2.5次元俳優・高崎翔太のファンへの思い「胸を張って“推し”と言ってもらいたい」
ミュージカル『テニスの王子様』の菊丸英二役、「おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~」で主演の長男・松野おそ松役など、人気舞台作品で主要なキャラクターを数々演じてきた俳優の高崎翔太さん(@takasaki_shota)。
今回、高崎さんは、Sanrio Kawaii ミュージカル『From Hello Kitty』(公演中)でいちごの王さま役を演じることに。
かつては俳優という仕事で壁にぶつかったこともあったといいます。その半生、そして“ライバル”と位置づけるファンヘの想いについても聞きました。
◆初舞台のカーテンコールで俳優の道を決意
――人気舞台の主要キャストとして活躍中ですが、俳優デビューは2008年のミュージカル『テニスの王子様』(通称:テニミュ)でしたね。
高崎翔太(以下、高崎):そうですね。20歳そこそこでした。当時は渋谷のアパレルショップでアルバイトをしていてスカウトされました。そのあとオーディションの話がきたのがきっかけです。
――デビューしてすぐにプロの俳優の道を目指そうと思ったのですか?
高崎:初演のカーテンコールの感動が凄まじかったんです。ミュージカル『テニスの王子様』は2年間ほど公演したのですが、80公演くらいしているうちに役者仲間とも仲良くなり、続けていこうと思いました。
――いわゆる挫折や壁にぶつかるような経験は?
高崎:もちろんありました。26か27歳のころは、正直きつかったですね(苦笑)。向いてないと思うこともあった。テニミュのころからお芝居の勉強を重ねるうち、楽しさと同時に難しさも感じるようになってきたんです。
◆俳優を辞めようと思ったことも
――転機となる出来事はありましたか?
高崎:僕の中では1本の映画との出会いが大きかったですね。僕が芝居をまったくわかっていなかったときに、芝居に対してめちゃくちゃ怒られて。それが映画『夜明け前 朝焼け中』の窪田将治監督でした。脚本の読み方さえ知らなかったので、とことんしごかれました。でも、その経験があるから今があると思っています。感謝しています。
そのあと、30歳手前で今の事務所の方たちや、人との関わりが大事だと思うようになりました。応援してくれる人たちがいる限り、苦しくても役者だけをやっていたいと思うようになりました。
――辞めようと思ったことは?
高崎:舞台ばかりやっていたので、地元の新潟に帰ると「何やってるの?」と言われるんですよ。東京の舞台事情が伝ってないんですよね(笑)。まわりはどんどん出世していって、僕自身も舞台の仕事ががっつり入ってはいるものの「何やっているんだろう」とは思いました。この状態がずっと続いていくのかと葛藤していたら、その挙句に病気になって予定していた舞台を降板しなくてはならなくなったり、波乱万丈ではありましたね。
◆仕事のモヤモヤは仕事で解消する
――どう打開していったのですか?
高崎:売れるまでは辞められないなと思ったんですよね。これだけ追い込まれれば、いつか売れるだろうって(笑)。「高崎の作品なら観たい」「高崎が出るなら撮りたい」「高崎が描くなら絵を描いてほしい」と言ってもらえて、かつ自分がやりたいときにできるようになりたいなと。それができる実力や知名度をつければ、楽しいだろうなと思ったんです。
――気分を上げるためのコツみたいなものはありますか?
高崎:仕事の不満は仕事で消すことですかね(笑)。仕事で感じているモヤモヤって、仕事で解消するしかないと思うんです。おかげで努力してオーディションに受かって、いわゆるキラキラした作品に出させていただけるようになり、ある程度、映画やドラマができるようにはなってきたんですよね。
――なるほど。仕事のモヤモヤは、趣味など他のことでは解消できないと。
高崎:たぶんなのですが、僕の場合、遊んで何かを解消しようとしてもそれは逃避にしかなっていないというか、もとが解決していなければ「何をやっているのオレ?」って我にかえってしまうと思うんです。それは今でもそう思います。
ツラかろうが何だろうが、頑張ってやるしかない。なので、ネガティブな感情は、今はあまりないですね。辞めるとか副業するとかは全然考えていなくて、むしろ役者だけで頑張っていこうと思ってる過程に、今回の舞台もあるという感じです。
◆ファンはライバルのような存在
ーー今回の作品では、いちごの王さまというサンリオのスピリットを体現する重要な役を演じられています。
高崎:この作品も見た目はキラキラかわいいのですが、ちょっとでも何かを残せるように頑張りたいと思っています。それはスタッフさんへでもいいですし、何か残して、その積み重ねが大切だと思いますね。
――ファンのみなさんは、どういう存在ですか?
高崎:裏切れない存在ですね。僕にはキツい時期からずっとついて来てくれるファンの方もいて、その人たちのおかげで緊張するというか、胸を張って「ずっとファンでした」と言えない環境になってしまうことはツラいです。たとえば新しい2.5次元の作品にはその子たちは観に来てくれると思うのですが「あれが推してきた高崎翔太だよ」と言ってもらえるように取りくんでいるので、緊張するんですよね。
――ファンが求めている高崎さんを見せている?
高崎:それを更新している感じですね。ファンが自信を持って友だちを連れて来れるような存在でありたい。なのでライバルのような存在ですかね。
◆ファンの期待値を超えていきたい
――ライバル?
高崎:そう、ライバルなんです(笑)。その人の顔が浮かんで緊張するんですよ。逆に役者同士では勝つも負けるもないと思っていて、尊敬かそうじゃないかみたいな感じ。それは人間としても。でも、ファンのみんなには負けたくないというか、期待値を超えていきたいし、失望させたくないんです。
――今回の舞台も成功するといいですね。
高崎:そうですね。僕が出ている作品は絶対に面白くしたい。たまたま舞台を観に来た方が「高崎くん、名前は聞いていたけれど、こんな感じなんだね」と客席で注目されている感じ、これですよね。そこまで持って行きたいです。
<取材・文/トキタタカシ>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。