「ウエストワールド」リサ・ジョイ監督が尽力した「次元が違う」記憶の見せ方『レミニセンス』

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壮大な宇宙世界に息を飲む『インターステラー』、知的好奇心を刺激する『TENET テネット』、近未来のリアリティに圧倒される海外ドラマ「ウエストワールド」…。そんな心躍る体験を与えてくれる、新時代のSFエンターテインメントの数々。

2021年日本に上陸するのは、ジョナサン・ノーランとともに「ウエストワールド」のクリエイターとして一躍脚光を浴びた女性監督リサ・ジョイの劇場長編映画デビュー作『レミニセンス』だ。観る者は、人の記憶に潜入(レミニセンス)し、記憶を360度の空間で再現する斬新な設定と、<膨大な記憶>×<再現される空間>がもたらす圧巻の映像トリックに翻弄される。リサ・ジョイ監督が本作で尽力した“記憶”や近未来の世界の視覚化について語ってくれた。




記憶とは「一番原始的なタイムトラベル」


「私はかなり前からこの“記憶”というものをテーマにすることにとりつかれていて、たくさんのSF作品を書いてはきたけど、記憶というものは一番原始的なタイムトラベルの手法だし、いつの時代でもどこでも記憶の中であれば自分で好きにタイムトラベルができます。それが私をとても惹きつけたのです」と語る。

さらに、「私が長女を妊娠中に私の祖父が亡くなったんだけど、祖父が住んでいた家にはゴールドのプレートに『スキ・リン』と書いたプレートを飾っていて、以前からその意味を聞いていたんだけど祖父はただ『この名前が好きなんだ』とだけ言っていて。でも祖父が亡くなったあとに祖母と遺品整理をしていたら、50年位前の1枚の古びた写真をみつけて、そこにはとても素敵な女性が写っていて裏に『スキ・リン』って書いてあったんです。それで思ったのです。記憶は何年たっても色あせずに輝いてて、その人にとっては手放したくないものなんだって。そこから『レミニセンス』のアイデアへと繋がっていったんです」。

脚本は、主人公となる記憶潜入エージェント、ニック・バニスター役にヒュー・ジャックマンを想定して書いていたという。「彼は完璧な人間だし、素敵でカリスマ性もあって、彼の作品をスクリーンで見るといつも彼に魅了されました。もちろんハンサムだし、アクションシーンも得意で私が必要としている要素を全て持っていました。ただ、私が一番惹きつけられたのは、彼の持つスター性とかではなく、彼はとても役に入り込めるタイプ。今まで彼は演じてきたどの役でもそのキャラクターがまるで彼に乗り移っているようで、私がニックというキャラクターに求めていたのはそういうヒーローの人間性の奥深くを明らかにすることで、そんなことをできるのはヒュー以外に思い浮かばなかったのです」。

独自の映像マジックを開発
「温かみのある、アナログ映像が欲しかった」


過去と記憶を軸にストーリーが展開する本作。ヒュー演じる記憶潜入エージェントのニックはある装置を使って依頼人の記憶にアクセスし、その結果を3D映像にして再生する。それだけに、蘇る記憶をどう視覚化するかがジョイ監督たちの最大の課題となった。

そこでジョイ監督たちは記憶の内容を再現するべく、通称“ホロメッシュ”と呼ばれる独自の映像マジックを開発した。「我々の仕事はホログラムのような映像効果を用意することでした」と語るのは、視覚効果監修のブルース・ジョーンズ。「そうすれば、キャストはリアルタイムで立体映像と“共演”できるし、正確に視線を合わせることができます」。

ジョイ監督は「温かみのある、アナログ映像が欲しかった」と、極力CGIを避けた理由を語る。「そうでないと、キャストは音声だけを頼りに装置の前で演技をしなくてはいけません。撮影現場に実物の映像があれば、キャストは演技がしやすくなるし、シーンに迫力が出ると思ったんです。ただ、撮影監督のポール(・キャメロン)には大変な手間をかけてしまいました」と明かす。

