【ローズS】ラスト一冠に向け各馬の思惑がひしめくトライアル/長岡一也

【長岡一也=コラム「競馬白書」】

◆いまある事情を知らずして予想することはできない

 彼岸が近づくと、競馬は一気に秋の盛り上がりを迎える。春のクラシックを戦った3歳馬が戦列に戻り、新たに加わる伏兵たちと最後の目標に向かっていく。春に実績を残した組は、多くが夏は休養に充て、そうでない組は、ひとつでも勝ち鞍をと戦ってきた。トライアルは、それぞれの立場によって戦い方が微妙に異なっている。いまある事情がどうなのか、それを知らずしてレースを見ることはできない。当然、ここでラスト一冠の場に顔を出したい夏の上がり馬に目がいくが、思惑どおりのレースになるか、そこが難しい。

 彼岸にあわせて花の盛りを迎えるのをみつけるようなものだったが、ここで目一杯咲かせたからと言って、目標の大舞台で同じレースができるとは限らない。夏を休養してトライアルでひと叩きした実績馬たちが、調子を上げて臨んでくるから、本番で別の戦いになるからだ。その変化をどうつかむか、見所はいくつもある。

 さらには、春に十分資質を発揮させ、尚且つ出走条件の整っている実績馬は、本番に直行することもあるので、この時期をすぎても未知なところは残り、考える余地はいくらでもある。

 無敗の二冠馬が牡牝ともにいた昨秋は、全く特別なケースだったが、この秋は少し事情が違う。白毛の桜花賞馬ソダシが、夏札幌記念で古馬相手に快勝し、秋華賞に直行するし、オークスを1勝馬ながらトライアルで権利を獲得して優勝したユーバーレーベンが、その後左前脚の故障で戦列を離れ、この秋に復帰予定で、阪神コースの2000米でどう立ち向かうか、見所はいくらでもある。

 牡馬は、4戦3勝のダービー馬シャフリヤールがトライアルから本番へという予定に対し、ダービーでこれに敗れた5戦4勝の皐月賞馬エフフォーリアは、秋の天皇賞から有馬記念を考えていて、菊花賞は、残り少ないディープインパクト産駒が話題の中心になりそうだ。

 トライアルは、それまでの勝ち鞍に関係なく本番への出走を可能にするところに魅力があるが、セントライト記念で言えば、平成2年のホワイトストーンが思い出される。1勝馬の身で権利を取ってダービーでは12番人気で3着。秋は、このトライアルを勝って菊花賞がメジロマックイーンの2着。28戦連続して重賞を戦い続けた姿は、目に焼きついている。今年は、1勝馬の中ではキャリアの浅いルペルカーリアの良血が光っている。

 牝馬のローズSでは、不良馬場の新馬戦で1勝し、桜花賞もオークスも出走してともに5着だったアールドヴィーヴルが、持久力のいる中京に向いているので面白そうだ。1勝馬が本番に出走するハプニングが、この秋は起こるかどうか。

「譲れない ラスト一冠 待っている」

2021/9/18 12:00

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