘さんが主演した『徳川慶喜』(1998年)という先例大河がある以上に、明治維新の直後から、ほぼ35年にわたって慶喜が“隠居”している点ですね。

 ところが、維新までの慶喜は、変わりゆく世界の渦の真ん中に(本人は望む・望まないにかかわらず)ずっといる人物ですから、彼がかかわる人物は本当にSとかAクラスの人がめちゃくちゃ多いんですよ。

 その慶喜にCクラスの主人公である渋沢が、食らいついていけるのであれば、あくまで慶喜を介してですが、すごいメンバーと渡り合うことができるのです。それもドラマの最初期から……。

 これは、『青天~』の大きなセールスポイントになるはずなんですよね。

 たとえば、慶喜については、七郎麻呂時代から、将軍の牙城・江戸城内にあった一橋家の屋敷で暮らし、その後も幕末の将軍家、大奥関係の有名人と日々渡り合うことになります。

 この中には、家定(13代将軍)、家定の3人目の御台所として薩摩から嫁いでくる篤姫(のちの天璋院)、さらに大奥の有名人物として、滝山などの奥女中も出てくるでしょうし、篤姫の絡みで、彼女のお輿入れをサポートした西郷隆盛も早い時期から登場させることができると思います。しかも、彼らを「ほぼ同時」に動かしうるというのは大きな強みになるかと思うのですわ。

 また、篤姫以上に慶喜とは仲が良かったとはいえませんが、家茂(14代将軍)や、その御台所、つまり皇女としてはじめて大奥に嫁ぐことになった和宮も印象的な形で登場させることが出来ます。

 幕臣としては勝海舟などを扱えるでしょうし、勝を介して、坂本龍馬ともつながりえます。敵対することになりますが、西郷隆盛らもドラマの要所に登場させられます。渋沢本人と史実でどの程度のやり取りがあったかはともかく、ドラマ内での人間関係を広げていける可能性は十分にあるわけです。

 あと、ここのところ毎回、ドラマが「徳川家康です」の自己紹介で始まっているのですが(笑)、家康さんも忘れてはいけませんね。

 ……となってくると、今回の『青天~』は決して地味どころか、その気になれば「幕末オールスターズ」を物語に引き込むことができる、かなり豪華な作品なのでした。あくまで可能性の話ですが。

 前の「大河」である『麒麟がくる』では、本当にSクラスの登場人物といえば、明智光秀本人と、織田信長、豊臣秀吉(正確には羽柴秀吉)、徳川家康くらいしかおらず、その4人を同時に出して絡ませるのはラストあたりしかできなかったので、それに比べるといかに『青天~』が豪華であるか、ざっくりと話しただけでも実感していただけると思います。

 また、2回目まで放送を拝見したに過ぎませんが、歴史エッセイストとして『青天~』に期待できそうな点がもうひとつあります。それは、江戸城の人々の日常生活をサラッと描写しているシーンが多いところです。

 吉幾三さん演じる徳川家慶(12代将軍)は、初登場シーンから奥医師に舌を見せて、問診を受けていました。筆者としては、ああいう工夫は良いな、と思って見ています。

 当時は、医師とはいえ、高貴な人たちの身体には直接触れないようにしており(というか、医師の身分自体があまり高くはなく)とくに大奥の高貴な女性を相手にする場合は、脈も糸を手首にまきつけて図る「糸脈」という方法が取られていました。

 本当にそれで診察できていたのかは不明で、また映像にするのは厳しいでしょうが、現代の感覚からかけ離れた、このようなちょっとしたシーンからも高貴な人々の日常生活の描写も楽しめるのではないでしょうか。おそらく歴史考証をしっかり行いながら登場人物をじっくりと描くことのできる「大河~」だからこそ出せるシーンだと思ったりしますよ。

 ということで、初回視聴率が久々の20%以上だったのは、2013年の『八重の桜』以來のことでしたから、数字が下がってしまったのは残念ですが、今後も当コラムは『青天~』に注目していきます。

  • 2/28 12:00
  • サイゾー

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