「私のプランを実現するには記憶の映像だけを先に撮っておく必要があったんです。その際はヒュー・ジャックマンの動きを想定しながら別撮りする範囲を決め、ひとつのシーンを二度に分けて撮影しました。ヒューがシーンに加わったときに違和感がないように、カメラワークを二度とも同じにしたんです。監督や撮影クルーが長い定規を持って走り回る撮影現場は前代未聞ですが、プロジェクターの投影距離をつねにチェックしなければいけませんでした」。

さらにスタッフは、美術デザインから調度品の位置にまで注意を払い、記憶の再現映像を所定のスペースに収めるよう工夫したという。そのかいあって、完成したホログラム映像は半円筒形の薄手のメッシュシートに無事に投影された。だからこそ、レベッカ・ファーガソンが演じるクラブ歌手のメイに対するヒューの演技はよりリアルに溢れたものになったのだ。

ニューオリンズの廃遊園地を海に沈める…


では、『天気の子』をも彷彿とさせる、都市が海に沈んだ水に支配された無法地帯を舞台にした『レミニセンス』の具体的な世界観をどのようにして思いついたのか。「最初の発想は単純に今地球で起こっていることから得ました。7年前からこの脚本を書き始めたけれど、その頃からもう気温上昇や地球温暖化については言われ始めていて、実際に撮影が始まる頃には上昇する海面の防波堤がマイアミでは作られ、私が『レミニセンス』で考えていた防波堤とそっくりだったのです」とジョイ監督。

「私たちは廃園になった遊園地を使って、素晴らしい撮影クルーたちのおかげで、劇中でマイアミを水の中に沈める様子を作ることができました。その様子は本当に幻想的で、本当に現実みたいでした。セットに歩いて行く必要はなくて、ボートや波に乗って行けたし、マイアミのライトに照らされた通りが全て水に沈んでいる様子が本当に幻想的でした」とふり返る。

本作を象徴する“水浸しのマイアミ”の風景は、ニューオーリンズの廃業した遊園地を使用した。ジョイ監督は信頼のおける「ウエストワールド」のスタッフに声をかけ、撮影のポール・キャメロン、美術のハワード・カミングスらを招集する。このロケーション撮影は美術のカミングスにとっても腕の見せどころになったようだ。

「ニューオーリンズは最高のロケーションでした」とカミングスはふり返る。「秩序なき世界を作り上げるときは自由にルールを設定できる。自分の美意識をものさしにできるんです。崩れ、壊れ、腐敗したものの多くには極限の美がある。今回はそれを学びました。こわれもので映画の舞台を構築するのは楽しかったし、現地の建設スタッフは本当によく頑張ってくれました」と語り、「とくに今回のセットは規格外でしたから」と明かす。

「リサは自分のビジョンを忠実に実現した」


ワッツ役のタンディ・ニュートンは、「自分の意見や価値観や好みを変える必要はないけれど、視野が広がれば、人間としての器も大きくなると思います。この作品もあらゆる角度から物事を見るように訴えています。この世には100パーセントの悪人も、100パーセントの善人もいない。両方をもちあわせているのが生身の人間だと思います。作中の世界は水浸しなのに異常に暑い――そこにも両面性があります。冠水した街は野性と近代性が混在していて、自然の威力がコンクリートジャングルを凌駕しています」と意味深に語る。

そして、映画界で長年キャリアを積んできた製作のジョナサン・ノーランは、そんな世界を作りあげたジョイ監督の構想力と実行力に目を見張った。「リサが自分のビジョンを忠実に実現したのには驚きました。この作品を完成させることができるのはリサ以外にいないでしょう。リサは人物造形や世界観の構築に情熱と美学を注ぎ込きました。『ウエストワールド』でも斬新な映像にトライしたことがありますが、今回は次元が違う」と絶賛を贈っている。

『レミニセンス』は9月17日(金)より全国にて公開。



(text:cinemacafe.net)


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レミニセンス
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  • 9/17 17:30
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